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ベトナム 生活図譜

第6回 ローカル化する教会建築
2017-08-15. 竹森紘臣
前回紹介した二つの大教会は様式、材料ともにフランスから輸入されて建てられたものである。フランス統治の最初期にハノイ、ホーチミンという中心都市にそのシンボルとして建てられた。これらの大聖堂ができる以前にもキリスト教が伝播した16世紀のおわりごろから現在に至るまで、ベトナム各地にたくさんの教会が建設されている。ベトナムの教会建築は統治時代の前後に掛けて、ベトナムの建築様式や現地の地理条件に合わせて、そのかたちを変えていった。フランス統治時代とベトナム戦争後から現在に至るまでの時代は、ベトナムで数多くの教会建築が建てられた時代といわれている。現在建設されている教会は擬西洋的な建物をレンガとコンクリートで造形してつくられただけのものがおおいが、フランス統治時代にはいくつかの個性的な教会がベトナム各地で建てられた。

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北門教会(ハノイ、ベトナム)
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ファッジエム大聖堂(ニンビン、ベトナム) 鐘楼
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ファッジエム大聖堂(ニンビン、ベトナム) 本堂
旧ハノイ城砦のそばに北門教会がある。教会が面するファン・ディン・フン通りからは、ゴシック建築の特徴である大きなバラ窓をもつ本堂と高くそびえる鐘楼が目をひく。(写真1)設計者はエネルスト・エブラールというフランス人建築家である。彼は1924年に来越し、フランスの建築様式とベトナムの建築様式への深い考察と実践をとおしてインドシナ様式とよばれる建築スタイルを確立した。北門教会もこのインドシナ様式のひとつであり、そのデザインはハノイにある他の教会とは少し異なる趣きをもつ。

教会の平面は西側を正面とする一般的なラテン十字型であるが、中央交差部の屋根にはベトナムの伝統的な瓦を用いた八角屋根が掛けられている。また鐘楼、側廊、袖廊、チャペルに掛かる屋根にも、何層か重ねたベトナム瓦葺屋根が複雑に掛けられている。鐘楼だけ独立して建てられている配置計画も珍しい。本堂の内部は身廊はヴォールト天井、中央交差部はドーム天井になっており、当時の西洋的な教会のデザインに近い。北門教会は1931年ごろに竣工したが、そのときにはエブラールはすでにフランスに帰国しており、完成した姿を見ることはなかった。

ハノイから車で2時間ほど南下したキムソン教区は布教初期から活動が行われた地域で今でもキリスト教信者が多い。この教区には大小10ほどの教会が建てられている。その中でもファッジエム大聖堂は東洋的な教会建築として有名だ。

この大聖堂はチャン・ロックというベトナム人の神父によって設計され、施工もベトナム人によって行われた。工事は1875年にはじまり1899年に完了したといわれている。

南北に細長い敷地には南側から池、鐘楼、本堂が順に配置され、本堂の裏にあたる敷地の北端には奇岩によって山が築かれており、風水の影響が見られる。現代のベトナム人のキリスト教徒も住宅を建てるときに風水を考慮することがおおい。ベトナム人のキリスト教徒の宗教観が垣間見えて興味深い。

鐘楼と本堂のファサードは石で作られており、造形はベトナムの伝統寺院のものである。そこにキリスト教の聖人の彫刻や十字架が配されており、そのギャップが特徴的である。(写真2)その石のそのファサードは、仏教寺院の伽藍を90度回転させたような建物の短辺部分に取り付けられている。既存の建築様式を利用した見事な発想の転回だ。ファサードの石造りの部分以外は木造軸組工法で外部の柱の間にはガラス窓が嵌められており(写真3)、そこから太陽の光がさんさんと降り注ぎ内部はとても明るい。当時の現地の技術を駆使して、豊かな教会建築がつくられている。

このほかにも高原都市のダラットやビーチリゾートのニャチャンなどにも同時期につくられた個性的な教会建築が残っている。ベトナムに観光にくることがあれば、街々の教会をぜひ楽しんでいただきたい。
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ファッジエム大聖堂