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アジアの一期一会

第5回 1週間乗り合わせるシベリア鉄道の長屋模様
2016-12-01. 小牟田 哲彦
 アジアとヨーロッパとを結ぶシベリア鉄道の旅は、長ければ1週間同じ列車に乗りっぱなしとなる。広大なユーラシア大陸を横断するとはいえ、飛行機で飛べば半日もかからないところを1週間も延々と走り続ける酔狂な乗り物だが、その長旅に憧れる人は今も昔も少なくない。

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ウラジオストク駅に停車するモスクワ行き「ロシア」号
 極東からウラル山脈を越えてヨーロッパへと直通する長距離列車はいくつかある。有名なのはウラジオストクとモスクワを結ぶロシア号で、他に中国の北京から満洲里経由でシベリア鉄道に合流する列車や、同じ北京発着でもモンゴルを経由してシベリア鉄道に合流する列車など。ロシア号と満洲里経由の列車には、北朝鮮の平壌を起終点とする車両も連結されることがある。

 確たる統計を見たことはないしそんなものがあるのかどうかもわからないが、実際に列車に乗って観察する限りにおいては、約9,000kmの全区間を乗り通すのはロシア人や中国人など当該列車が走る国の国民より、旧ソ連圏以西のヨーロッパ人や中国以外のアジア人のほうが多いように思われる(私が北京からモスクワまで7日間乗ったときは、全編成、全区間を通じて日本人旅行者はおそらく私以外にいなかった)。ウラジオストク、モスクワ、あるいは北京やウランバートルなどの主要都市間なら、早くて便利な飛行機がたくさん飛んでいる。だが、それ以外の地方都市に住むロシア人や中国人にとっては、ただ結果的に長い距離を走っているだけで、自分の用務に必要な区間だけ乗るのは当たり前のこと。数日かけても列車でアクセスする方が結果的に便利な地方都市相互間では、シベリア鉄道は今も実用的な交通手段ということらしい。

 客車は2人用個室と4人用個室、それに開放式の3段式寝台の3種類が原則だから、1人旅ならどのタイプを利用しても相部屋になる。現役あるいはかつての共産圏では、社会主義らしい男女平等の建前なのか、個室寝台でも見知らぬ旅客との男女の部屋割りの配慮はあまりなされない(西欧の寝台列車では一般的に、夫婦や親子以外の男女は別の個室となる)。1週間乗り通せば同じ客と長く同居したり、途中で同居人が入れ替わって出会いと別れを繰り返したりする。

 ロシア人や中国人の乗客は食堂車をあまり利用せず、しばしば個室で自炊(?)している。車内ではサモワール(ロシア製の給湯器)で沸かした熱湯が自由に使えるので、携帯用の鍋に袋入りのインスタントラーメンを入れて食べたりマイカップでロシアンティーを楽しむ人は珍しくない。乗り慣れた女性は鍋どころか小さなまな板まで持ち込み、途中駅の停車中に仕入れた野菜やパンを果物ナイフだけでさばいて野菜サラダやサンドイッチを作ったりする。同室や“ご近所”の個室にそんな乗客がいて仲良くなっていると、そうした即席家庭料理の席に呼んでもらえることも。
 そういうときは、日本から持参した小袋入りの菓子などが御礼代わりに役立つ。折り紙が得意なら、手先の器用な日本人らしさを披露するのもよい。ロシア人のおばちゃんに醤油せんべいをあげたら、一口かじるなり「これはノン・シュガーのお菓子なの?」とけげんな顔をされてしまったこともあるが、それもまた草の根の文化交流である。