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華北の「外国」建築をあるく

第27回 北京オリンピックの落とし子:天津オリンピック・スタジアム
2017-05-29. 東福大輔
乾ききった都市の多い北方中国において、天津は「水」の多い都市といえるだろう。特に市街の南方は池沼の多い地帯であり、そのものズバリの「水上公園」や、天津テレビ塔の周囲を湖で囲んだ「天塔湖」など、水景を取り込んだ観光名所が集中している。建築士出身の天津市の政府高官が、このあたりの水景の繋がり方をスラスラと鉛筆でスケッチしたのが印象に残っている。そのくらい天津にとってこの周辺の水際のデザインは重要ということで、今回触れる「天津オリンピックセンター・スタジアム」もその中の一つである。

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外観。巨大な階段が2Fコンコースへと繋がる。
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オリンピック直後のコンコース内部。
このスタジアムは四方を広大な人工湖に囲まれており、スタジアム自体も銀色の屋根で覆われた楕円形をしている。設計コンセプトは「水滴(シュイディー)」だそうで、市民にはその名の方が通りがいい。この建物に関するテキストを読むと、どうやら設計者はもっとポエティックな表現である「露珠」と呼んで欲しかったようだが、即物的な市民たちがそう呼んでいるところに出くわしたことがない。ともかく、天津→水→水滴、という単純な連想が天津の政治家たちに大受けだったことは想像に難くない。

設計は日本の「佐藤総合計画」によるものである。この大手組織設計事務所は北京オリンピックのサッカー競技場のうち、ここと瀋陽の2箇所の設計を担当している。決勝が行われた北京国家体育場こと「鳥の巣」を除けば、オリンピックを目指して作られたサッカー会場の多くを設計したことになる。おそらく、中国におけるサッカー競技場の経験や、厳しい設計施工のスケジュールを守った手腕が評価されたのだろう、佐藤総合計画はオリンピック後も「深セン湾体育中心」という他のサッカー競技場の設計を受注している。

この建物には、周辺の道路から東西南北に渡された4本の道を渡って入る。湖が道のすぐ横まで迫っているので、道というよりは巨大な橋のようでもある。この道はそのまま巨大な階段へと変わり、スタジアム全体をめぐる2階のコンコースへと接続していて、来場者の主要動線を構成している。グラウンドや選手たちの控室、ヘルスセンターや駐車場など、その他のほとんどの機能は1階に収められている。1階の建物外周には店舗・レストランなどのテナントスペースが設えられ、2階のコンコース沿いにも店舗スペースがあるが、オリンピック直後に訪れた時は全てのテナントが空っぽだった。

大きな湖に卵状の建物が浮かんだ北京の「国家大劇院」を思い出してほしい。この建物は「大劇院」に似たシンボリズムの形式を持っている。人工湖に浮かぶ建物の姿は、政治家たちのメンツを重んじるシンボルとしては十分に要求を満たしているが、「陸の孤島」のような建物は商業施設としてはなんとも具合が悪く、テナントがいくつか入った今も賑わっているとはいい難い。オリンピック後にダブついた体育施設の商業化を請け負う会社が北京にあるが、そこの担当者がこの施設の有効利用は難しいとこぼしていた。現在は、地元サッカーチーム「天津泰達」の試合以外は、定期的にビールフェアなどのイベントを打つ事で糊口をしのいでいる状態のようである。
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<天津オリンピックセンター・スタジアム>835番バス「体育中心北」下車徒歩10分