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アジアの今昔・未来

第443回
中国江南の水郷の町・烏鎮を訪ねて

2018-03-02. 伊藤 努
中国浙江省にある水郷で知られる観光地の烏鎮(ウーチン)は昔からの小さな運河と石畳の町並みがよく保存され、しっとりとした風情を醸し出していた。日本で言えば、町や村という行政単位の烏鎮を管理下に置く桐郷市の観光振興当局と一体となって、歴史的な町並みの保存に取り組みながら中国内外からの観光客を呼び込む努力を重ねていることが観光地として発展している背景にあるが、烏鎮を近く、ユネスコの世界文化遺産に登録する準備を進めているということも聞いた。これまで世界各地の世界遺産都市を幾つも見てきたが、たった1日の訪問でこの水郷の町が世界文化遺産に登録されるのは間違いないと確信した。

筆者らジャーナリスト訪中団の一行は、今回の招請先の中日友好協会および地元の桐郷市の対外友好協会のご配慮もあって、烏鎮の昔からの歴史保存地区にある伝統的旅館で一泊し、その夜には小さな乗合船という風情の小舟に揺られながらライトアップされた水郷巡りにも招いていただいた。翌日は、小雨が降る中を歴史保存地区を散策したが、その一画にはこの地方特産の生糸を織物に仕立てる絹織物工場が昔の作業所のまま保存されており、伝統産業に従事する地元の女性たちが実際の仕事の様子を実演していた。

蚕(かいこ)が吐きだした白い繭玉(まゆだま)を熱湯に浸した後、それを昔ながらの機械にかけて生糸を紡ぎだし、綺麗な織物に仕立て上げていく作業工程を順番に見学しながら、伝統工芸の奥深さの一端に触れたような気がした。

烏鎮はこのように、歴史的な水郷をうまく利用した観光地として有名なのだが、この烏鎮を世界の最先端産業であるインターネット業界の拠点として売り出そうというのが中国の習近平指導部の新たな戦略なのである。

烏鎮の歴史保存地区の絹織物作業場から車で10分ほどの所に巨大なコンベンションセンター(会議場施設)がある。中国政府が2014年から毎年開催している「世界インターネット大会」の会場である。昨年末に第4回大会が世界中から1500人以上のネット企業幹部らを集めて開催されたが、たまたまその直前にコンベンションセンターを見学した筆者ら一行は、世界中から多数のVIPを招くために、中国政府当局がいかに巨額の資金を投入して壮大な会議施設を建設しているかについて驚かされた。

毎年開催される世界インターネット大会の準備に当たる地元の桐郷市の関係当局者は「烏鎮を世界インターネット大会のダボス」にしたいと抱負を語っていたが、スイス東部にある保養地ダボスで毎年初めに開かれる「世界経済フォーラム」(WEF)年次総会の向こうを張って、烏鎮が世界のインターネット業界で知名度が上がっていくかどうか、今後を見守っていきたい。

蛇足ながら、烏鎮とダボスの共通点は、「伝統と文化のある小さな観光地で世界の最先端の問題を話し合う場を提供する」(桐郷市当局者)ということにあるそうだ。そのコンセプトは中国古来の重要な格言「温故知新」の現代版なのだろう。