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華北の「外国」建築をあるく

第18回 成功したオープン・モール:太古里
2016-05-26. 東福大輔
繁華街、三里屯は「北京の六本木」と呼ばれている。以前の三里屯には大規模な商業施設はなく、ちょっと離れて百貨店がある程度だったし、中心の酒吧街は西欧風のバーでひしめいており、近隣の大使館ではたらく外国人を吸い寄せていた。その意味では、六本木ヒルズがオープンする前の90年代の六本木の雰囲気に近かったと言えるかもしれない。ただ、ヒルズ以降に変化していった六本木の姿を追うように、近年はこの場所も多くの開発が行われている。その先鞭をつけたのが、当初「三里屯ヴィレッジ」という名だったこの施設である。オープンしたのは、2008年の北京オリンピックの頃だ。


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南区。大通りに面する入口部分は隈研吾自身の設計。
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北区にあるホテル「オポジット・ハウス」、吹抜部分の内観。
この開発は、間に1ブロックを挟んだ南北2つのブロックからなっている。南区は若者相手のカジュアルショップやスポーツショップ、北区は富裕層をターゲットにした高級ブランドショップが入居しており、そのテナントによっても、建物が生む雰囲気によっても差異が与えられている。メインの設計者は東京オリンピックのスタジアムの設計でも有名なった隈研吾で、全体計画こそ彼による「胡同」と呼ばれる北京の路地をイメージしたものであるが、それぞれの棟の表面はSHoP ArchitectsやLOT-EK、迫慶一郎、松原弘典といった比較的若手の設計者が担当する瀟洒な外装デザインで覆われている。

通常、アジアは高温多湿なため、廊下部分が外部に設けられ、そこに商店がとりつく形の「オープン・モール」はほとんどない。また、オープン・モールはエスカレーターなどの設置が難しく、客の動線を計画するのが困難になるので3階建て程度が限界で、空調管理された密閉型のモールと比べると多くの店舗を集積することができないので避けられる傾向にある。当時はそれほどの人通りのなかった三里屯であえてオープン・モール形式をとったことはかなり野心的な選択だったと言えるだろう。現在この開発地周辺は多くの人で賑わっており、ディベロッパーの当初の読みはあたった。だが、当初のディベロッパーは、工事の途中で開発権や開発コンセプトはおろか、設計中の設計者ごと英国系香港企業のスワイアー(太古)へと売却してしまった。投機に関してはとりわけドライな中国人らしい話ではあるが、イギリスの資本をバックに中華圏で長く活動してきたスワイアーに買収された事は、この開発にとって良かったのかもしれない。テナントの誘致やその配置計画の事をリーシングというが、その質が中国の国内企業とは違い非常に高いのである。このショッピング・モールはスワイアーによって「太古里」と名を変えられ、その後も中国各地に展開されている。

建築デザインにおいても、そして内装デザインにおいても、様々な形態が入り乱れている本施設であるが、白眉なのは北区の一隅に建つ隈研吾自身が設計したホテルの「オポジット・ハウス(瑜舎)」だろう。外装は緑色の細かい中華文様がプリントされたガラスで覆われ、内部は赤色のガラスがふんだんに使われており、その補色関係が対照的な内外観となっている。その全体構成は北京の伝統建築様式の「四合院」を参照した大きな吹き抜けをもち、その吹き抜けの周りに客室が配置されている。吹き抜けの中央には大きなステンレスのメッシュが吊り下げられ、わずかに視線を遮っているのが現代的だ。また、それぞれの客室の内装は装飾を廃したミニマルなもので、北京を訪れる外国人には大変人気があるらしい。
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<太古里>北京市朝陽区。地下鉄10号線「団結湖」駅より徒歩9分