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韓国百名山

第44回 紅葉が絹織物のように美しい 錦繍山
2018-02-09. 森正哲央
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険しい支尾根越しに忠州湖を望む
「錦繍山」といえば、北朝鮮の平壌にある「錦繍山太陽宮殿」を思い浮かべる人がいるかも知れないが、今回紹介するのは、それとはまったく別の、忠清北道堤川市と丹陽郡に位置する、秋の紅葉が美しい標高1016mの山だ。

丹陽郡守として赴任した文人の退渓・李滉が「目もあやな絹織物のようだ」と感嘆して名づけたといわれる。毎年9月には山岳マラソン大会、10月には柿谷紅葉祭が開かれ山麓一帯がにぎわう。錦繍山のほかに白岩山、上岳山、金水山、錦秀山、赤城山、茂巌山、霧巌山、また丹陽側から望むと横になった女性のようだと処女峰、美女峰などとも呼んだ。

錦繍山を含む山塊は、南北十数キロにおよぶ大きなものだ。主尾根に連なるのは北から鵲城山、東山、龍岩峰、錦繍山、アル峰、可隠山、マルモク山(馬項山)など標高500m〜1000mの山嶺で、枝尾根の神仙峰や猪昇峰、望徳峰が西へと伸びている。この内、錦繍山やマルモク山など南の一部が1984年に設けられた月岳山国立公園の北東端エリアに含まれている。東側には中央高速が走り、西には忠州湖が青い水を湛えている。

登山口は東側の丹陽郡赤城面上里と、南西の堤川市水山面上川里の2カ所。今回は東の赤城面上里から山行をはじめ、錦繍山、望徳峰を経て西の水山面上川里へと抜けてみた。

前日は山と川に囲まれた丹陽邑に泊まった。南漢江沿いの風光明媚な町で、高級魚の高麗ケツギョ(ソガリ)を食材とするピリ辛鍋(メウンタン)専門店が並び、河原では釣人がルアー釣りを楽しんでいた。

翌朝、市場前からバスに乗車する。梅浦邑まで北上してから、一転して赤城面へと南下する。梅浦には大きなセメント工場があり、社宅前で乗車した小学生で一時車内が賑やかになった。梅浦邑の街を抜け峠を越えると登山口の赤城面上里チントゥンで、所要時間は45分。

停留所そばの三叉路を右折、前方に錦繍山、左手には赤城貯水池を見ながら車道を緩やかにのぼっていく。上里から見た錦繍山は、女性の寝姿、あるいは妊婦に例えられる。せり出した山頂を豊満な胸やお腹に見立てているのだろうか。かつて白岳山と呼ばれたのは、白い岩肌が目立つためかも知れない。

30分でサンハク駐車場に着き、ひと息入れる。民宿や食堂の看板が目に付くが、やはり秋が人気なのか、車は一台もなく、辺りはひっそりとしていた。二本松と城隍廟を過ぎ、駐車場からしばらく歩くと分かれ道にでる。錦繍山と刻まれた石碑を見て右折し、錦繍山詩画登山路と名付けられた細道を上がっていく。道標によると、そばに錦繍山芸術人村がある。途中から石畳となり、さらに進むと、男性器を象った石や木の像が並ぶ楽しい公園にでた。

女性の寝姿に例えられる錦繍山は陰のエネルギーが強く、麓で暮らす男性は早死にするとの言伝えがある。そこで「男根石」で陰陽のバランスをとっているのだとか。その霊験のお陰で、錦繍山の麓で初夜を過ごせば偉人が生まれ、男根石に祈願をすれば男子を授かるという。

公園を過ぎるとカラマツ林の本格的な山道に入る。月岳山国立公園一帯のカラマツは1970年代に植林されたが、最近になって在来種の欅やアズキナシへと植え替えている。カラマツの韓国名は「イルボンイプカルナム」で直訳すると「日本原産の落葉松」。カラマツの伐採は太白山国立公園などでも計画されているが、余りにも民族主義的ではないかと、批判の声もあるようだ。また一帯はスミレ科のコウライタデスミレ(韓国語名ワンチェビコッ)の保護栽培地で、所どころ野生動物の侵入を防ぐ電機柵が張ってある。

公園から20分も行くと細流そばに道標(770m)が立っており、さらに進むと岩がゴロゴロした歩き難い急坂になる。水場を過ぎ、雪が残る崖下の急傾斜を抜けると鞍部の三叉路(880m)にでる。左折してひと登りすれば山頂だ。山頂は北西側の展望に優れ、なだらかな望徳峰、その北の神仙峰から猪昇峰へ続く尾根が一望できる。忠州湖はぼんやり霞んでいた。

鞍部の三叉路まで戻り、今度は乾いた落ち葉を踏み、広い軽快な尾根に沿って望峰をめざす。途中、気づかないうちに氷谷峠を通り過ぎる。地図によると、氷谷峠から綾江渓谷に下る道があるが、最近は使われていないようだ。望徳峰や神仙峰に囲まれた綾江渓谷は、別に氷谷と呼ばれ、夏でも岩の窪みに氷が溶けずに残っているそうだ。

錦繍山から1時間で望徳峰についたが、木々に囲まれ眺望はほとんどない。少し休んだら約100m戻り右折、上川里白雲洞へと下る。この道は2010年に開放されたばかりで、松の枝越しに錦繍山の山頂部が望める。右手には荒々しい露岩の支尾根が対峙している。

半分ほど下ったところでカラフルなウェアに身を包んだ男女3人とすれ違う。この日、山中で会った最初で最後の登山客。「この先の岩場は危ないよ」と教えてくれたので、緊張しつつ下る。木階を過ぎたあたりから露岩が多くなるが、特に危険も感じないまま、あっけなく下りてしまった。

固定ロープをたよりに岩の間を抜けると龍潭瀑布にでる。李朝時代にここで、清風府使(地方官)らが雨乞いした記録が残っており、一枚岩を勢い良く流れ落ちた水は、滝壺をつくることなく、そのまま急流となって流れ下る。龍潭瀑布からは平坦な道となり、「錦繍山隠れた秘景 龍潭瀑布」と刻まれた大きな石碑前で、錦繍山三叉路からの下山路と合流する。

さらに5分で舗装道となり、山神閣、普門精寺を過ぎ、黄色いサンシュユの花を見ながら、のどかな田舎道を下ると、上川休憩所の前にでた。売店の店頭に「コリス(コロスェ)樹液販売」と張紙があるのを見て、試しに買ってみた。店主自らイタヤカエデから採取したものだという。グラニュー糖を水に溶かしたように仄かに甘かった。堤川行きのバス(953番)は一日3本と少ない。水山里に出て、忠州行きバスに乗換えても良い。

●アクセス(バス)
・丹陽〜チントゥル 中央市場前停留場から乗車。一日5本。46分所要
・堤川〜上川休憩所 953番バス。一日3本