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華北の「外国」建築をあるく

第26回 中国のガウディ?:瓷房子
2017-04-26. 東福大輔
天津駅のちょっと南、赤峰道(チーフェンダオ)という道をとおりかかると、異様な建物の姿が目に飛び込んでくる。無数の花瓶が塗りこめられた壁の向こうに「China」の文字が浮かび、その文字がまとわりついている洋館に目を凝らすと、屋根、窓、手すりには隈なく陶片が貼られている。天津は景観が緻密に管理されている都市のひとつだが、その中でもとりわけ静かなフランス租界に強烈なインパクトを与えている。

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正面。フレンチ・コロニアルを覆いつくす陶片。
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窓まわり。陶磁器の底部の高台などが塗りこめられている。
陶片を貼り付けたデザインというと、アントニ・ガウディ設計によるバルセロナの建物群があるが、あれは曲面を装飾するために平たいタイルを割ってモザイク状に貼り付けたものである。それとは違い、ここでは壺や茶碗といった中国の骨董を割ったものが、色や部位ごとに分類されて貼り付けられている。覆い尽くしている陶片のおかげで、建物の外観には白地の肌にコバルトの青色が映えている。この青を焼成する技法は元時代に完成して「青花(チンフア)」と呼ばれ、日本にも「染付(そめつけ)」として伝来した。同時代にヨーロッパの権力者たちをも魅了し、ウェッジウッドやロイヤルコペンハーゲン、マイセンといった追従者を生んでいる。中国が生んだ世界最高の技術であり、中国人の「愛国心」を満足させる格好の素材でもある。

このフレンチ・コロニアルの住宅は天津でレストランを経営する社長が3,000万元で買い受け、古陶磁で飾り付け、博物館として公開しているものだ。およそ7億個の陶片と「13,000の花瓶・皿・碗、300の北魏・北斉・唐時代の石彫、300の白大理石製の獅子像、300の明・清時代の猫型の陶枕(とうちん=陶磁器製の枕)、20トンあまりの水晶や瑪瑙」が使われているという。ホームページに載せられたこれらの宣伝文句をみるだけでも、個人が財力に任せて買い集めた一貫性のないコレクションであることがうかがえる。説明もなく雑多なコレクションが並べられているので、博物館というよりも個人の「趣味の部屋」を観ているかのようで、ただただ、その物量に圧倒されるほかない。

この建物の改造は2002年に始まった。この住宅は国際連盟の民国代表を務めた黄栄良という人物が住んでいたもので、天津市は2005年に「歴史風貌建築」に指定して保護に乗り出したが、すでに手遅れだった。オーナー側は文化財指定に逆らう形で改造を強行し、2007年には博物館をオープンさせてしまった。歴史建築の保護条例違反ではないかという議論をよそに、いまも博物館は物好きな観光客を集めている。

この建物のデザインは目立つことには成功しているが、グロテスクである点は否めない。愛国心の発露というものは外国人にはこう見えるものなのかもしれない。

<瓷房子>天津市和平区赤峰通。地下鉄3号線「和平路」駅下車、徒歩5分。入場料大人50元。9〜18時。
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