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喧噪の中で耳を澄ませて―後継者、金正恩氏を彩る歌は?
2011-12-22. 北岡 裕
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2012年は金日成主席生誕百年、金正日総書記生誕70年、北朝鮮は「強盛大国の大門を開く年」と高らかに宣言し準備を進めていた。その直前での金正日総書記の急死の報にはまさか、の一言しか出なかった。
2010年10月に平壌を訪問し、金正恩氏のお気に入りとされる銀河水管弦楽団の公演を見る機会に恵まれた。開演前の案内放送で金正恩氏は「尊敬する金正恩青年大将同志」という敬称で呼ばれていた。金正日総書記死去後の朝鮮中央通信の放送では「領導者」、金正日総書記に使われていた敬称が金正恩氏にも使われた。金正恩氏の国家葬儀委員会での序列は1位となった。ともかくも、金正恩体制は出帆したと言えよう。
金正日総書記に比べて圧倒的に短い準備期間と、20代後半とされる金正恩氏の年齢に不安は残る。また、金日成主席が死去した1994年7月から、総書記に推戴される1997年10月まで約3年間、金正日総書記は喪に服したが、金正恩氏にその余裕は無いだろう。金日成主席の生誕百年を迎える4月15日。金正日総書記の誕生日である2月16日。金正恩氏の誕生日である1月8日。そして元旦。服喪期間が終わるとされる12月29日以降節目の日が並ぶ。強盛大国の大門をどのように開き、何を語るのかに注目したい。
さて、北朝鮮の今後を占うひとつの材料に歌がある。金正日総書記の健康問題が表面化したのは2008年夏のこと。その後の金正日総書記の表舞台への復帰と同じ時期に耳にしたのは「동에 번쩍 서에 번쩍 빨찌산식이로다」(※1)という歌だった。「朝には東海から遠く離れた工場に行かれたのに、夕方には西海から遠く離れた農場にいらっしゃった」と、金正日総書記の精力的な現地指導を、神出鬼没なパルチザンに準え称えた歌である。昨秋訪朝した際、案内員にこの歌のことを聞くと「子供でも大人でも歌えますよ」と誇らしげに胸を張ったのだった。
かように北朝鮮で新しく出て来た歌、折に触れて何度も放送される歌には、北朝鮮が今後進む方向やその目標、メッセージが示されていることが多い。これから流れる新しい北朝鮮の歌には注目する必要がある。 金正恩氏を称える歌として「발걸음」(※2)が知られているが、この歌では「金大将」止まり。フルネームは出てこない。先日、在日朝鮮人の方と話す機会に恵まれたが、例えば「金正恩将軍の歌」といったような、フルネームで称える歌はまだ無いとのことだ。
これからかの国から流れてくる歌への想像が膨らむ。絢爛な言葉で金正恩氏を彩り賞揚する歌なのか。それとも大きな方向転換や明るい未来を予感させるような歌なのか。拉致問題の解決など新体制に期待する声も高い。緊張と喧噪の中で、まずはかの国から聴こえてくる新しい旋律を、耳を澄ませて待ちたい。
※1 http://www.youtube.com/watch?v=_rWnzP1EScQ ※2 http://www.youtube.com/watch?v=XHzmfsRt3ac
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 (2010年10月平壌にて 筆者撮影) |
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