topics & News to Home
霞山会とは
月刊『東亜』
講演会・シンポジウム
中国への研究留学
日本への研究留学
東亜学院中国語学校
東亜学院日本語学校
日中交流
霞山会館
交通案内
各種お申し込みForm

■中国マクロ経済分析
 慶應義塾大学駒形研究会

■霞山学生会
■リンク集
■サイトマップ
一般財団法人霞山会
東京都港区赤坂2-17-47
赤坂霞山ビル
TEL.03-5575-6301
FAX.03-5575-6306

ダイナミックワールド

遥かなる玉流館
2014-12-9. 北岡 裕
「平壌といえば平壌冷麺。平壌冷麺といえば玉流館」と書くのは、朝鮮新報社発行のガイドブック「朝鮮 魅力の旅」。
 
冷麺は北朝鮮名物。特に平壌と咸興(ハムフン)の冷麺が有名とされる。麺は黒く細いがコシは強い。北朝鮮を訪問すると、滞在中最低1回は、案内員は冷麺を食べる機会を作ってくれる。冷麺を食べさせる店は数あれど、最高峰に位置するのがこの玉流館。先の「朝鮮魅力の旅」によれば、開館は1960年8月13日。一日に出る冷麺は6,500食。北朝鮮を訪れた賓客もここで冷麺に舌鼓をうつという。

案内員によれば、通常盛りでも大盛りでも料金は同じ。「男だったら大盛りを食べないと」と彼らは強く勧めるが、結構辛い。北朝鮮滞在中は、三食三食しっかりと食事が出てくる。焼肉、アヒルの肉、ビビンバ…。一食一食に気合が入っていて、その美味しさには国家の自尊心すら感じる時もある。しかし普段、日本で不摂生な生活をしているとこの三食食べることが苦行に近い。私も滞在後半は胃もたれに悩む。

今年の春から朝鮮新報社が発行している朝鮮総聯の機関紙、「朝鮮新報」にコラムを連載していることもあって、同社の記者と何回か酒席を共にする機会に恵まれた。

平壌滞在経験も豊富な彼らに冷麺を語らせると面白い。料理にうるさい男性記者はこんな話をしてくれた。「冷麺といえば玉流館。これは正しいが、また間違ってもいる」。なんだか禅問答のような話だ。聞くと、確かに平壌冷麺の最高峰は玉流館であると言えるが、そこからのれん分けのように独立した店がいくつもあり、有名な料理人が独立した店もあるので、玉流館が一番美味しいとは限らない、というのが彼の主張だ。

また、別の女性記者からはこんな話も聞いた。日本から出張したあるベテラン記者が玉流館で冷麺を食べたという。ひと口食べた次の瞬間、彼は「料理人を呼べ」と言った。「これは玉流館の冷麺ではない」というのが彼の主張。果たして確認してみると、実際に調理をしていたのはまだ経験の浅い料理人だったとか。「料理人によって味が変わることもあるのです。だから、玉流館が一番とは限らないのです」とにやりと笑ったのは先の男性記者。

冷麺について熱く語る彼らに「僕は3回訪朝したけれど、玉流館で食べたことがない」というと「ホントですか?」と驚く。玉流館は賓客が訪れる店ではあるが、外国人観光客にそこまで敷居が高い店ではない。

事実、北朝鮮において外国人観光客の立場は強い。道で軍人に検問、誰何されても「代表団」と案内員が一言発すれば簡単に通過できる。最新の遊具や絶叫マシンが並ぶ大城山(テソンサン)遊園地でも、外国人観光客は、行列をスルーして遊具に乗ることができる。外国人と人民を接触させない目的もあるとはいえ、基本日本からの訪朝者はVIP的な対応をされる。玉流館もその力を使えば簡単に入れるはずなのだが…。

2004年は安山閣という食堂で冷麺を食べた。2010年に訪問した時は、案内員に「玉流館で冷麺!」と強くお願いし、案内員たちも「任せてください」と強く頷いてくれたのだが、いざ当日になると「…。ダメになっちゃいました」とため息をついた。「ええ?何とかならないの!」と詰め寄ったがどうにもならないという。むしろ彼らもなぜ玉流館に行けないのか、どうして代表団の威光が通じないのか不思議そうな顔をしていた。

その日の夜。理由が分かった。ホテルの部屋で朝鮮中央テレビのニュースを見ていたら、金正日総書記がちょうど玉流館を現地指導したというニュースが流れたのだ。在日朝鮮人の方にその話をすると「むしろそれはすごい偶然ですよ」と驚いていた。数十度の訪朝経験があるその方でも、玉流館にフラれたのは一回だけ。なんでも北朝鮮の全土の軍人が集まる大会があり、玉流館で食事をしたせいで食材がなくなった時だという。

次回訪朝したら、今度こそ玉流館で冷麺をと思っているがはたして…。遥かなり、玉流館。

高麗ホテルの冷麺を頬張る筆者

北朝鮮の冷麺