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華北の「外国」建築をあるく

第25回 「白鳥」か?「鶴」か?:天津自然博物館
2017-03-24. 東福大輔
天津の南側には、博物館、美術館、科学館、図書館、劇場といった各種の文化施設に、ショッピング・モールまでが加えられた「天津市文化中心」というエリアがある。通常、こういった施設は都市の中にばら撒かれるように配置され、それらを巡る経路を整備することによって都市全体の文化レベルの底上げが狙われるものだと思うが、文化施設が政争の道具になりがちなのは我が国と同様、いや、それ以上といってもよい中国のことだ。政治家たちはおのれの「手柄」とすべく、これらの文化施設を巨大な池の周りに集め、これでもかと広大な緑地で囲い込んでいる。

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大きなガラス面から、吊り構造のキャノピーが伸びる。
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エントランス・ホール内観。
その文化中心の西側にあるのが「天津自然博物館」だ。現在は動植物や古生物、地質などを見せる自然史博物館になっているが、建てられた当初は「天津博物館」の名が与えられ、豊富な史料を収蔵していた。文化中心の東側に中国人設計者の手による博物館が完成した際に、そちらへコレクションを移すと同時に現在の形へと改装されている。

設計は日本の建築家の高松伸と構造家の川口衞の共作とクレジットされているが、川口氏が設計を主導したことは間違いなかろう。アーチ、吊り構造などの構造要素が効率よく組み合わせられ、川口氏らしい構造的な合理性が通底しているのが見てとれるからだ。

そもそも、中国の博物館や美術館といった文化施設は、諸外国のそれとは異なるものとなっている。まず、入口を入ったところに巨大なエントランス・ホールが必要になる。これはその大きさを誇示し、メンツを立てるためでもあるが、展覧会の開幕式やテープカットなどの政治的な手続きを行う場としても重要なのである。そして、それぞれの展示室は、そのエントランス・ホールに直接接続する。展示室に差し込む太陽光は控えめでないと、展示ごとに変わる内装に対応しにくい。よって部屋は基本的に暗い箱となる。総じて規模が小さめで、観覧者の経路や自然光の取り入れ方がポイントとなる日本の設計事情とはだいぶ違うのだ。

この博物館は、正面のガラス張りの部分は巨大なエントランス・ホールで、裏側に展示室を納めており、この「中国標準の博物館」の条件どおりとなっている。高松氏がテキストで触れているが、天津市から出てくる設計上の要求がほとんどなく困惑したらしい。ゼロ年代初めの中国の状況を想像するに、展示方法がわかる人間が施主側にも居ないため、要求を出しようがなかったのだろう。試行錯誤しながら設計条件を探り出してゆく労苦は察するに余りある。

最終的なカタチは、湖上に浮かぶ白鳥の比喩として説明され、「あまりにも美しい」として施主側に了承された。プロジェクトはスムーズに進むかに思われたが、工事途中で「この平面は日本航空の鶴のマークに似ている」とのクレームがつき、工事が止まってしまったらしい。当時、関係者たちの間では「この建物は『白鳥』か『鶴』か?」がさかんに話し合われたかもしれないが、おそらくそれは意味のない議論だっただろう。その時期は、尖閣諸島問題によって日中関係の緊張が高まっていた。つまりは政治的なイチャモンに過ぎなかったのだ。

<天津自然博物館>バス47路環線「天津博物館」で下車、徒歩5分
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