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アジアの一期一会

第25回 簡体字があふれる日本最南端の無人駅
2018-08-01. 小牟田 哲彦
 今や日本の主要観光地のどこへ行っても、中国人の観光客の存在は珍しいことではない。都市部の鉄道駅では多くの案内表示が日英中韓の4ヵ国語で表示されているし、大型百貨店や電気店には中国語の安売り表示が氾濫している。中国人に対する日本の観光ビザ発給は、2000年にまず団体旅行について解禁され、2009年以降は個人旅行も認められるようになっているが、観光地で目につく中国人観光客の大半は団体旅行客だ。

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西大山駅の無人ホームに立つ日英中韓4ヵ国語の注意表示
 そうした観光客向けの中国語表示が、伝統的な主要観光地から日本人もよく知らないようなマイナー観光地へと拡大していて、長年にわたり観光客が寄り付かない地方ローカル線に乗ってきた私などは、往年の閑散ぶりとの違いに驚かされる経験をすることが近年増えている。

 九州最南端を走るJR指宿枕崎線には、国鉄時代から日本最南端の駅として知られる西大山という駅がある。「知られる」と言っても、実際に知っているのは鉄道関係者と鉄道ファンくらいで、旅行ガイドブックで紹介されているわけでもないし、そもそも2〜3時間に1本しか列車が来ない片面ホームの無人駅なので、鉄道ファンでなければわざわざ訪れる人はほとんどいなかった。私が初めて同線に乗ったのは平成6(1994)年の夏だったが、当時の西大山駅はホームに日本最南端駅を示す標柱が建っているだけで、周囲は静かな田畑ばかりで自分以外に人影を全く見なかった。

 ところが、今ではこの無人ホームの目の前に観光客向けの土産店や観光案内所がオープンし、団体旅行の観光バスがひっきりなしに乗り付ける観光名所となっている。それも、訪れる旅行者は中国人旅行者が圧倒的に多い。公衆トイレの使い方が日英2ヵ国語と並んで中国語の簡体字で記されているのは、これを読んでほしい旅行者の多数が大陸からの中国人であることの表れである。地元の人の話では、西大山駅が中国や東南アジアからの旅行者向けサイトで九州観光の聖地のように紹介されているらしく、みんなその情報をもとにやって来るらしい。1人で列車に乗ってホームに降り立つ私のような日本人旅行者の方が少数派で、鹿児島県なのに中国の観光地に来ているような錯覚に陥る。

 ただし、ここに来る中国人旅行者は概ねお行儀が良い。ゴミはゴミ箱にきちんと捨てるし、タバコの吸い殻や果物の食べかすをそのへんの路上へ投棄することもしない。日本人の私には英語と笑顔で話しかけてくる。彼らが、日本人はマニアックな鉄道名所くらいにしか認識していなかったこの小さな日本最南端駅を、アジア各地から観光客が押し寄せる国際観光名所(?)に格上げしてくれたのだから、私としては大いに感謝している。これではJR九州も、赤字ローカル線とはいえそう簡単には廃止できまい。

 もっとも、彼らの大半は本数が限られているローカル線列車ではなく自動車に乗ってやって来るので、今のところ、列車は昔のようにたいてい空いている。そのうち、ローカル列車の車内掲示にまで簡体字を併記しなければならないような時代が、果たして来るのだろうか。