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華北の「外国」建築をあるく

第19回 飛行機を迎える龍:北京首都国際空港第3ターミナル
2016-06-29. 東福大輔
 以前の北京空港は、国家の要人を送迎するVIP用ターミナル、第1ターミナル、第2ターミナルと、3つのターミナルを持っていた。2008年の北京オリンピックを機に、逼迫する発着数に対応するためにさらに建てられたのが第3ターミナルである。北京は、以前報じられていたようなスモッグは少なくなり、大気が澄んでいる日が多くなった。多くの場合、飛行機は北京の中心部を左に眺めながら空港に降りたつ。赤い屋根をもつ第3ターミナルは、その飛行機からもひときわ大きく見えることだろう。

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エントランス部分。長大な車寄を覆う庇。
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下層は到着、上層は出発ロビー。有機的な形状の屋根が全体を覆う。
 実際、中国の他の建物と同じく、このターミナルは巨大である。長辺の長さは約3.2キロメートルで、総面積は約98万平方メートル。日本を代表する巨大開発である「六本木ヒルズ」が、オフィスからマンションまで全ての床の面積を足しても70万平方メートル強であることを考えると、空港という低層の建物がそれをはるかに凌駕する規模を持っていることは驚異的である。この建物の建設中、向かいに建つ第2ターミナルからたびたび眺めていたが、地平線の遥か彼方まで続いてゆくタワークレーンの姿に圧倒されていたものである。完成後は完成後で、ラウンジの入り口に「ここから一番遠い搭乗口までは徒歩25分かかります、早めに出発するように心がけてください」と掲示されているのを見て、驚いたりもした。

この第3ターミナルはさらにT3-C、T3-D、T3-Eの三つの小ターミナルに分けられており、それらの間は無人コントロールの電車で繋がれている(呼称がCから始まっているのは第1、第2ターミナルとの混同を避けるためである)。設計者は英国最大規模の事務所を持つノーマン・フォスターだ。大きくうねり、ウロコがめくれ上がったような天窓がある屋根はあきらかに「龍」の隠喩である。赤い屋根はまた、中国で好まれる「中国紅」の色を想起させる。プレゼンテーションの席では中国の高官たちをさぞかし喜ばせた事だろう。地元の人たちからも、この空港の運営はともかく、建物自体の悪い評判はあまりない。日本人にとってみれば、大きすぎ、やたらと歩かせられる事に辟易してしまうのだが、中国人にとっては「誇らしい」ということらしい。

 内部に入ると、これだけ巨大な空港を短い工期で竣工させるため、建物の構造や外壁を細かいところまで一律に決めてしまい、そこから外れる部分が極力出ないように設計する「標準化」が徹底して行われているのがわかる。このような設計手法をとると、普通はつまらない建物になってしまうものだが、エントランスの屋根の端部を見せる車寄せにはじまり、大きな吹き抜け、うねる大屋根など、欧州人でありながら中国人好みのダイナミックな空間を実現させたフォスター卿の力量には唸らされる。

 ところで、このように世界第二位の規模をもつことになった北京国際空港も、交通量が増加し、たちまちパンク状態に陥ってしまった。現在は北京の南に「北京大興国際空港」が2025年の完成に向けて建設中である。旅客ターミナルの総面積は70万平方メートルと少々コンパクトになるが、空港全体の面積や滑走路数はこの空港を大きく凌駕する予定である。設計はザハ・ハディドによるもので、発表されているヒトデ型の模型や完成予想図を見るかぎり、「中国人好み」のデザインであることは共通しているようである。特に次の場合は、世界一の規模のハブ空港であるという「誇らしい」ポイントも付け加えられることになりそうだ。

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<北京首都空港 第3ターミナル>北京市朝陽区。「T3航站楼」駅下車。