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アジアの一期一会

第27回 日本国外にある中央アジア各国の大使館でビザを取る
2018-10-01. 小牟田 哲彦
 日本に大使館がない国を旅行する場合、その国が日本人観光客の入国にビザの事前取得を義務づけていると、旅行のハードルが一気に上がる。日本国外の第三国にある当該国の大使館を訪れて、個人でビザ取得の手続きをする必要がある。そのような事情がアジアの中で比較的最近まであったのが、旧ソ連から独立した中央アジアの国々である。

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北京のカザフスタン大使館(1996年撮影)
 1990年代後半に中国からシルクロード経由で陸路カザフスタンへ入国しようとしたとき、日本にカザフスタン大使館がなかったため、私は北京の同国大使館へ行った。当時は現地機関からの招待状がなければビザ申請すらできず、インターネットが普及していない当時はそんな現地機関を自力で探すだけでも大変だったが、このときの私は、日本出発前に何とか探し当てた現地旅行会社からFAXで送ってもらった招待状を持っていた。

 在北京大使館の領事部へ行くと、個室に通されていきなり領事の面接を受けることになった。私が持参した招待状を領事に見せると、それをじっと読んだ彼は「この招待状には『東京かモスクワの大使館でビザ申請すべし』と書いてあるから、ここでは出せない」と重々しく私に告げた。「いや、東京には貴国の大使館がない。だからここへ来た」「じゃあ、モスクワへ行きなさい」「貴国はモスクワと東京の中間にあるので、貴国へ行くのにモスクワは東京から遠すぎる」……というような面接、というか交渉を自分なりに懸命にしてみた結果、領事から「では、この招待状を本国へ照会するので、1ヵ月後にまたここへ来れば発給する」との口頭での回答を得た。私としてはそれを信じるしかないので、礼を言って辞去した。「1ヵ月後」とは気の長い話で、大学生だったから受け入れられた条件ではある。

 その後、中国各地を旅して、ちょうど1ヵ月後にまた北京の同大使館へ行った。ところが、領事部が開館時刻を過ぎても開かない。前に並んでいた中国人が門前で大声で怒鳴っていると、建物の中から、やや酒の臭いがする赤ら顔の大使館員が出てきて、「今日は大使館は休みだから、来週に再訪せよ」とたどたどしい英語で話した。あとで知ったが、この日は同国の祝日だったらしい。結局、それ以上はいくら時間に余裕がある大学生でも待てず、このときの私はカザフスタンに行けなかった。

 ビザ取得にここまで面倒な体験を強いられる(しかも取得できなかったし)ことは、さすがにだんだんなくなっていったが、21世紀に入った後も、タジキスタンへ行くために隣国のキルギスにある同国大使館で領事の面接を受けたことがある。このときは紳士然とした領事から入国目的や訪問予定地、旅行期間などを淡々と尋ねられただけで、1ヵ月有効の観光ビザを即時発給してくれた。ビザのシールが貼られたパスポートを受け取り、領事から「我が国の旅を楽しんできてください」と笑顔で言われたときは、約10年前の在北京カザフスタン大使館での経験を思い出して、あまりのお手軽さに拍子抜けさえした。

 それからさらに年月が経ち、今や日本人観光客はカザフスタン入国に際してビザの取得を免除されている。タジキスタンも東京に大使館が開設され、電子ビザの発給もしているから自宅のパソコンでビザ申請から取得まで完了できる。あの、言葉がどこまで通じるかわからない第三国での領事面接の緊張感を体験することは、アジアではもうほとんどないだろう。旅行しやすくなったことは喜ばしいが、昔話となった今では、他国の外交官と接する貴重な機会でもあったのかな、とも思う。