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華北の「外国」建築をあるく

第32回 われわれの「鳥巣」:国家体育場(1)
2018-03-23. 東福大輔
 中国の人々は「八」の数字には特別な思い入れがある。日本でいう「末ひろがり」のような抽象的な連想ではなく、財を成すという意味の「發財(ファーツァイ)」に発音が似ているから、というなんとも現世利益的な理由によるのが中国らしい。2008年8月8日8時8分、この縁起の良い時刻に始まった北京オリンピック開会式を、筆者は友人たちと集まって観ていた。直前に、演出担当の張藝謀(チャン・イーモウ)のスタッフとして働いている人物に「内容は言えないけど、素晴らしいよ」と聞いていたので、これは凄そうだと知り合いの建築家の事務所を拝借し、テレビを一緒に観ようと友人たちを誘ったのである。

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ランダムに配置された鉄骨が特徴的な外観
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内部。上部に李寧が浮揚した部分が見える。構造は厚く、照明などの機器も収められている。
 諸子百家の思想やシルクロードを通じて行われた交易など、中国の歴史を見せるアトラクションも面白かったが、特に興味をそそられたのが冒頭の蔡國強(ツァイ・グオチァン)による花火の演出と、クライマックスの聖火の点灯である。2008人がマス・ゲームのように打楽器を打ち鳴らすカウントダウンの後、北京市街の南にある天壇にはじまり、天安門、故宮、景山、鼓楼、そして会場へと、北に向かう巨大な「足跡」型の花火を打ち上げていた(注1)。北京の都市構造は、天壇からオリンピック公園に至る強力な南北軸と天安門を横断する東西軸、そして全体を同心円状にとりかこむ複数の環状線からなり、それがそのまま皇帝が宇宙の中心であるという中華思想を体現している。この演出はそんな北京独自の都市構造を視覚化したものといえるだろう。また、終盤では、最終聖火ランナー(注2)がワイヤーで吊られ、巻物のアニメーションを追いかけながらスタジアムの内側を一周し、屋根に立つ聖火台に点火した。後に詳述するが、このスタジアムは構造がゴツく、客席からは屋根がひときわ厚く見える。この演出もまた、建物形状から発想されたものではないか。

 この開会式の会場となった「鳥の巣」こと国家体育場は、北京オリンピックから十年を経た現在においても、アジアで最も有名なスタジアムの一つである。もちろん、中国国内でも知らぬものはおらず、絵葉書やガイドブック、TVCMなど、北京を紹介する図像には必ずといっていいほど登場する。この建物の設計は、国際的な知名度も高いスイスのヘルツォーグ&ド・ムーロンで、これに芸術顧問として美術家の艾未未(アイ・ウェイウェイ)と、中国建築設計研究院が協力している。中国においては、海外の設計者は国内企業との協働が必須なので設計院の参加は当然だが、世界的な美術家である艾未未が中国の文化や歴史についてのアドバイスを与えている点が面白い。

 平昌オリンピックが閉幕した今、世間の目は2020年の東京オリンピックに向けられているが、日本の騒ぎの裏で、北京は2022年の冬季オリンピックの開催地に決定している。その際、開会式と閉会式が行われる予定なのもこの「鳥の巣」だ。同一都市で夏季と冬季が開催されるのは五輪史上初のことだが、同じスタジアムを使って開会式が行われるのも初めてのことだ。前述したように、2008年の開会式のアトラクションはこの建物の立地や形態を生かしたものだったが、2022年はどんなパフォーマンスが行われるか?気が早いが、今からこっそり楽しみにしている。

(注1)蔡國強は火薬を表現メディアとして使用し、世界的に評価された美術家。後ほど明らかにされたが、残念ながらこのパフォーマンスの殆どはCGで合成されたものだった。
(注2)最終ランナーの李寧(リー・ニン)は中国のメダリスト。現在は自身の名前を冠したスポーツ用品メーカーの董事長。
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<北京国家体育場>北京地下鉄8号線「奥体中心」駅下車5分。通常の見学は9:00-18:00、入場料50元。