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チャイナ・スクランブル

2023年以降の政権延長をにらみ習近平主席の権力集中進む−毛沢東時代の再来か(下)
2018-03-08. 日暮高則
そうなると、習近平主席の目指す方向性は毛沢東時代に戻ること、とりわけ文革時代なのかというに思い捕らわれてしまうが、そんな中、党理論誌「求是」に注目すべき論文が掲載された。中国人民大学マルクス主義学院の周新城教授がマルクス、エンゲルスの「共産党宣言」発表170周年を記念して執筆した「共産党人は自らの理論を概括して言うことができる−その言葉とはすなわち私有制の消滅だ」と題した論文で、香港で注目されている。周氏はこの中で、「外資企業であろうと、合弁であろうと、内資であろうと、それは中国内においては社会主義初級段階の特殊な現象だ。固定化できないし、永続もできない。最終目的は私有財産制の消滅にあるのだから」と指摘した。

さらに、同論文は「毛沢東の時代に資本家は打倒され、農村の生産手段は共有となり、あの時は中国で私有制は消滅したと言えるようになった。結果は文化的に立ち遅れ、貧しさを招いたために、小平が“中国の特色ある社会主義”の考え方を打ち出した。一部の人が先に豊かになる政策を許容したために、資本主義の道を歩んでしまった。の政策は経済発展をもたらしたが、(中国がもともと目指していた)共産主義から見れば、初志に反するものであった」と述べた。周教授の論は、豊かさより格差ある社会の方がはるかに問題だと強調しており、文革時代の平等に戻るよう求めている。

この論文に対し、香港の実業家、元全国政協会議委員でコメンテーターでもある劉夢熊氏は「新中国になって社会主義改造の名のもとに地主、富裕農民が非人道的に財を奪われ、殺害された。土地の共有制である人民公社化によって大飢饉を招き、3000−4000万人が死亡した。階級闘争を要とするとか、私有制の消滅とかいうものは中国人民にただ貧しさと災難をもたらしただけだ。私有制消滅による悲劇は世界各地の歴史が証明している」と指摘。そして、「近年、大陸内で個人崇拝が巻き起こっている中で、私有制消滅の論文を見ると、左傾勢力が改革開放を否定し、再び時代を逆転させようと企んでいるように思える。われわれは警戒感を強めなくてならない」と述べて、習近平政権の方向性と関連付けて危機感を示した。

今次全人代の李克強総理による政府活動報告では、これまでの「市場の役割」が取り上げられず、政府の役割をより重視する内容となった。これは、市場原理を重んじ、規制緩和によって民間企業の力を引き上げて経済発展を図る李総理のリーダーシップから、大規模企業化、国有企業中心で統制色の強い習主席主導のコントロールに変わっていくことを意味する。特に金融部門では、過剰債務の原因を作っている不動産投資、海外投資を抑制するため、関連民間企業、企業家を厳しく監視していく姿勢を明確に示している。その槍玉に挙がったのが、一般人でも知っている高名なビジネスマンたちである。

大連の不動産企業「万達集団」の王健林会長は全中国で住宅、ホテル、商業ビル建設を進めてきたが、近年、米国などでの不動産投資のため多額の資金を持ち出したために当局ににらまれ、昨年秋に一時拘束され、事情聴取を受けた。また、保険業を中心に財をなした安邦集団の呉小暉会長も現在拘束され、取り調べを受けている。呉小暉氏自身は浙江省の普通の家庭の出身だが、ビジネスの過程で陳毅元帥の子息陳小魯氏と提携したり、小平氏の孫娘と結婚したりして太子党の力を借りてきた、これまた著名なビジネスマンだ。銀行、証券などに投資していた明天集団の肖建華会長も昨年、香港のホテルから大陸内に強制連行されたし、やはり世界各地で不動産に手を出していた世紀金源集団の黄如論会長も賄賂行為で調査を受けた。さらに、女優から投資家になった趙薇(ビッキー・チャオ)さんも、6000万元の資産を元手に15億元の借款をして株式投資などをしたために、証券監督管理委員会に調べられ、罰金を支払わされている。

こうした企業家の拘束、取り調べは、彼らを震え上がらせ、民間経済発展のマインドを極端に冷やしている。習近平氏主導の経済運営(シーコノミクス)が、独裁権力の掌握と相まってますます左傾化し、社会主義的な非効率性を強めるなら、国内企業家は多国籍企業となって活動拠点を外国に移すだろうし、海外からの対中国投資はダウンしていくことになろう。