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ベトナム 生活図譜

第11回 王城都市・フエ
2018-01-16. 竹森紘臣
前回はハノイとホーチミン市の城についてお話した。その記事中にも書いたが800年間にわたり歴代皇帝がハノイに城を据えていたが、その後のグエン王朝が首都と定めたのがベトナム中部の街・フエであった。フエには現在でも当時の城や王宮が残されており、現在では国内外からおおくの観光客が訪れている。

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フエ城 午門(フエ、ベトナム)
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紫禁城跡(フエ、ベトナム)
フエは古くはチャンパ族の土地であったといわれている。現在のベトナム北部にあたる北属期(ベトナムが中国の諸王朝に服属していた時期)の支配地域と南部にあたるチャンパ族の支配地域の国境付近にあたり、南北両者の間で何度も主権が入れ替わっていた。15世紀ごろに北部の都市として確立されたのち、少しずつ場所を移動しながら17世紀ごろには現在のフエ城の位置に都城が築かれた。北属期であったため、風水など中国の影響が強い都城で、現在のものより規模は小さかった。市内を流れる香河の水運を活用し、商業的にも発達し大都会となったフエだが、当時はまだ行政的には兵士などを駐在させる鎮守府のひとつに過ぎない。

現在に残る王宮や都城を建設するのが、前回の記事で紹介したホーチミン市に城を築いたグエン・フック・アイン、のちのグエン朝始皇帝・ザーロン帝である。フエは西山党の乱(1771-1802)の際に一度は西山党によって占領されてしまうが、グエン・フック・アインにより奪還される。その後、ザーロン帝を名乗り、フエを首都として越南(ベトナム)国王に即位するのである。はじめてベトナムという国号がここに誕生する。現在のベトナムの国土がほぼ確定するのもこのころである。越南という国号は中国の清国皇帝からあたえられたもので、「中国のはるか南にある国」といった意味である。しかし、ザーロン帝はみずからの国が世界の中心である、中華であるという考えが非常に強かったといわれている。また西山党の乱の戦いではフランス人の支援を多く受けていた。そのため中国の伝統、フランスの新しい知識や技術が、グエン朝の新しい政治体制だけでなく、新しいフエ都城や王宮の造営に大きく影響した。

地理的な計画は中国の伝統的な都市計画を踏襲している。モデルは北京の紫禁城である。当時の王宮の北を流れていた香河の支流を埋め立て、500haほどの方形の土地に、高さ6.6m、厚さ21mの城壁をもつ都城を築いた。城壁はフランスの影響を受けてホーチミン市で建設したザーロン城と同様のヴォーバン式要塞とした。ヴォーバン式要塞とは城壁の外側に砲台を据える角状に突き出た稜堡を備えたものである。星型要塞といわれ、日本でいうと五稜郭がそれにあたり確かに上から見たかたちが星型にみえるが、フエ都城の場合は周長約10kmの城壁の外側に24の稜堡が取り囲んでいて、星型というよりは方形にたくさんの突起物が鋸の歯のように付いているというふうにみえる。

王宮は都城の南辺中央に位置し、東西約650m、南北約550mで高さ6mのレンガ城壁に囲まれている。ザーロン帝にはじまり、13代のバオダイ帝までの約150年間、歴代の皇帝がこの王宮に居を構えた。王宮の東西南北にはそれぞれひとつずつ門があり、南の午門は皇帝専用であった。(写真1)この門では観閲式などが行われ、最後の皇帝・バオダイ帝が退位の宣言をしたのもこの台上であった。この門をくぐると政治の中心である太和殿がある。太和殿は計80本の朱塗りの柱で支えられており、その柱や屋根の棟飾りなど至るところに皇帝の象徴である龍の彫刻が施されている。そこに玉座が据えられ、さまざまな宮廷儀式が行われた。太和殿を抜けると高さ4mほどの壁のむこうに、皇帝の居住区である紫禁城があったが、現在はその姿は失われている。(写真2)

王朝全盛期には王宮内にひしめくように建物が建っていたといわれるが、現在ではその半分も残っていない。フランス統治時代に力を失った王朝が財政的に管理が困難になった建物を取り壊していった。そして第二次世界大戦後にグエン王朝が終焉を迎えたあと、ベトナム戦争の戦禍によりさらに半分以上の建物が失われた。おおくの建物が残っていないのは残念であるが、遺跡のような宮殿跡もベトナムの歴史を語りかけるようで味わい深い。ぜひ現地に足を運んでいただきたい。
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フエ城(フエ、ベトナム)