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アジアの今昔・未来

第415回
宅急便の激増の背景にネット通販―「街の風景に見る店舗の盛衰」(その4)

2017-07-25. 伊藤 努
筆者がまだ中学・高校生だった1960年代後半(昭和40年代前半)、車体に目新しい宣伝用のロゴマーク付きの業務用自動車を街で時折、見掛けるようになった。親猫が子猫を口でくわえて運ぶほほえましい様子を描いたあの有名な図柄のロゴである。あれからほぼ半世紀…。さまざまな商品を自宅に配送する宅配便事業は、物流産業が発展している日本でも成長著しい巨大業界になった。今では、猫の親子のロゴで有名なこのガリバー企業にとどまらず、ペリカンやカンガルーなどのロゴマークでお馴染みの多くの宅配事業者の業務車両が街を走り回っており、配達中の作業車を見掛けない日はないというのが多くの人の実感でもあろう。

日本では昔から、官営の郵便局による小包の配達事業は大手の運送会社を含めて個人向けにも行われてきたが、商品を消費者の元に直接届ける民間の宅配システムが定着したのは、個人向け配送会社が相次いで参入して以降のことだ。もちろんこの間も、日本社会の長い習慣である盆暮れのお中元・お歳暮のシーズンには、日ごろ世話になっている方々へのお礼と感謝の気持ちを込めて、デパートや百貨店から大量の商品が消費者の元に贈答品として配達される仕組みはあったが、これも、商品を売るデパートや百貨店の買い物客向けサービスの延長に位置づけられるものだった。

宅配事業の急成長はやはり、消費者ベースで商品や品物の配送を本人を含む希望の送り先に安く、確実に届けるニーズが増大したことが背景にある。昔の小包による配達全盛の時代には、日本全国で扱う件数も今に比べて桁違いに少なく、郵便局など一部の配送事業者で十分対応できたが、近年の宅配事業者が年間扱う件数は約100億個という驚異的な数に上る。大手を含む多くの民間宅配事業者がいない限り、膨大なニーズに対応するのは不可能だ。日本の国民の数で単純計算すると、雑誌や書類を含め一人当たり年間で90回も宅配サービスの世話になっていることになる。

物流産業はわが国が世界の最先端を走る産業の一つだが、その中の一業界である宅配事業が今のように広く普及するためには、全国の主要都市を中心に日本各地を結ぶ道路交通網の実現のみならず、利用者が使いやすい料金設定や迅速・確実な配達を可能にする宅配業者のネットワーク整備が不可欠だ。

前者の全国幹線道路網の整備は高速道路を含め政府など「官」の仕事だが、そうした道路交通インフラの整備をにらんで、宅配事業を含む物流産業の発展をリードしてきたのは大手運送会社をはじめとする「民」の力だったのではないか。事業の草創期には、重たいゴルフ道具の配送サービス「ゴルフ宅急便」や生鮮食料用の「クール宅急便」など便利なサービスが次々に登場。近年、宅配事業が急成長している背景には、テレビ・ショッピングなどを使った通信販売やインターネットを利用したネット通販の急拡大がある。要は、買い物は日常品の購入以外は店に行かずに、通販で済ますという消費スタイルの革命的変化が急速に進んでいるのだ。

しかし、利用者に便利な宅配事業を支えてきた会社のドライバーが最近、取り扱い荷物が増えたため、勤務時間内に配達することができず、サービス残業に伴う長時間労働が深刻な社会問題となっている。留守宅への配達などで何度も訪問しなければならないための過重労働を少しでも軽減しようと、最近は自宅近くのコンビニ店での品物の受け渡しといった新手サービスも登場しているが、便利さの裏に潜む労働者の過酷な職場環境の改善は社会全体で取り組まなければならない課題だろう。