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チャイナ・スクランブル

クーデター未遂の情報もあり、”一人支配“の維持が危ぶまれる習近平体制(下)
2017-12-18. 日暮高則
王岐山氏は常務委員会議に出てもあくまで“元老”や“顧問”的な立場で、政策決定の採決に加わる権利はないという。しかし、この異例の待遇は、王氏が69歳になっても完全引退しないことを裏付けるものとなった。来春、新たなポストが用意されているとの情報があり、それについてさまざまな憶測が流れている。一番可能性が高いのが国家副主席だ。これまで非党員であった民族資本家の栄毅仁氏が就任した前例があり、融通性が利く。王氏はかつて副総理で対米工作、金融問題を担当したことがあり、国際感覚豊かで、外国訪問の多い国家副主席にはうってつけだ。あるいは最上級国家機関として「国家監察委員会」という新ポストが創設され、それに就任する可能性もあるという。いずれにしても、習氏が今後も、王岐山氏の“腕力”を頼りにしていることは間違いない。

王岐山は前期、紀律検査委書記として汚職摘発を進め、多くの幹部を屠ってきたために、被摘発幹部らの恨みを買っている。その反王派の筆頭格が、江沢民体制時に政治局常務委員兼国家副主席を務めた曽慶紅氏だ。息子の曽偉氏はオーストラリアのシドニー郊外に豪邸を建てビジネスをしているが、その資金源は周永康氏との関係や父親の権力をバックに集められたものだとされ、曽偉氏は検査委の調査対象となった。このため、曽慶紅氏の恨みは深い。今夏、党内外に「王岐山氏の常務委留任説」が流れると、強い反対の意思を示し、「王岐山を留任させるなら(王氏の一歳上の)劉雲山も一緒に留任させよ」と習氏に迫ったという。

他の情報によると、今年7月段階で政治局委員候補者35人の中に確かに王岐山の名前があった。党中央は政治局常務委員を現行の7人から9人に増やす前提で、王氏留任の可能性について党内から意見聴取をしたところ、激しく反対の声が上がったという。今党大会で引退する予定の劉雲山、張徳江、張高麗各氏も王氏留任に不服あるいは明確に反対の態度を表明した。その結果、王岐山氏は健康を理由に辞退せざるを得なくなったようだ。王氏は周辺に「私はまだ生きたいので」などと漏らしていたという。自身、もし党内の反対を押し切ってポストにしがみついたら、反発から暗殺される恐れもあると感じたのかも知れない。現に、王氏はこれまで数十回の暗殺未遂に遭遇したと伝えられる。

党大会後に起きた衝撃的な出来事として張陽前政治工作部主任(旧総政治部主任)の死がある。張陽氏はこの9月、房峰輝聯合参謀部参謀長(旧総参謀長)とともに突然軍の要職を解任された。その後に紀律検査委の調査が進み、刑事告発されることになった。昇進に口添えすることで部下から多額の賄賂を受け取っていたというのが容疑内容だ。香港誌「亜洲週刊」によれば、11月23日、軍紀律検査委の職員が張陽氏の自宅を訪れ、客間で調査のために連行することを告げた。すると、本人は「着替えをする」と言って寝室に入った。だが、なかなか出てこないので、職員が寝室に押し入ると、張氏は縊死していたという。その後、解放軍、国防省のサイトは「自殺しても罪の悪さを逃れることはできない。腐敗摘発は永遠に途上にある」との評論員文章を載せ、暗に張氏の自殺を認めている。

2012年に習近平体制がスタートして以来、解放軍の上将クラスで法の裁きを受けたのは7人。それは、郭伯雄、徐才厚の両元軍事委副主席、空軍元党委書記・政治委員の田修思、軍事委員会紀律検査委元書記の張樹田、聯合参謀部副参謀長で元武警司令員の王建平、国防大学元学長の王喜斌と今回の張陽氏だ。中将以下のクラスでは逮捕後や逮捕を恐れて自殺した人はいるが、上将クラスではおらず、それだけショッキングな事件である。香港サイドでは、「軍内の動揺を抑えるために自殺の形にしたが、張陽氏の死は、実は彼の口を封じるための他殺ではなかったのか」などの憶測も出ている。それは定かではないが、9月の張陽、房峰輝両氏の突然の解任が単に汚職が理由とは考えられない。香港メディアは、習近平氏を怒らせる何らかの事件にかかわったためだと指摘し、それはクーデターではないかとの見方をしている。

複数のメディアによれば、房峰輝、張陽両氏は今秋の党大会を前に、恐らく夏の北戴河会議の時期前後に習氏追い落としの“密謀”をめぐらしたもようだという。「前哨」によれば、2人は習近平軍事委主席に権限が集中する軍制改革に強く反対していた。従来なら「総参謀長」は軍の最高ポストだが、「聯合参謀部参謀長」では軍事委の「秘書長」的な役割に過ぎず、軍内のイデオロギー・思想担当の総元締めであった「総政治部主任」も「政治工作部主任」では単なる軍事委に情報提供する部署という印象になってしまう。そこで、房峰輝氏は「これでは習近平の高級伝令兵でしかない」、張陽氏も「これでは習近平の高級事務員になる」と、不快の念を募らせたという。

ある香港メディアによれば、2人が目指していたのは、1976年秋に江青・毛沢東主席夫人ら「4人組」を逮捕したような無血クーデターではなかったかという。さらに別のメディアでは、「退職軍人などに習体制への不満分子が多いので、彼らを糾合して実際に軍隊を動かすクーデターを狙っていた。だが、(その反乱軍結集を求める中で)習近平側に陰謀が露見してしまった」と指摘している。米在住の民主活動家王軍濤氏は「習近平が7月初めにロシア、ドイツを訪問している時に実際に政変の行動が起こされ、この中で孫政才(今夏失脚した元重慶市書記)も重要な役割を担っていた」と書いた。胡春華元広東省書記とともに次期最高指導者になると言われていながら、今夏に失脚した孫政才氏までクーデターの企てに参加していたとなれば、反習近平の勢力が軍ばかりでなく、党の高級幹部まで及んでいることを示していよう。

来春の全人代、政協会議の「両会」でも国家レベルの新たな人事がある。政治局常務委員のうち、李克強氏がすんなり総理を続投する保障はない。あるいは李氏が全人代常務委員長に回り、汪洋氏が総理、栗戦書氏が政協会議主席になるとの見方もある。汪洋氏は共青団出身だが、近年は習氏への接近が目立つ。党中央との関係が密な馬雲アリババ集団会長傘下の香港紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」によれば、副総理は韓正を筆頭に、劉鶴(政治局委員兼党中央財経領導小組弁公室主任)、孫春蘭(政治局委員兼党中央統一戦線部長)、胡春華各氏の順で決まったという。習氏の経済顧問格である劉鶴氏の次席副総理抜擢となれば、共青団系の李克強、胡春華両氏はないがしろにされるわけで、習氏への反発は一段と強まろう。さらに注目はやはり王岐山氏だ。彼に新たなポストが与えられたら、汚職摘発を嫌がる多くの幹部の不満が増幅し、再び習近平追い落としの動きが起きる恐れもある。