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アジアの今昔・未来

第441回
目標は「世界ネット会議のダボス」

2018-02-07. 伊藤 努
今回の中国取材旅行では、出発前に多忙だったこともあって、事前に訪問先を調べるなどの準備は一切行わず、従って、立ち寄り先である浙江省の烏鎮についても何の予備知識もないまま訪れることになった。後に知ったことだが、烏鎮は近くに古くからの大きな運河が通っていることもあって、運河から水を引いた水郷のある観光地として広く知られているほか、近年は、中国政府主催の「世界インターネット大会」の恒久的な開催地として業界関係者の間では知名度が上がっている。

筆者ら一行が浙江省桐郷市にある烏鎮を訪ねたのは昨年11月半ばで、地元の事務局役の工作委員会担当者は、12月に迫った4回目の「世界インターネット大会」の準備に追われていた。

2015年の第2回大会には習近平総書記(国家主席)自らが出席するなどこの世界的な会議開催に並々ならぬ力を入れている中国指導部だが、習氏の元勤務地である大会開催地の浙江省には、中国を代表するネット企業である電子商取引大手・阿里巴巴(アリババ)の本部があり、水郷など古い町並みが残る風光明媚な観光地の烏鎮が開催地に選ばれたのは地の利があったためだろう。大会を主催するのは、国務院直属の国家インターネット情報弁公室だが、中国政府当局は、世界各国の政財界要人が毎年冬に一堂に会する「世界経済フォーラム」(WEF)の年次会議が開かれるスイス東部の保養地ダボスに倣い、烏鎮を「インターネットのダボス」にしたいとして、この地を選んだのだ。

筆者は30年ほど前のスイス駐在時代、山間保養地で冬はスキー場があるダボスで開かれたこの年次会議を出張して取材したことがあるので、欧州の小国スイスから遠く離れた中国のこの地で、「ダボス」の町の名前を聞くとは思いもしなかったが、同時に親近感も沸いてきた。

それはともかく、習指導部は、ネット上で民主主義や自由などの欧米の価値観が浸透し、反体制的な言論が広がりかねないことに警戒を強めている。また、フェイスブックやグーグル、ツイッターなどを対象にした独自のネット規制に対して国際社会の批判が高まり、米国などとのサイバー問題も激しくなる中、大規模な国際会議を主催することでネット空間での主導権を握る狙いがあるとみられる。

習総書記は2015年12月開催の第2回世界大会での演説で、「ネットは世界をみんなの声が聞こえる地球村に変える」と訴え、自身が掲げる「ネット運命共同体」を主導したい考えを表明している。今後とも、世界インターネット大会の場などを最大限活用しながら、自由より管理や秩序を重視する「中国式ネット空間」を国際社会で拡大させていく構えだ。

筆者ら訪中団一行と会見した桐郷市の世界インターネット大会工作委員会(事務局)の沈甫明・副主任によると、2017年12月の第4回大会には世界の120カ国・地域の代表や有力企業幹部ら1500人の出席が見込まれているといい、大会に合わせて、中国の国内外のネット企業の商談会や新商品展示会なども行われる予定とのことだった。日本を含む西側社会や国際人権団体はこれまで大会に冷ややかな反応を示してきており、中国有数の景勝地・烏鎮の国際会議がダボス会議のように世界の有力メディアから注目される一大イベントに育っていくかどうか、地元の準備委員会幹部のやりとりや会場となる巨大なコンベンションセンターを視察して、小さからぬ疑念を抱いたことも付記しておきたい。