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アジアの一期一会

第29回 レバノンでミサイル攻撃された高速道路を走る
2018-12-01. 小牟田 哲彦
 レバノンには鉄道がなく(かつてはあったが今は廃線跡が残るのみ)、庶民の長距離移動の主役は乗合バスや乗合タクシーである。主要都市間、及び隣国のシリアとを結ぶ幹線道路はよく整備されていて、シリア内戦前は国際幹線道路として行き交う車両が多く、人の流れも活発だった。

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イスラエルの空爆で破壊されたベイルート〜ダマスカス間高速道路
 ベイルートからダマスカスへ向かう高速道路は首都を離れても整備が行き届いていて、快適なドライブが楽しめる。ところが、2007年冬にこの道を走ったとき、その快適なハイウェーが途中で大きく迂回している箇所に遭遇した。高速道路の一部区間を工事のために徐行することはよくあるケースだが、その場所は道路の工事というより、深い谷に架橋されたコンクリート橋の中央部分がきれいになくなっていて、その橋の手前で谷底を経由する未舗装の迂回路が仮設されていた。

 快調に走っていた高速道路から一転して、ガタガタ揺れる未舗装道路から、そのコンクリート橋の真横を眺めた。橋の中央で橋脚の1間隔だけがぽっかりと抜け落ちているような状態で、新規の建設ならともかく、改修工事でこういうやり方をするのだろうか、と不思議に思って見ていた。

 すると、乗合タクシーに同乗していた地元のアラブ人が、「イスラエルのミサイルがやったのだ」と、私を含む他の同乗者にも聞こえるようにつぶやいた。他の地元同乗者も無言で頷いている。この前年(2006年)の夏、レバノン国内の武装組織ヒズボラが南部国境を侵犯してイスラエルを攻撃したことから、イスラエルがレバノン国内への空爆や地上攻撃を展開。レバノン国内の公共施設が相次いで空爆で破壊された。ここもその1ヵ所だという。重要幹線道路にある高架橋が工事している現場を見て、単なる耐久性強化とか経年による架け替えなどの発想しかしなかった私は、典型的な平和ボケ日本人だと言わざるを得ない。

 それにしても、「高架橋がミサイル攻撃された」と聞けば、もっと派手に破壊された様子を想像してしまうが、いくら目立つとはいえ、こんなに細長い橋の中央部分だけをピンポイントで狙って、遙か南方のイスラエル領土内から命中させられるものなのか、と思う。あるいは、被弾直後はもっと派手に壊されていたけど1年半かけて頑張ってここまで直したからそう見えるだけなのか。

 生まれて初めて見るミサイル被弾施設のインパクトとともに、私にとってもう一つ印象的だったのは、その光景を眺める同乗のアラブ人たちの傍観、というか諦観ぶりである。レバノン各地で似たような空爆があったので、似たような光景は慣れっこになってしまっているのかもしれないが、「あーあ、ここもか」という感じで、みんな無表情なのだ。破壊された施設の姿には関心を払わず、ただこのガタガタの未舗装道路は早く通過してほしい、といった面持ちの客もいる。日本で隣の国からミサイルが飛んできて自国の高速道路を破壊されたら、その場面に日本人はどういう態度で接するだろうか。