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アジアの一期一会

第6回 人生初の酔いつぶれはソウルでの日韓飲み比べ
2017-01-01. 小牟田 哲彦
 ソウルには、大学生の頃からもう20年近く定宿にしている共同旅館がある。日本人旅行者が多く、共同利用の談話ルームにはたいてい誰かいるから、「今日は一緒に夕食に行きませんか」と声をかければ、毎晩異なるメンバーで食事会ができる。韓国の1人旅で困るのは、焼肉などは2人分からでないと注文できないことがあり、食べられる料理が限られてしまうことだ。あえてバックパッカーが集う安宿に泊まるのは、毎晩の食事仲間を探しやすいためでもある。

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韓国式焼肉。一人旅だと意外に食べる機会が少ない。
 そんな同宿の旅行者同士の即席食事会で、20代半ばの女性旅行者から、「旅行中に仲良くなった同年代の韓国人男性と明日の夜に飲む約束をしたので、よかったら皆さんも一緒に来ませんか?あちらも友達を連れてくるって言っていたので」と誘われて、3〜4人で居酒屋に出かけていったことがある。2002年のサッカーワールドカップ日韓共催が終わった頃のことだ。韓国代表が4位に躍進して韓国人が史上最も機嫌が良かった時期であり、日韓関係も今よりずっと順調な時期だった。

 彼女が約束していた韓国人は、ソウルの会社で働いているという20代のサラリーマンと、その友人の見習いコックの男性だった。留学生でもない私たち観光旅行者は誰一人として流暢な韓国語を話せず、彼らも日本語は全く分からなかったが、お互いブロークン・イングリッシュを駆使していろんなことを喋っていた。最初は居酒屋で焼酎や清河(チョンハ。韓国の清酒)を飲んでいたが、話が盛り上がってその後、どこかの広場で営業していたビアガーデンに場所を移して、深夜までさらに飲み続けたと思う。

 自分の経験なのに「と思う」と書くのは、ビアガーデンの途中から記憶がないからだ。私は普段は酒をほとんど飲まないが、体質上はかなり飲めるほうである。少なくとも、これ以前に酒を飲んで記憶が飛んだことはない。それが油断だったのか、当初にハイペースで飲み続けた慣れない韓国焼酎と清河が後から急速に回ったらしい。

 気が付いたときは明け方で、私は他の旅行者と一緒に旅館へ戻っていて、自室ではなく共同スペースで寝ていた。帰国後に現像した写真には、ネクタイを緩めたあのソウルっ子のサラリーマンと仲良く肩を組みながら夜のソウルを歩いている私が写っていたのだが、もちろん全く覚えていない。同行者の話によると、彼が私を抱えて未明にこの旅館まで運んできてくれたのだという。パスポートも財布もカメラも全部無事だったのは、彼がたまたま善良な韓国人だったからという幸運でしかない。

 まともな現地語ができないのに、深夜まで地元の見知らぬ若者と街頭で酒を飲んで私だけ酔いつぶれたというのは、今振り返れば、外国旅行では決してやってはいけない無鉄砲な行動だった。でも、さまざまな幸運が重なったとはいえ、他の諸外国ではなく韓国のソウルだったからこそ、ほぼ無事と言える状態で宿泊中の旅館に戻れたのだとも思っている。今、日韓関係は当時ほど良好とは言えないが、名前も覚えていないあのときの青年と互いに夜まで飲みまくったおぼろげな記憶は、私が抱くソウルのイメージを今も良いものにし続けている。