topics & News to Home
霞山会とは
月刊『東亜』
講演会・シンポジウム
中国への研究留学
日本への研究留学
東亜学院中国語学校
東亜学院日本語学校
日中交流
霞山会館
交通案内
各種お申し込みForm

■中国マクロ経済分析
 慶應義塾大学駒形研究会

■霞山学生会
■リンク集
■サイトマップ
一般財団法人霞山会
東京都港区赤坂2-17-47
赤坂霞山ビル
TEL.03-5575-6301
FAX.03-5575-6306

韓国百名山

第41回 月精寺はじめ名刹古蹟の点在する仏教霊山 五台山
2017-10-23. 森正哲央
1023morismall.jpg
仏舎利が奉安された山間の寂滅宝宮
すこし前だが、文在寅大統領が江原道の五台山で休暇を過ごしたという記事を読んだので、今回は月精寺はじめ名刹古蹟の点在する五台山を紹介したい。

中国で五台山と言えば誰もが知っている一大仏教聖地だが、韓国の五台山も古来からの霊山で、新羅時代の僧、慈蔵律師が中国から帰国後、中国の山にならって名づけたとされる。中国の五台山は、東西南北と中央にそびえる平らで広い五峰(五台)からなるが、韓国の五台山も、東台の東台山(満月山)、西台の虎嶺峰(長嶺山)、南台の麒麟山、北台の象王山、中台の毘盧峰(地盧山)が五峰とされている。麓にはそれぞれ観音寺、水晶庵、地蔵庵、弥勒庵、獅子庵の五庵があり今も仏教霊山として人々の厚い信仰を集めている。

1975年には、西の毘盧峰を中心とした五台山(月精寺)地区と、東の小金剛地区を合わせて国立公園に指定された。西の五台山地区は、毘盧峰を主峰として、西南部に小台山、虎嶺峰、小桂芳山、東に象王峰、頭老峰がつらなり、麓には月精寺や上院寺はじめとした名刹が密集している。一方、老人峰(1338m)ふもとの小金剛地区は、13キロにわたる青鶴川渓谷をその白眉とし、1970年に韓国名勝第1号に指定された。五台山地区へは平昌郡珍富邑が、小金剛地区へは江陵市が交通の起点となる。

大関嶺(832m)の東に位置する平昌郡珍富邑は山間の小さな街だが交通の便が良く、五台山のほか、加里旺山や桂芳山への起点ともなっている。その珍富から上院寺行きバスに乗車、五台川に沿って走ること20分余りで月精寺の前を通過する。

新羅時代の644年に慈蔵律師によって創建された月精寺は、北の東台山にのぼる満月が美しいことからこの名が付いた。国宝の八角九重石塔(高15m)や宝物の石造菩薩座像など多くの文化財を今に伝え、江原道を代表する古刹として遠近に名高い。

月精寺より先は砂塵がまう砂利道となり、さらに5キロ先で霊鑑寺そばを通る。かつてここには、李氏朝鮮の歴史を編纂した『朝鮮王朝実録』を保管した史庫の一つがあった。日本へ運ばれた『実録』は関東大震災でほとんどが焼け、史庫自体も朝鮮戦争で焼失、戦後に再建された。東京大学にあった五台山史庫本47冊は2006年、韓国に寄贈され、今はソウル大学奎章閣に保管さている。

終点の上院寺駐車場で下車すると、「朝鮮王朝実録と王朝儀軌は、文化分権を実現するため必ずここに戻そう」という横断幕が張り出されていた。探訪支援センターで話を聞き、主峰の毘盧峰から象王峰を経て戻る約4時間コースを歩くことに決めた。

駐車場から3分ほど坂を上ると上院寺にでる。月精寺とともに新羅時代の705年に創建され、韓国で最も古い国宝の梵鐘(725年製)を有す。文殊殿前に並んで立っている狗像は、李朝第4代国王の世宗が、刺客から身を守ってくれた番犬を模してつくらせた。原型がわからないくらい風化で丸くなっているのが、その長い歴史を物語っている。

上院寺より上の山道は、道脇に灯篭石が立つ参道で、独特の風情が感じられる。30分も行くと、傾斜地をそのまま生かした階段状の獅子庵。法堂や修行所、事務所が五階建ての建物にすっきりと収まっている。

鬱蒼とした森に響く木魚を耳にしながら登ることさらに10分で寂滅宝宮(標高1300m)。建物裏手には、慈蔵律師が中国の五台山から持ち帰った仏舎利(釈迦の骨)が安置されており、茣蓙を敷いて多くの信者が一心に祈りを捧げていた。
 
寂滅宝宮から毘盧峰の山頂までは1・5キロ、1時間。本格的な紅葉には少し早いが、高度を増すごとにモミジの赤さが増していく。勾配がきつくなるが、階段がよく整備されているので歩きやすかった。毘盧峰の山頂は広場のようで、周りの山々が一望できる。中でも北の雪岳山は険阻な山容が際立ち、異彩を放っている。南東に見える発旺山(1458m)は、ドラマ『冬のソナタ』のロケ地となった龍平スキー場(通称ドラゴンバレー)があり、一時は日本人観光客でにぎわっていた。冬季五輪の会場の一つにもなっているので、再度脚光を浴びることになるかも知れない。

毘盧峰から象王峰までは2・3キロのなだらかな潅木の尾根で、ヘリポートを3つ通過する。
象王峰の山頂に着くと、先に休んでいた女性が、まるで待っていたかのように、剥いた梨を「ハイ、どうぞ」と手渡してくれた。礼を言って頬張ると、とても甘くみずみずしい。象王峰からひと下りで林道と合流、あとはひたすら冗長な砂利道を駐車場まで戻る。

一方、華麗な渓谷美誇る五台山国立公園の小金剛地区までは、江陵からバスで約1時間かかる。登山口には食堂や民泊(民宿)がずらっと門前町のように軒をつらね、小金剛が有名な行楽地であることを物語っていた。

小金剛はかつて青鶴山と呼ばれたが、朝鮮時代の儒学者、李珥が『青鶴山記』で、金剛山に似ているとして小金剛と名付けた。そのため奇岩や滝には、鬼面岩や九龍瀑布など、金剛山の名勝地にちなんだ名が付けられている。新羅最後の国王、敬順王の子、麻衣太子が小金剛に落ち延び、高麗に対する反攻の機をうかがったという伝説も残る。

小金剛には洛英瀑布、広瀑布、洗心瀑布など大小9つの滝があり、9匹の龍が一匹ずつ滝に住みついたとの伝説から、9つの滝をまとめて九龍瀑布とも呼ばれている。渓谷をつめコース最高峰の老人峰(1338m)を経てチン峠(960m)へ抜けた場合は、バスがないのでタクシーを呼ぶ必要がある。また九龍瀑布より上流は秋の乾燥期に入山規制がある。小金剛で入った食堂のおばさんは「五台山地区は古刹があるから有名だけど、本当は小金剛地区の方がずっと見応えあるのよ」と語っていた。

●アクセス(バス)
・珍富バスターミナル〜上院寺 40分所要。1日8本。
・江陵〜小金剛 江陵バスターミナル前停留場から303番バス。50分所要。1日13本。