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チャイナ・スクランブル

クーデター未遂の情報もあり、”一人支配“の維持が危ぶまれる習近平体制(上)
2017-12-18. 日暮高則
中国は、共産党の第19回大会が終わり、国家機構の人事を決める来年3月の全人代、全国政協会議開催までの過渡期に入った。党政治局常務委員会の構成では、習近平支持派が多数を占めたほか、党大会で引退した習氏の盟友王岐山氏が相変わらず政治局常務会議に出席し、バックアップしているという話も聞かれる。このため、香港メディアなどでは「習氏は一人支配体制を事実上固め、次期党大会で政権の延長を狙っている」との見方が専らだ。一方で、軍政治工作部主任から9月初めに解任された張陽氏が11月下旬、逮捕直前に自殺するというショッキングなニュースも入ってきた。張氏らがクーデターを企てていたという情報もあり、党内はいまだきな臭さを呈している。党大会後の動きを香港、米系華文サイトの報道で追ってみた。

香港誌「前哨」は、「党大会後、中国は一党独裁から一人独裁の国になった」と書いた。習近平氏の排他的で強固な体制が出来上がったとの認識からであろう。まず党中央各部局では、日常事務を司る党中央弁公庁主任には丁薛祥副主任が順調に繰り上がった。彼は習氏の上海市書記時代、市委秘書長として仕え、中央入りしたあとも習近平弁公室(個人事務所)主任として支えた。習氏がもっとも信頼する幹部と言われる。地方人事を握る党中央組織部長には、政治局常務委員に上がった趙楽際氏に代わり陳希氏が就任した。陳氏は習氏のかつての勤務先福建省の出身で、清華大学の同窓生という関係もある。ちなみに、趙楽際氏も習氏の出身地陝西省の書記をしていた時に、習氏の父親である習仲勲元全人代常務副委員長の旧家や墓地を整備して歓心を買い、今回、党中央紀律検査委書記という腐敗摘発でにらみを利かせる重要ポストを手中にした。

習氏が自身の地位を際立たせ、個人崇拝キャンペーンまで進めようとするなら、マスメディアやインターネット、思想形態を管轄する宣伝部門の掌握が大事である。今回、江沢民系と言われる劉雲山氏に代わって政治局常務委員会で宣伝部門の最高責任者になったのが王滬寧氏だ。「中国の夢」などという習体制一期目の執政スローガンを作ったことで有名な学者上がり(復旦大学元教授)の幹部だ。その下の党中央宣伝部長も、汚職で逮捕された周永康元政法委員会書記、薄熙来元重慶市書記らとの関係が深い劉奇葆氏が引退し、そのあとに浙江省で習氏の部下だった黄坤明氏が副部長から繰り上がった。これで、この部門も習氏自らの意の通る形になった。

実は、宣伝部門は胡錦濤氏が総書記となった2002年に、李長春氏が政治局常務委員会での担当となり、宣伝部長に劉雲山氏が就任。さらに、習近平体制の一期目でも劉雲山氏が常務委での総責任者になり、四川省書記だった劉奇葆氏が宣伝部長に就くなど長い間江沢民系幹部の牙城だった。これに対し、習近平氏は2016年2月、人民日報、新華社、中央テレビの国営マスコミ3社に自ら乗り込み、「党への忠誠」を誓わせる形で自身への忠誠を求めた。これが宣伝部門に切り込んだ第一弾で、習氏のこの部門への関心の高さをうかがわせる。習氏の影響力拡大によって、李長春、劉雲山両氏ら江沢民派の威光が衰えている。李長春氏の元個人秘書で、中央宣伝思想工作領導小組幹部や遼寧省宣伝部長から社会科学院副院長に上っていた張江氏が最近、免職になったのもその証だ。

習近平氏が一人独裁を固める上で、江沢民系幹部と同じように気がかりだったのが共青団(中国共産主義青年団)だ。この組織は、太子党のように革命幹部の父親らの威光がない一般家庭出身者のうち学校の成績、業績優秀なる者に、党高級幹部への道を開く登竜門として存在してきた。胡錦濤元総書記や李克強現総理もこの組織出身で、団中央第一書記を経験して党中央の最高指導層に上った。だが、習氏は今、太子党出身ながら他の太子党とも組まず、自身の勤務地の中で知り合った幹部ばかりを引き上げる傾向にあるため、このエリート集団は目の上のたんこぶだった。2016年2月、党紀律検査委員会の巡視組が共青団中央本部に調査に入り、組織にメスを入れたが、これは、習氏の意向を受けた行動であった可能性が高い。

検査委は調査のあと「共青団は硬直した機関であり、行政の補完組織となり、貴族化、娯楽化している」と批判し、組織改革を進めるよう求めている。その結果、組織の人員は大幅に減らされ、直属の高等養成機関「中国青年政治学院」も募集停止に追い込まれた。さらに11月末になって共青団系企業2社が「企業の持ち株者に大きな変更があった」などという理由で、相次いで株式市場での売買停止に追い込まれた。この2社とは、中国青年旅行社のホールディング会社「中青旅控股股份有限公司」と薬品企業の「嘉事堂薬業股份有限公司」で、いずれも共青団中央が創業し、上場させた企業である。共青団第一書記は次のポストとして通常、地方の省長などに就けられるが、今年9月、秦宜智第一書記は国家質量監督検験検疫総局の副局長というマイナーな部署に移った。これも異常な冷遇である。

反対に、習体制2期目に入って、彼を支持する人たちは我が世の春を謳歌している。王岐山氏は、腐敗摘発に貢献し、習氏の権力固めに協力してきたので、党大会後も政治局常務委員の地位にとどまるのではないかとの予測情報もあった。結局、「七上八下(党大会時68歳以上なら政治局常務委員から引退)」という慣例に従って引退したが、王氏にはその後に破格の待遇が与えられた。香港メディアによれば、王氏は今でも、政治局常務委員会議に出席する資格を持ち、実際に時々出席しているという。通常、政治局常務委員から引退した幹部が引き続き同会議に出席する権利はない。今回党大会で引退した他の政治局常務委員OBである張徳江、兪正声、劉雲山、張高麗各氏らはもちろん出席していない。その前例が破られたのは習近平国家主席の特別な配慮によるものであろう。