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アジアの今昔・未来

第412回
タイ版、「ネコに小判」

2017-06-15. 直井謙二
交通渋滞の激しいタイで野生のカメが車にひかれる事故が続発している。甲羅を割られたカメの治療に善意で取り組むチュラロンコーン大学獣医医学部の活躍はすでに書いた。(第382回「タイで評判の水産動物病院」)

多くのメディアが扱ったのでご存知の読者も多いと思うが、今年の始め体調の思わしくない25歳になる雌のウミガメがタイ西部シラチャにあるカメの保護センターからチュラロンコーン大学獣医医学部に運び込まれた。獣医医学部でカメにCTスキャンをかけたところ胃の中に大量のコインがあるのが見つかり緊急手術が施された。手術は成功し、胃の中から915枚、重さにして約5キロのコインが出てきたという。カメは術後も体調が思わしくないと報じられた。

タイの急速な近代化による車の増加による交通事故で甲羅を割られた前回のカメに対し、今回のカメの被害はタイの伝統的な習慣によるものだ。タイでは徳を積めば現世でも来世でも幸運に恵まれると信じられている。徳を積む方法は様々で、男子なら出家すれば家族も含め大きな得を積むことができるといわれている。多くの青年が10日から3週間出家して寺で生活をする。

手軽に徳を積む方法もある。寺に供物や現金を寄進する。忙しければ参拝に行く他人に金を預けてもよいのだ。多数の小鳥を籠に入れた人が道路で通行人に呼びかけている光景を目にする。籠に入った小鳥を買い、その場で逃がしてやれば徳が積める。殺生を嫌うタイでは小鳥ばかりでなく小さなカメやウナギも徳を積むのに利用される。

バンコク郊外のラカン寺を取材したことがある。チャオプラヤ川に面したラカン寺の近くには有名な暁の寺など観光スポットが点在する。ラカン寺はタイ人の祈りの寺で、外国人はほとんど見かけない。境内を歩くと無数のカメを入れたバケツを並べ商売をしている人がいる。(写真)参拝客は徳を積むためカメを買い、境内に面した川に逃がしてやる。参拝客はさらに徳を積もうと川にコインを投げ込む。紙幣では水に溶けてなくなってしまうからだ。カメを逃がしている参拝客に聞くと徳を積んだおかげで最近は体調がすこぶるいいという。

大河チャオプラヤでカメは大きく育つが、その過程で投げ込まれたコインを餌と間違え呑みこんでしまう懸念がある。手術を受けた25歳のカメも長い間に徳を積もうと投げ込まれたコインを呑みこんだに違いない。「ネコに小判、カメにコイン」だ。宗教に基づいた長く続くタイの習慣だけになかなか規制が難しい。