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ダイナミックワールド

金正恩時代の北朝鮮。モテの小道具は何か?
2013-11-6. 北岡 裕
2013年9月に約一週間、訪朝する機会に恵まれた。夜、ひとり気まぐれに散歩するなんて出来ない北朝鮮では、ホテルの滞在時間が自然と長くなる。スケジュールも厳しいので、夜は早々に自分の部屋で横になるか、バーで女性接待員と話すか、朝鮮語が出来ない人はよく、マッサージに通っていた。

日本語が出来るホテルの職員は少ない。チップはいらないとされているのだが、何か渡して謝意を伝えたくなるような、熱心な仕事ぶりは訪朝の度に強く印象に残る。

男性の場合はタバコでいい。いつも私は免税店で煙草、「峰」を1カートン買って行く。「日本の煙草?好きだよ。味?重ければ重いほどいいね」と喜ぶ。問題は女性なのだ。

十年ほど前、喜ばれるとされていたのはチェキ。ポラロイドカメラだった。さっと女性接待員の写真を撮って渡してあげると大喜びされたという。2004年の訪朝時、普通のカメラで記念写真を撮って「帰国したらホテルまで郵便で送ろうか」と言うと、静かに首を振った彼女たちの複雑な表情を思い出す。そして当時、平壌駅前や主体思想塔にも、記念写真を撮る商売人が多くいたものだった。

2013年の平壌。利用者200万人にも迫ろうとする急速な携帯電話の普及。今やスケジュール調整は全て携帯電話。帰国前夜にけが人が出たのだが、外出先にて携帯電話で連絡を受けた案内員は、急きょ宿泊先のホテルに戻った。平壌市内でも携帯電話をかける人の姿はごく自然な風景となった。北朝鮮の携帯電話にもカメラはついている。訪問先の工場を案内してくれた担当者に家族の話をふってみた。すると硬かった彼の表情はみるみるうちに崩れ、「息子の写真見るかい?5歳。美男だろ?」と携帯電話を操作し息子の写真を自慢してきた。私も以前は帰国まで空港で預けさせられていたが、今回は持ち込み可能となった自分の携帯電話を開き、妻の写真を見せると「美人じゃないか」と肩をどんと叩く。この反応、韓国人と同じである。

案内員も自分の息子と娘の写真をちゃんと携帯電話に入れていた。相変わらず主体思想塔、マスゲームアリランの会場にも記念写真を撮る商売人はいたが、その数は明らかに少なくなっていた。かわりにデジカメで記念写真を撮る家族連れの姿をよく見た。北朝鮮では写真は、すっかり個人のものとなっていた。

さて、チェキが通用しなくなった今、北朝鮮の女性接待員には何が喜ばれるだろう。あくまでチップ、高すぎては本末転倒。出国前うんうんと私は唸り、悩んだ。

私が選んだのは、100円ショップで売っているソーイングセット。針、糸、糸通しに小さな鋏もついたものだった。滞在中通ったバーのママと女性接待員に渡すと、大喜びだった。「針仕事をするたびに、先生のことを思い出すわよ」と笑うママ。小さい鋏に女性接待員も目を丸くしていた。ふたりとも「いいセンスしている」と褒めてくれた。「色々悩んだんだよ。女心は難しい。一生懸命勉強しなくちゃ」と思わず呟くと私しか客のいない夜のバーのカウンターに、笑いの花が咲いた。
 
かの国の女心を解析するのもまた、かの国の情勢を読むのと同じくらい難しい。

北朝鮮では外国人向けの携帯電話サービスも開始。SIMカードを挟むかたちで利用可能。「3世代移動通信」との記載がある。順安空港にて(筆者撮影)