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アジアの一期一会

第16回 中央アジアでは警察官にも要注意
2017-11-01. 小牟田 哲彦
 旅に出て良い出会いに恵まれるのは大きな楽しみの一つだが、世界有数の治安の良さを誇る我が日本でさえそうであるように、残念ながら旅先で出会った人がいい人ばかりとは限らないのも事実である。「土産物を売ろうと日本語で話しかけてくる者には注意せよ」とは、地域を問わず海外旅行中に気をつけるべきこととしてしばしば例に挙げられる。

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カザフスタンの長距離列車。警官トラブルは個室寝台の車内でしばしば起こった
 トラブルが起こったときは警察へ行く、というのは万国共通の自己防衛手法だが、旧ソ連から独立した中央アジア各国では、必ずしもそれが万能な方法ではないとされている。というのは、中央アジアでは、肝心の警察をはじめとする役人自身が旅行者から不当に金銭を巻き上げたりする例が他の地域に比べて非常に多い、と言われ続けてきたからだ。2006年に刊行された中央アジア全般をカバーするガイドブック『旅行人ノート シルクロード改訂版』は、「旧ソ連圏は一般犯罪については、他の国々と同様のことに気をつけてさえいれば、凶悪犯罪に巻き込まれることは少ない。むしろ注意しなければならないのは、政治的な混乱に巻き込まれたり、腐敗した役人によるワイロの要求の類だろう」「国によってはこれらの役人のモラルと実務能力が著しく低く、何かと旅行者から金品を巻き上げたり、果ては警察官自身が泥棒に転じることもある」と明言している。

 この記述が誇張でないことは、私自身にも中央アジア滞在時に経験がある。A国からB国へ列車で入国したとき、入国審査の際に個室へ連れて行かれて国境審査官2人が私にすり寄るように「ウォッカ代をくれ」と要求した(拒否した)のは可愛い方で、ある国の個室寝台車の中で2人組の男が「警察官」と称して身分証明書をしたうえで、「警察だ。外国人の所持金をチェックしているから財布を出せ」と要求してきたこともあった。ふつう、この種の検査は個室のドアを開けて外から見えるように行うのだが、彼らはわざわざ個室のドアを閉めて密室状態にした。このときは、「ロシア語はわからない」と言ってのらりくらりとかわし続けたら、そのうち諦めて出て行った。

 最もひどいと思ったのは、明け方の個室寝台に中年男が勝手に入ってきて、寝ている私のズボンのポケットに手を突っ込んで金や財布を盗ろうとされたときだ。走行中に目を覚ましたら、横になっている私のズボンのポケットに手を入れて中を探っている口ひげの男がいきなり目の前にいたので、さすがに飛び起きて「何してるんだ!」と日本語で叫んで大きな声で制止した。男は一瞬ひるんだように見えたが、「警察だ。所持品検査をしている」と答え、警察官の身分証だというカードを私に見せたが、そのまま何もせずに別の車両へ立ち去った。走行中の列車内なので逃げ場がなく、開き直るしかないのだろうが、警察が所持品検査をするとしても、ベッドに寝ている旅客のズボンのポケットに手を突っ込む検査がどこの国にあるというのか。やっていることは泥棒そのものなのだが、こうした連中の行動について車掌は全く関わろうとしないので、いずれも本物の警察官ではないかと私は思った。

 以上の体験が、わずか2週間ほどの中央アジア諸国滞在中に集中して私の身に起こった。停車中に警察官がホームの物売りからまとめ買いした巨大なウリの1つをタダで私にくれて、個室寝台に乗り合わせた乗客みんなでシェアして食べた、という体験談もあるのだが、短期間でこれだけの体験をしてしまうと、先述の旅行ガイドブックの記述には概ね首肯せざるを得ない。一般市民より腐敗役人たちに気をつけて旅しなければならないというのは、旅行者にとっては厄介な治安上の問題点である。