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ダイナミックワールド

中長期滞在外国人を意識する北朝鮮(1)
北朝鮮の電子マネーサービス「ナレ」利用体験記

2013-12-20. 北岡 裕
平壌滞在時は現金を使う機会は余りない。宿泊費も食事代も事前に支払い済みで、特に観光であれば請求されるのはマスゲーム「アリラン」の入場料、ホテルのカラオケやバーなどの飲食、娯楽遊興費、お土産やホテル内の売店で買う水やお菓子、お土産などに限られる。例外的なものとして、2010年に訪朝した際の案内員が、羊角島ホテルのカジノで白熱の余り20万円近くすった日本人観光客がいたことを笑い話として教えてくれた。
 

今回の訪朝では「ナレ(=翼の意)」という北朝鮮の貿易銀行発行の電子マネーカードを使った。その機能は一言で言うなら「Suicaの切符を買う機能がないカード」。ドルや中国元で入金しても、自動で朝鮮ウォンに計算して引き落としてくれる。外国人が泊まるホテルのバーや売店で清算出来るのに加え、入金も可能だ。利用後はレシートが発行され支払った金額と残金がわかる。今回乗車する機会はなかったが平壌市内で近年急増したタクシーでも利用可能だ。平壌中心部に新たに出来た総合商業施設ヘダンファ館のカフェ、大同江ビール工場横のビールが飲めるバー、三日浦特産物商店でも使用した。
 

カードを発行した普通江ホテルの売店の店員が不慣れなこともあってか、発行時に決める暗証番号を私に指定しなかった。嫌な予感がしたのだが、バーで初めて利用した時に「暗証番号は?」と聞かれ固まってしまった。親切な女主人があちこちに電話して「暗証番号を決めなかった場合は1234でいいみたい」と言うので、その通り入れてみたら果たしてちゃんと引き落とされたのだった。高麗ホテル近くにある朝鮮切手博物館では、機器はあったものの利用出来ず、在日朝鮮人が多く利用し、朝鮮総連の機関紙朝鮮新報の事務所のある平壌ホテルのバーでは使えなかった。また、21時を過ぎるとシステムが止まるとのことで利用できなかった。
 

北朝鮮ではクレジットカードがほとんど使えない。経済制裁以前は朝鮮ウォンと日本円のレートを計算して1円単位で清算出来たものが、経済制裁以降は日本円の流通、ストックが落ち込んだこともあり、日本円→中国元→朝鮮ウォンと両替、計算するので一回一回の買い物が電卓と睨めっこ。正直疲れる。一週間ほどの滞在であればまだ我慢が出来るが、中長期の滞在となると堪らない。
 

その視点で考えると、この「ナレ」の誕生の背景には、近年増加したとされる北朝鮮国内の外貨を持つ層だけでなく、ビジネスを中心とした中長期滞在を目的とした外国人を強く意識したものと言えるのではないだろうか。

最初に20ドルを入金したところ、約3ドルが手数料として取られたが、滞在した普通江ホテルのバー、商店の買い物はカード一枚で済み非常に至便であった。ただ「ナレ」という名前は皮肉だ。サイバー空間を翼のように飛ぶお金の姿をイメージしたのだろうが、私は使うたびにお金に羽がついて飛んでいく姿を想像し苦笑してしまった。これも資本主義との感覚の違いなのだろうか。

ナレ(表)。左上のハングル表記は「電子決済カード」。

ナレ・計算機。
いずれも平壌市内にて筆者撮影。