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チャイナ・スクランブル

主権返還後20年目の香港、「二制度」より「一国」強まり動揺する経済界、住民(上)
2017-07-13. 日暮高則
香港の主権が英国から中国に返還されてから、今年でちょうど20年目。筆者は通信社の記者として1997年7月1日をまたぐ5年間、現地にいて返還の前後をつぶさに観察していた。中国が「一国二制度」のもと、「50年不変」「港人治港」「高度自治」を約束し、不安になっていた香港住民を慰撫したことは記憶に新しいところ。現在、形式的に「二制度」は保たれているが、実質的には「一国」が強調されている感がある。ビジネスマンは香港の将来に懐疑的になって資金を外に移し、一般人でも台湾その他へ移住する人が多くなった。一方で、温厚な民主運動では生ぬるいとばかり、「香港独立」を主張する過激な勢力も現れた。彼らの狙いは中国当局の怒りを呼び込み、武力行使を引き出すことで国際的に注目させる作戦のようにも見える。香港は今、どうなっているのか。

昨今の香港の経済状況は悪くないようだ。林鄭月娥新行政長官が7月1日の就任式で明らかにしたところによると、祖国復帰後20年で経済規模は大きく膨らんだという。地域GDPは1997年の1兆3700億香港ドルから2016年には2兆4900億香港ドルと年率3・2%で増加。一人当たりGDPは1996年の19万香港ドルから2016年には34万香港ドルとなり、6割のアップとなった。香港の魅力の一つである国際物流では、16年の貿易貨物取扱高が7兆5966香港ドルで、そのうち輸入が4兆0084億香港ドル、輸出が3兆5882億香港ドルと世界トップセブンにも入る取り扱い規模だという。

株式市場(H株)への上場企業は1900社以上で、その総市場価格は26兆香港ドル。毎日平均600億香港ドル以上の取引があるとのこと。2016年に新規上場企業が集めた資金は1950億香港ドルで、世界一と豪語している。香港金融管理局が持つ外貨準備高は2017年2月末現在、3905億米ドルで、1997年12月末の928億米ドルに比べて4・2倍にも達した。中国とのつながりで言えば、香港はオフショア人民元の最大の集積地で、世界の人民元決済の7割は香港で行われているという。華南経済圏など大陸にある外資系工場が金融システムのしっかりした香港を取引の場として利用するケースが多いことが背景にあるのだろうか。

香港経済が順調な伸びを示していることを背景に、返還20年の記念式典臨席のため香港入りした習近平国家主席の口舌も滑らかだった。式典前日30日夜、地元政府主催のパーティーに出席した際、「香港人は3つのことを信じてほしい」と語り出した。「それはまず香港人は自分を信じてほしいということ。5000年の歴史を有する卓越した中華民族の一員である香港人は、これまで香港をすばらしく管理、建設、発展させてきたのだから。2つ目は香港の地を信じてほしいこと。ビジネス・サービス環境、法律、会計制度、世界との接続面は申し分なく、政府役人は清廉だ」と強調。そして、「3つ目は国家、中国を信じてほしいこと。世界第2の経済大国が香港を強固に支えているのだから」と胸を張った。

ただ、パーティー出席者の中には、香港経済の伸長に国内成長率アップが寄与したのは認めながらも、習主席の話にいささか違和感を持った人もいたことであろう。というのは、香港の繁栄を築いたのは、英国植民地時代の「法の支配(rule of law)」があったからこそで、それで英国や諸外国の企業が安心して同地に根を下ろした。中国が誇るべきものではない。習主席が法律の整備を評価するなら「中国国内も香港同様の法の支配を徹底させるべきだ」との思いを持った向きもあったのではないか。「政府役人の清廉さ」も、腐敗が止まない中国の現状を見るにつけ、習主席が強調すると皮肉に聞こえる。徹底的に汚職取り締まりが進んだのは、英国総督の呼びかけで「廉政公署」が創られたことと、公務員に高額の給与を払うようになったためだ。廉政公署は独立の機関であり、党中央の指揮下にあって権力闘争の手段としても使われる中国の規律検査委員会とは異質だ。