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チャイナ・スクランブル

習政権2期目、ソロス氏の予言した「2017年、中国の不動産バブル崩壊」はあるのか(上)
2017-11-09. 日暮高則
5年に一度の中国共産党大会が終わり、世界のチャイナウォッチャーの目はしばし政治から離れ、経済に向けられている。とりわけ、「2017年、バブル崩壊」説が出ていただけに、不動産業の動向が注目点だ。その不動産市場は、2016年の抑制政策で上昇傾向から安定、若干の下落と落ち着きを取り戻している。購入者はこれまでの投資目的からキャッシュ主体で買う富裕層でなく、現在は、若いサラリーマンら中低所得者が居住目的からローンで買うケースが多くなっている。習近平国家主席が「不動産は住むためのもので、投機対象ではない」と呼びかけたことが背景にある。ただその分、若年購入者は当初の自己資金を持ち合わせていないので、目いっぱいレバレッジを効かして買う傾向にある。これによって、金融機関の負債はさらに膨らみ、心配の種を増やしている。

中国の不動産市場は1990年代から値上がり傾向を示してきたが、とりわけ顕著になったのは2008年のリーマンショック以降だ。不景気を懸念した政府が4兆元の公共投資を行い、それを契機に不動産業が活況を呈した。住宅価格を見ると、08年から17年までの10年間で一線級都市の上海では平均610%、二線級都市のアモイ(福建省)では559%の価格上昇を示した。一般給与所得者の年収の10倍から30倍の額となり、庶民はとても手が出せない。このため、主な顧客は富裕層、つまり企業経営者であったり、汚職、職権乱用などで大金を手にした役人であったりした。政府は、不動産価格が上昇しないよう頭金の割合を高めたり、窓口規制をしたりとさまざまな措置を講じた。その都度価格は一時的に下げてきたが、長期的なトレンドとしては右肩上がり。昨年も春には少し冷え込んだが、秋の段階で再び過熱気味になった。

その状況を苦々しく思ったのが習近平国家主席だ。昨年12月の中央経済工作会議で、「地方政府は、不動産市場から財政収入を得ている。住宅、土地価格の上昇は地方政府と不動産開発企業が中央の経済政策を遂行していないことが原因だ。中央政府は不動産バブルによって中国経済が崩壊することを心配している」と、バブル発生の”元凶”は地方政府にあると厳しく指摘。その上で、「住宅は居住のためのものであって、投機活動の対象ではないという位置付けを堅持していく。投機目的で金融機関の貸付金が流れ込むことを制限する」と主張した。地方政府がデベロッパーと結託して公有の農地を整理し、分譲して財政を潤わせてきており、そのために不動産の高値維持を望んでいたのは確かだ。

習主席の発言が奏効したためか、2017年夏までの不動産取引はかなり抑えられた。ある研究所の「中国主要都市不動産市場取引状況」データによれば、今年8月に売買契約された新築住宅を面積で見ると、北京、上海、広州の一線級都市で前年比5割、南京、蘇州などの二線級都市で同12・5%も下がったという。北京を見ると、8月に3321件、建築面積約37・3万平方メートルの住宅取引があったが、前年同月比で55・6%、前月比10・1%の減。上海では1万1843件、約114・5万平方メートルの取引があったが、前年同月比56・8%、前月比10・4%の減となった。二線級都市の蘇州(江蘇省)では、同月に4016件、約47・3万平方メートルの取引があったが、前年同月比で13・4%減。前月比では37・7%と大きなマイナスとなったという。

大手不動産企業「中原地産」の研究センター統計によれば、今年これまでの10カ月間、北京の新築住宅の契約数は2万550件、前年同期比で50・6%のダウン。過去10年間でもっとも少ない成約数であったという。同社の著名なアナリスト張大偉氏は「過去1年、30回以上のさまざまな不動産抑制策が取られてきたので、市場は谷底まで冷え込んだのだろう」と述べている。中国のサイトによれば、北京市の新築住宅の平均分譲価格は1平方メートル当たり約5万元。ただし、第5環状線の辺りだと6万元となり、第2環状線付近では10万元を超すと言われてきた。だが、最近売り出された同市南西部の房山区良郷鎮にある旭輝城アパートは、第5環状線近くで鉄道の便もいいのに、一平方メートル当たり平均4万元を切った。契約数の減少によって、価格も下落傾向にあることは間違いない。

契約数が減って、金融機関の不動産貸付額も下がってきた。人民銀行の「2017年上半期金融機構貸付統計調査」によると、今年上半期に不動産部門に貸し付けられた額は3兆400億元で、全貸付額の38・1%を占めるが、これは第一四半期の構成比率に比べ2.3ポイント低くなっている。一方、個人住宅の貸付残額は20兆1000億元で、前年同期比で約3割アップしたという。この数字から分かるのは、企業などは今、不動産開発などのために徐々に大型借り入れを控え始めているということだ。企業側はすでに住宅建設などに投資しても、需要の低迷、土地買収費や建築資材の高騰などから投資額を上回る利益が得られないことを理解しているからであろう。