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アジアの今昔・未来

第437回
中国の烏鎮インターネット病院

2018-01-16. 伊藤 努
昨年11月中旬、4年ぶりに中国を駆け足で回ってきた。その直前に開催された中国共産党第19回党大会後の同国の発展戦略について北京で専門家の説明を受けるとともに、地方視察では商都・上海にも近い浙江省の桐郷市烏鎮を訪ね、中国経済のけん引役の一つともなっているインターネット産業界の取り組みなどを見てきた。北京での中国社会科学院日本研究所の研究者らとのやりとりの一端については霞山会発行のアジア専門月刊誌「東亜」1月号と2月号で筆者の連載コラムで紹介したので、本欄では中国社会の現状で興味深く感じられた見聞5回にわたって綴っていきたい。最初は、今回の訪中取材で同行した日本のジャーナリスト代表団一行を驚かせた「烏鎮インターネット病院」の先進的取り組みだ。

14億近い人口を擁する中国は現在、経済規模でも米国に次ぐ第2の経済大国だが、北京や浙江省杭州、上海など今回訪れた中国の大都市ではどこもスマートフォンを手にした市民や若者が街を闊歩し、日本社会以上にインターネットが普及していることを肌で感じた。中国の習近平指導部も、今後の経済発展戦略の重点施策としてIT(情報技術)を駆使したインターネット産業の積極的振興を掲げており、「インターネット・プラス」というキーワードを訪問した先々で耳にした。この言葉は、IT機器という手段を使って、これを将来の産業高度化に活用しようということで、「プラス」の部分はネット企業関係者の創意工夫でどのような応用・適用も可能ということになる。

筆者らが訪ねた浙江省桐郷市の烏鎮にある「烏鎮インターネット病院」は、インターネットを使って、病院での治療を受けたいと考えている中国各地の住民に対し、病院や医師の紹介から治療の予約までの手続きを同病院の先端的システムが代行してくれるというもので、国土が広大で、地域によっては病院や医師が偏在している中国の医療事情を改善していく大改革の一環として導入された。日本と中国では医療事情も違えば、健康保険などの社会保障制度も異なるので、簡単な比較は難しいが、日本と同様に、病気にかかってもきちんとした治療を受けられない庶民層にとっては、担当可能な地域の病院と担当医師を短時間に紹介してくれるだけでなく、患者側が提供情報に納得すれば、予約まで代行する手続きの手数料が60元(約1200円)で済むのであれば、病院で治療を受ける敷居はかなり低くなるように思われた。

烏鎮インターネット病院の受付にパソコンやスマホなどIT機器を使って病院と医師の紹介を問い合わせる際に、患者の側が現在の症状などを入力すると、同病院が誇る医療情報に関するビッグデータによって、大まかな初期的診断が可能となり、後は患者の居住地などの情報から通院に便利な病院や担当医師を紹介できるという仕組みだ。

このインターネット病院に登録している医師は30万人にも上るが、もちろん中国各地の名だたる大病院などで地元の患者たちの治療に当たっており、登録医師たちの医療実績や患者の間での人気の度合いなどもすべて公開されている。

烏鎮インターネット病院の広報施設を訪れると、入り口に掲げられた電子機器のボードには、これまでの手続き申し込み者の数や、実際に予約を済ませ、治療を受けた患者の人数などがリアルタイムで表示されていた。目の前にあるボードをしばらく見詰めていると、手続き申し込みの人数が数分ごとに数百人単位で増加しているのが分かり、利用者がいかに多いかが実感できた。

次回は、「インターネット・プラス」を実践している桐郷市の経済開発区を訪ねた際に見学した中国企業の取り組みを紹介したい。