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華北の「外国」建築をあるく

第28回 老若男女で賑わうライブラリ:天津図書館
2017-07-25. 東福大輔
天津の文化施設のコンプレックス、「天津市文化中心」には、もう一つ日本人建築家による現代建築がある。山本理顕設計工場による「天津図書館」がそれだ。山本氏は商業施設「建外SOHO」の設計により中国国内で知名度を上げたが、その彼による床面積58,000屬竜霏腓文共施設であり、2012年末に竣工した。この施設の施工中には付近を数度通りかかったが、建物の巨大さに比してその施工の速度に驚かされた記憶がある。

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「石のルーバー」で覆われる外観。
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内観、吹き抜けを横断する巨大な本棚。
この図書館には、表通りから手荷物検査を通って入る。このようなボディ・チェックは北京オリンピックを機に公共施設や交通施設に急遽付け加えられたもので、対応できている施設はほとんどないが、この建物では入口のすぐ隣にロッカー室を配置するなどの最低限の配慮が見てとれる。ロッカーに手荷物を納め、チェックを抜けると、テラスが階段状に張り出し、上部には梁やブリッジが縦横に錯綜する巨大な空間に出る。天窓から差し込む日光、そしてそれを反射する内壁に張られたパネル、置かれたベンチなどの家具類も細かくデザインされていて中国でここまで実現できたかと感心させられる。一番驚かされるのは、ここを訪れている市民の多さだ。家族連れ、老夫婦、学生などで大変賑わっていて、構造で小分けにされた閲覧室はどこも混み合っている。

一番の白眉は構造だろう。井桁状に組み合わせた巨大な梁を積み重ねて空間を構成している。この梁には本棚が組み合わされていて、まるで本棚が構造となり、空間を仕切っているかのように錯覚させる。図書館や書店のデザインでは本棚によって空間を仕切っていくのは常套手段だが、ここまで大胆にやった例は殆どないのではないか。伝え聞く話によると、構造に限らず、空調システムなども技術的な難易度が高かったという。とはいえ、建築の技術は日中で大きく変わるわけではない。一番の問題は、実施設計を担当する地元設計院を説得することだったであろうことは容易に想像できる。

この建物の外観は、コンペ時はガラス張りとして構想されていたが、勝利時の条件として、外装を石張りとするようにとの指示があったという。設計事務所側は、本来は重厚な外観を作り出すのに用いられる石張りで「軽い」外観を作り上げることに腐心し、「石のルーバー」を考え出した。ルーバーとは、細い部材を同じ方向に組み合わせて光が透過するようにして軽さを演出する手法であり、木材で作ったものは現代建築でもしばしば見られるが、石はルーバー的な表現に適さないため、石材で作ったものはほとんどない。これも技術的には一つの挑戦だったと思われる。

さまざまな技術的な問題をクリアーしながら施工されていたこの図書館だが、竣工間際に当時の天津市長が建設現場を訪れ、「建設中のようだ」としてルーバーの間を石で埋めるように指示したという。これに対して設計事務所側は「設計者を尊重していない」と激怒し、それを美術家/建築評論家の方振寧(ファン・ジェンニン)氏が微博(ウェイボー、中国版Twitter)で擁護し、中国国内でも議論が巻き起こった。なお、当時の天津市長は、習近平に近い人物と目されていたが2017年1月に規律違反で失脚している。2015年の天津の倉庫爆発事故でも責任が問われているという。そんな政争をよそに、この図書館は今日も市民で賑わっている。

<天津図書館>天津市南開区。天津地下鉄3号線「呉家窑」駅よりバス47環線にて「文玥北里」下車徒歩3分。
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