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チャイナ・スクランブル

蔡英文台湾新政権、10カ月過ぎても新機軸打ち出せず−「一つの中国」に戻るのか(上)
2017-04-11. 日暮高則
昨年5月、台湾に蔡英文民進党政権が誕生して以来10カ月が経過した。中国は、蔡総統が「一つの中国」を前提とする「92年コンセンサス」を認めないことを不服として、両岸協議の中止や国際空間での締め付け、さらには大陸客の台湾観光抑制などの圧力を加えている。これに対し、蔡英文総統はかえって脱大陸依存の経済政策を進めたり、国内的には蒋介石元総統ら国民党系指導者の神格化を抑えたりと独立色を強めている。ただ、台湾住民をうならせるような新機軸の政策は打ち出せないままだ。昨秋には、米大統領選挙でドナルド・トランプ氏が当選すると、直接電話でやりとりして「一つの中国」を踏み外す動きにも出て、北京当局の激しい怒りを買った。こうした蔡政権の在り方に、就任当初は期待感が高かったものの、徐々に支持離れが起き、現在、彼女の執政に満足している人は3割程度だ。蔡政権に今後、起死回生の道があるのだろうか。

蔡英文新政権の誕生後、中国指導部が一番注目したのが、92年コンセンサス(九二共識)を認めるかどうかという点だった。蔡氏は就任演説で、「92年以降、両岸が20数年にわたって交流と協議を積み重ねてきた現状と成果を大切に守っていく」と強調したが、92年コンセンサスという言葉は使わなかった。蔡女史にすれば、政権交代を印象付け、馬英九政権との違いをはっきりさせるためにもその言葉だけは避けたかったのかも知れない。ただ、「92年」という年号を出して現状維持を強調したので、大陸当局には十分気を遣ったつもりであったのだろう。それでも、中国側は、「一つの中国」を明確に打ち出さなかったことに不満を表明し、国務院台湾弁公室は直後の6月、台湾側の大陸委員会との交渉ルートを途絶させてしまった。

両岸交流の途絶ばかりでなく、中国側は国際空間での締め付けも強めてきた。4月にブリュッセルで開かれた経済協力開発機構(OECD)鉄鋼委員会に台湾代表団は参加できなかったし、9月にカナダで開催された国際民間航空組織(ICAO)総会にも招待されなかった。いずれも北京の妨害工作があったためだ。蔡総統は11月のペルーAPEC首脳会議に出席する首席代表にもちろん民進党色の強い人物を選びたかったのであろうが、中国側の反対を意識して習近平国家主席とも会談経験があるブルー陣営(国民党、統一派)の宋楚瑜親民党主席に依頼せざるをえなかった。これも蔡総統にとっては苦渋の選択であったろう。12月には西アフリカの小国サントメプリンシペが台湾と断交し、中国と国交を結んだ。台湾と外交関係を持つ国はこれで21カ国と減り、国際空間も狭められている。

中国側は台湾当局者との交渉を停止したが、統一派の野党国民党との交流はかえって活発化させた。2016年9月に新北市、苗栗県、南投県など台湾8県市の国民党系首長、準首長が大陸を訪問した際、北京側は最大級で歓迎した。兪正声全国政協会議主席が人民大会堂で一行と会見し、「92年コンセンサス」を言う彼らを称賛した上、8県市からの農産物輸入、旅行客を優遇するとして民進党首長自治体との差別化を見せつけた。また、11月に洪秀柱国民党主席が訪中した際には習近平総書記がわざわざ会見、「民族の大義のために国共両党は何度か合作した」などと歴史上の国共両党のつながりを強調し、蔡政権を強く牽制した。洪主席は国民党の中でもとりわけ統一志向が強い政治家であり、中国側はそれを最大限利用したようだ。

中国当局が観光業者に圧力をかけているために、大陸客の台湾観光も減ってきている。中央通信社が交通部観光局の統計として発表したところでは、昨年11月の訪台中国大陸客は20万2986人で、前年同期比43.25%減。この結果、2016年通年では、前年比で80万人近く減るだろうとの予測も示された。これは、中国当局の圧力ばかりでなく、観光バス事故の影響もある。7月に桃園市の高速道路で大陸観光客を乗せたバスが炎上し、運転手、バスガイド2人を含む26人が犠牲になったため、昨年後半は大陸客が急激に落ち込んだ。中台間の貿易も、昨年第1−第3四半期に1275億5000万米ドルで、昨年同期より7%減少している。

これに伴い、蔡英文総統への支持率も下降の一途だ。台湾の民意基金会は毎月、総統に対する評価調査を実施しているが、昨年11月時点で蔡総統の支持率は41・4%。これに対し不支持率が42・6%と、初めて不支持率が支持率を上回った。この調査で、蔡女史の両岸政策に「満足」が41・8%に対し、「不満足」が47・8%にも上ったという。さらに、今年3月の最新調査では、蔡総統に「満足」は32・7%で、「不満足」が42・5%。昨年5月の就任時に比べて満足度の低下は実に32・2ポイントにも達した。有効な経済政策を打ち出せないほかに、外交、特に両岸関係での対応のまずさも一因となっていよう。