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アジアの今昔・未来

第424回
比のイスラム過激派と戒厳令(下)

2017-09-21. 直井謙二
ホロ島はミンダナオ島とボルネオ島の丁度中間点に位置する。イスラムゲリラと対峙する最前線には3門の大砲が設置され、ゲリラの拠点を睨んでいた。停戦中とあって大砲にはカバーがかけられ、大砲を守る兵士の顔にも緊張感はない。(写真)

夕方、ホロ島の港に立ち寄ると漁船が漁から帰り、セリが始まっていた。買い物客と漁民の駆け引きが盛んに行われている。漁民の多くは漂海民で歴史的に定住の地を持たない。海岸線に高床式の小屋を建て、不漁になればマレーシアやタイにまで魚を求め移住する。漂海民に国境の意識はない。何千年もの間、魚影を求めて海を漂ってきた漂海民にとって植民地支配を効率的に行うために西欧諸国が設けた国境などは邪魔なだけだ。ボルネオ島とは目と鼻の先のタウイタウイ島のボンガオの港を取材した。

インドネシアやマレーシアの貨物船が石鹸などの日用品や食料それに中国語の新聞など大量の商品を積んで入港していた。不思議なことに港には入国管理事務所も税関事務所もない。華僑系の船員に聞いてみるとパスポートすら所持していない。「昔からこうだ。問題ない」と平然としている。

スールー諸島のシムヌール島にはフィリピン最古のモスクが残っている。日本人を初めて見たという子供たちも交え島民が親切に案内してくれた。モスクは1380年アラブ人シーマック・ドンによって建立されたもので建て替えられたモスクの内部には建立当初の柱が展示されていた。16世紀、大航海時代を迎え、スルタンが支配する都市国家のような形態が崩れ、イスラム教徒の先住民と西欧諸国との間で確執が生まれた。漂海民にとってキリスト教も国境線も外部の人間が後から勝手に持ち込んだという意識が強い。

生活物資を運ぶ貨物船で武器や戦闘員が秘密裏に運ばれても阻止することは不可能だ。こうした状況に対し、ラモス大統領は停戦と和解それに大幅なイスラムの自治をめざしMNLFとの直接交渉を目指し成功した。

まずイスラム国であるマレーシアに交渉の仲介を依頼した。マレーシアとフィリピンはボルネオ島のサバ州を巡って長い間領有権抗争があり確執があったが、ラモス大統領は交渉の仲介を依頼する代わりに領有権問題で譲歩した。武力による鎮圧ではなくイスラム国の仲介でイスラムゲリラの首脳部と直接和平に向けた交渉が必要だ。ミンダナオ島を含め再び自由に取材できる日が来ることを期待したい。