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ダイナミックワールド

綾羅(ルンラ)イルカ館で見た、小さなサプライズ―外国人観光客との距離感にも変化?
2015-01-15. 北岡 裕
2012年7月に竣工した綾羅イルカ館には、金正恩第一書記の意匠が詰まっている。金正恩第一書記の指導で据えられたというタコの模型の触感はぷにぷにと妙にリアルだった。私に触るよう促し「気持ち悪いですぅ」と感想を漏らした私の表情に笑った女性接待員が着る、涼しげなチマ・チョゴリの色とデザインもまた、金正恩第一書記が指導したものという。

イルカ館と名前はついているが、パソコンの並んだ資料室(訪朝した2013年9月の時点で、14年4月にサポートが終了したWindowsXPがOSだった)や、深海の様子などのアトラクションが並んだ建物は、水族館と解釈するのが自然だろう。展示物には薄型モニタを多用。メンテナンスや見栄えの点で非常に効果が大きく、これも金正恩第一書記の指導だと女性接待員は紹介してくれたが、平壌の電力事情の改善も伺える。また、この水族館の建設にあたっては北朝鮮と交流の長い、日本の地方議員の協力もあった。日本から多くの水族館に関する資料が送られ、また、水族館を建設するならイルカショーを必ず入れなさい、という助言も送られたのだという。

平壌は海に接していない。このイルカ館で使われている海水は約40キロ離れた都市、南浦(ナムポ)市からパイプラインで引いている。この海水はイルカ館以外にも平壌市の動物園と、水道施設で浄水使用されている。

イルカには平壌組と綾羅組という2グループで編成され、平壌組のイルカの名前は平壌1〜3号という名前がついている。「人気俳優」と描かれた写真が館内に展示されていた。調教し難い品種と聞いたが、ショーは見ごたえがあった。シンクロナイズドスイミングを組み合わせたショーも目新しく、そのレベルは高かった。

私たちツアー一行は最前列に座った。訪朝中はこのイルカショーに限らず、マスゲームでもサーカスでも、日本からのツアー一行が北朝鮮滞在中に見る公演ではいい席をあてがわれることが多い。そこには「代表団」としての格と扱いもあるが、管理のしやすさという北朝鮮側の事情も透けて見える。入場するのは最後で、退場するのは最初。数名の案内員で最大10数名のツアー客を管理する必要があり、一般市民や特に軍人との接触は避けたい。実際にマスゲーム「アリラン」を観覧の際、私は中座してトイレと売店を冷やかしたのだが、あとで「目立つからカメラを持ってうろうろしないで欲しい」と案内員から注意を受けてしまった。

しかし、このイルカショーには驚く展開があった。イルカが鼻先でフラフープを回し、一方で舞台上に上げられた観客も腰でフラフープを回し、お互いの回す時間を競う出し物があったのだが、そこで数百名の観客の中から壇上に上げられたのは、我らがツアー一行の日本人男性だった。

過去、サーカスでも観客を壇上に上げるのは見たことがあったが、選ばれたのは北朝鮮の人民だった。日本人男性がフラフープを見事に回す姿には場内から拍手と爆笑(あけすけな、おばちゃんの笑い声が非常に印象的だった)が巻き起こった。彼が日本人であることについて特にアナウンスはされなかったが、舞台上で自分が外国人であることを女性司会者に話すと、彼女は驚いた表情を見せたという。彼は舞台から帰る際に、プードルの形をしたチューブバルーンをお土産に手渡され帰ってきた。

ショーの間流れていた音楽は、このコラムでも何度も触れている北朝鮮の人気楽団、牡丹峰楽団の音楽がほとんどだったが「天国と地獄」も流れた。

北朝鮮を訪れる外国人観光客は急増しているという。外国人観光客と「距離を取る」、従来の姿勢からの転換を感じたイルカショーだった。


【写真説明】
※1(上) シンクロナイズドスイミングを組み合わせた華麗なショー。セクシーな水着に驚いた。
※1(下) 色も触感も妙にリアルなタコ。金正恩第一書記の意匠のひとつ。
※2 筆者と女性接待員。涼しげなチマ・チョゴリも金正恩第一書記の指導によるもの。ヘッドセットにも注目して欲しい。