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ダイナミックワールド

中国で不動産の異常高値、一方で「80年代末の日本と酷似」とバブル崩壊近しの指摘も
2013-11-6. 日暮高則
中国で不動産バブルの崩壊が言われて久しいが、今のところ、そうした状況が訪れているようには見えない。今年8月の時点でみると、全国10大都市の住宅価格は前月比で1・49%上昇し、過去10カ月を見ても上がり続けている。上海などは、自由貿易試験区の政策発表があると、いきなり周辺の土地は2割もアップしたという。しかし、外国の経済専門家を中心に、「バブル崩壊が近い」と指摘する声は多い。その気配を察知したかのように、香港の大物財閥オーナーの李嘉誠氏は中国の不動産を売却してしまった。確かに、大都市のみならず、中小都市でも大規模な開発が行われ、そこに人が住まない、工場も来ない、いわゆる「鬼城(ゴーストタウン)」が多々存在する。これらは資金繰りの関係から、いずれ投げ売りが始まることは目に見えている。果たして、不動産バブルは来るのか来ないのか。

中国証券報の報道によると、8月時点で全国10大都市の住宅価格は平均、1平方メートル当たり1万7871元で、前月比で1・49%増。これは6−7月の上昇幅より0・15ポイントも上回った数字で、ここ10カ月連続のアップだ。この上昇をリードするのは北京、上海、広州の大都市で、洛陽、太原など中規模都市、内陸省都も大都市ほどではないが、値上がり傾向を示している。もちろん、レアアースでの開発神話が止んだ内モンゴル自治区のオルドスや、地元業者が投げ売りした浙江省温州など一部の都市で大幅下落を示している。別のメディア情報では、北京、上海、杭州、蘇州の地価は8月に過去最高値を記録したという。

上海市の外高橋、浦東空港保税区など4地区の計28・78平方キロで、9月29日、金融取引、流通、電信、娯楽面で規制が緩和される「自由貿易試験区」がスタートした。試験区では不動産取引の緩和策も入っているため、不動産も値上がりし、外高橋保税区では9月に瞬時に1割アップした。日系不動産企業によれば、外高橋の中古物件はここ数年、1平方メートル当たり2−2・3万元程度であったが、自由貿易試験区に指定されたことで現在3万元を超えているという。ある投資家は「昨年末、190万元で売りに出ていた外高橋の物件が今年3月には230万元となり、さらに9月には290万元に跳ね上がった」と明かす。この値上がり傾向は、浦東地区の試験区にとどまらず、黄浦江の西側地区にも広がり、上海市西部の虹橋地区でも7−8%の上昇が見られるという。

しかし、こうした“右肩上がり”状況に水をかけるような要素がないわけではない。その一つが李嘉誠氏の動きだ。李氏は今夏、自身がオーナーである長江実業、ハチソン・ワンポア社所有の広州市西城都薈マーケットと駐車場の半分の持ち株を約26億人民元で、さらに上海市陸家嘴にあるオフィスビル「東方匯経センターOFC」の持ち株を約60億人民元で売却した。特にオフィス面積8万平方メートルもある東方匯経センターは、金茂大廈や環球金融センターなどと並んで上海市浦東地区のリバーサイド高層ビル群を形成するところで、不動産価値は高い。李氏は、大陸の不動産だけでなく、百佳スパーマーケットなど香港企業も整理し、欧州への資本投資にシフトする構えを見せているが、観測筋からは「それだけ大陸や香港市場の将来性に不安を感じたからではないか」との見方も出ている。
広東省の週刊誌「南方週末」は9月初め、温州の不動産購入グループが1万件以上という大量の物件の売りに出ていると報じた。温州グループは上海の不動産ブームのきっかけを作ったことで有名で、転売を繰り返して大儲け、その勢いで全国の不動産を買い漁っていた。今回売りに出したのは、銀行にローンを支払っていたり、担保になっていたりした物件で、いずれも100平方メートル以上ある広さで、半分値上がり期待で貸家として購入していたものだ。しかし、この時期に売りに出したのは、資金繰りに問題が出てきたことを暗示している。

