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アジアの今昔・未来

第417回
「人は、アルバイトで大きくなる」の企業広告を見ての感想

2017-08-08. 伊藤 努
通勤で利用する首都圏の私鉄電車の開閉扉の強化ガラスに張ってあった「人は、アルバイトで大きくなる」というキャッチコピーの人材募集会社の広告が目に留まった。小さな広告の上段には、カタカナで「パーソナル・キャリア」という文字も添えられ、正社員ではないアルバイトであっても、きちんとした仕事に出会えば、立派な就業体験になり、将来にも生かせるというメッセージが込められていることが見る者に伝わってくる。アルバイト情報を刊行している会社が創立50周年を迎えたことを不特定多数の電車乗客に宣伝する、しゃれた企業広告だった。

この広告が目に留まってからしばらくの間、電車に揺られながら、自分の若かりしころのアルバイト体験を思い出していた。東京の大学なので自宅通学だったとはいえ、友人との付き合いや飲み会、趣味・本代など月ごとにかなりの出費があり、「活動費ねん出」と称してさまざまなアルバイトに手を出した。

学生時代のアルバイトは確かに、おカネを稼ぐのが主目的だったが、結果的に世の中や社会の仕組みなどを実体験を通じて知る良い経験となったのは間違いない。学校と自宅を往復するだけの毎日だったら、勉強に打ち込む時間も増え、いい成績が取れるかもしれないが、刺激のない退屈な日々ともなろう。いずれにせよ、広告のキャッチコピーにあるように「アルバイトで人間的に大きくなった」かどうかは、正直なところ本人には分からないが、アルバイトでの就業体験がその後の職業人生活にプラスとなったことだけは確かだ。

学生アルバイトの定番である家庭教師をはじめ、講演の文字起こし(筆耕)、大手の世論調査会社でのアンケート調査の聞き取り、高校の野球部先輩が経営する小さな鋳物工場での肉体労働……。家庭教師のアルバイト以外は、長い夏休みや春休みに集中的にこなす仕事を選ばざるを得なかったが、こうして見ると、講演の文字起こしやアンケート調査の戸別訪問といった仕事は、その後にたまたま歩むことになった報道の世界でも役立つ経験だったかもしれない。記者になると、専門家の講演会をのぞいてみたり、要人の記者会見を聞いてニュース記事に仕立て上げるのが基本的な仕事の一つであり、オールラウンドプレーヤーになるには専門外、担当以外の雑学を身に付けることも必要になってくる。

マーケティング調査などアンケートに答えてもらうための戸別訪問の仕事は、記者の取材活動に似ていなくもなく、知らず知らずのうちに初対面の人に会って質問することが面倒ではなくなったように思われる。この仕事ではあるとき、都内世田谷区の住宅街が担当地域になり、財政や税制の大御所的存在だった慶応大学のK教授宅を訪ね、アンケートに親切に答えてもらったのもいい思い出だ。アンケートの戸別訪問では、時間がないといった理由で門前払いされることも多々あり、そうした中で親切に対応してもらえるとたまらなくうれしくなったものだ。K教授の奥さまからはミカンまで頂戴してしまった。

現在、報道機関の末端に身を置き、勤務する会社のある部署では世論調査のために無作為に抽出した人に向けて電話で聞き取り調査を行っている。世論調査は、選挙情勢の把握など社会のさまざまな動向を正確に分析する上で重要な情報収集の手段の一つだが、自分がたまたま質問を受ける立場になったときは、誠心誠意の回答をしたいものだ。