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華北の「外国」建築をあるく

第16回 注目の夫婦による開発:望京SOHO
2016-01-28. 東福大輔
現在のSOHO中国のトップは潘石屹(パン・シーイー)と張欣(ジャン・シン)の夫妻だ。特に建物のデザインを統括している張欣は、イギリスのサセックス大学を卒業し、ケンブリッジ大学を修了したという才媛であり、現代アートを買い集めるアート・コレクターとしても有名だ。同じく、イギリスの建築教育の名門のAAスクールで学び、建築に対して現代アート的なアプローチをするザハ・ハディドとウマが合ったのであろうことは想像に難くない。それは「銀河SOHO」や「望京SOHO」の完成以後も、上海のプロジェクトなどを彼女に任せ続けていることからも明らかだ。



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曲面が主張する外観は「銀河SOHO」と同様
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内観。エスカレーターなどの設備機器の造形も銀河SOHOと似ている
設立したばかりの頃のSOHO中国(当初は「紅石」という会社名だった)は、他のディベロッパーと同様、プロジェクト建設後も自身で保有する部分を持たずに全て売り払っていた。つまり、建物内に無数のオーナーが存在し、それぞれの「大家」がテナントを呼び込んで入居させていたということだ。物業と呼ばれる会社が建物全体の管理を行ってはいるものの、建物を保有していない以上、それぞれのオーナーに対してあまり強くは出れない。これは中国の良からぬ因習で、特に商業部分にとっては不健全な状態となりがちだ。それぞれのテナントが広告を貼り付け始めて雑多なグラフィックが溢れ、設備もテナントが変わるたびに更新されていって、最後にはスラムのようになってしまうのである。

このような「雑居化」を嫌ったSOHO中国は、「建物の一部を自社で保有する」という(中国においては)画期的な決断をする。銀河SOHOも望京SOHOも、できるかぎり保有して管理することで、建物の価値を守ろうとしたのである。先日、張欣はドイツのデア・シュピーゲル誌のインタビューに答え、これは激しく変化する中国経済に対応するための方針転換だったと語っている。確かに、今までの物件のように「売り逃げ」て儲けることはできなくなったが、健全な財務体質の会社へと変化を遂げたといえるだろう。

この望京SOHOは、望京という地区の一等地にあり、3棟のタワーからなっている。横長の窓が建物を回り込む表層は銀河SOHOに似ているが、それぞれの棟には中庭はなく、平べったい形となっている。北京空港から市内へと向かう高速道路から眺めると、まるで細長い塔が建っているようにも見え、また正面からは大きな山が聳えているようにも見える。この様々に変化してゆく形は実に印象的で、ディベロッパーが開発した物件としては、傑作と呼んでもいいと思う。

だが、生き馬の目を抜く中国の建設業界ならではの事件が起きた。重慶のディベロッパーがこの形をコピーした事が明らかなプロジェクトを発表したのである。潘石屹と張欣は、これを微博(中国語版Twitter)で非難し、ただちにザハ事務所と一緒に「剽窃」したディベロッパーを相手に訴えを起こした。そもそも、中国は著作権に対する認識が甘く、注目の建物の周りには「山寨建築(コピー建築)」が溢れがちである。コピーされた方は泣き寝入りする場合が多く、まさしく「やったもん勝ち」の状態で、オリジナルを作ろうと努力する人が報われない状況を生んでしまっている。潘石屹にとっては、この訴えに勝っても得する事はほとんどない。これは、彼の言う通り、中国に「公正さ」をもたらすための訴えだといえるだろう。

突然の経営方針の転換にせよ、山寨建築に対する訴えにせよ、この夫妻は中国のディベロッパーのロールモデルとなっている。日本のディベロッパーの場合、その社長が表に出てくる事はほとんどない。だがこの夫妻は、テレビの対談番組を持ち、また雑誌のインタビューへの露出も積極的に行っており、その発言は人々に対して大きな影響力を持っている。

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<銀河SOHO>北京市朝陽区。地下鉄15号線「望京」駅下車、徒歩15分