「実は、中国の不動産市場は昨年、限界点を越えてしまった。北京の不動産は値段がついているものの、それは偽りの数字で、市場は成り立たない状態。不動産バブルはすでに来ている。もう遊んでいられる状態ではない」。モルガン・スタンレーのアジア担当を務めた著名なエコノミスト謝国忠氏は香港メディアにそういう見方を示した。中国の不動産が今、一方で資金抑制が言われているのに、価格は依然上昇傾向にあることにも注目し、「これは、一般庶民に値上がりの錯覚を持たせて、彼らの持っている金を不動産に集めることにあるのだ」とも語った。シャドーバンキング(影の銀行)がハイリターンの理財商品と銘打って民間から資金調達することが問題となっていたが、謝氏は、影の銀行の存在が依然大きいことを示唆している。

ただ、バブル崩壊が言われながらも、依然売りには次々に買い手が付いていることも事実だ。9月に北京市朝陽区の農業展覧館近くの土地が21億元で売り出されたが、開発企業の融創集団が入手した。病院建設用地とするという。東方匯経センターOFCの李嘉誠氏持ち株も交通銀行が入手したもようだ。香港の開発企業であるサンフンカイ(新鴻基)も、上海市の繁華街・徐家匯の商業地を約218億元で購入した。購入価格は1平方メートル当たり3万7300元で、売り出し価格に比べ24%増という超高値だ。8月末で同市内の土地取引額は1000億元の大台を突破し、前年総額875億元を大きく上回った。さらに、杭州市華家池の三区画も合計約137億元で緑地、世茂、濱江という不動産企業に、蘇州市金鶏湖の二区画も世茂集団に47億元余で、それぞれ買われている。

こうした不動産業者は新「地王」と言われている。地方政府が主体となって土地を造成しているため、土地の価格が下がると即財政問題に波及することを彼らは理解しており、何としても不動産価格を下げないよう地王に無理に土地を買わせ、住宅、オフィスビルの建設を促しているところもあるようだ。だが半面、中国の不動産は当分下がらないと読んで、強気に買いに出ている企業も少なくない。サンフンカイは、上海市の商業地購入で、同市のみならず全国一の地王となった。李嘉誠氏が上海の不動産を売りに出しているのに、サンフンカイは逆張りしており、香港の有力財閥が好対照の出方をしているのが面白い。

2013年上半期、中国の不動産投資は国内総生産値(GDP)の14・8%を占める。これは前年同期13・5%の1・3ポイント増。GDPに占める製造業投資額の18・7%と比べても、不動産投資額の多さが分かる。また、諸外国との比較でも、日本の不動産投資のGDP構成比は9%未満、2008年にサブプライムローン問題で住宅市場が大きな影響を受けた米国でも6%を超えていないのに対し、中国の構成比率は高すぎる。さらに問題なのは、不動産投資の中でも住宅投資が7割を占めること。中国政府の2010年報告書によると、 中国の持ち家比率は90%で、世界平均の63%、米国の65%に比べてもかなりの高水準。住家だけならいいが、中国人の15%が利殖を兼ねて2件以上の不動産を持っており、高所得者であれば、かなりの比率で4、5軒まで所有しているという。複数所有はもちろん利殖を狙ったものだが、「鬼城」といういびつな都市発展の原因にもなっている。

中国国家発展改革委員会の顧問で、深圳大学現代金融研究所の国世平所長は香港紙に対し、「現在の中国の不動産の状況は、1980−90年代の日本、90年代の香港の状況とよく似ている。日本では、82年から不動産価格が上がり始め、5年くらいで10倍の価格になった。特に85年以降は異常な値上がりを見せ、86−89年には毎年20%上昇。90年に最高額となったが、2年後には6大都市の土地価格は8割ダウンした」と指摘し、現在、中国の不動産高値、供給過剰から見て遠くない将来、日本と同様の道をたどることを示唆した。また別の専門家は「すでに日本の80年代後期の状況になっている」とし、近い将来のバブル崩壊を予想している。