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アジアの一期一会

第37回 二重国籍の日本人旅行者から窺い知るアフガニスタン情勢
2019-08-01. 小牟田 哲彦
 観光目的なら入国査証(ビザ)の取得が免除される国が世界190ヵ国にも及ぶ日本のパスポートを持っていると、最近は、ビザの取得手続きを経験することも少なくなってきた。今も日本人入国者にビザを要求する国の中には、もともと日本人の入国自体を制限しているケースもある。治安上の問題があるアフガニスタンなどの入国ビザを取得するには、あらかじめ日本の在外公館で「レター」と呼ばれる身元保証書のような書類を作成してもらわなければならず、日本大使館がこのレターを出さないために入国できない、というわけである。


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日本人に見せてもらったアフガニスタン入国ビザ(画像を一部修正済み)。出身地は「Japan」だがその後の国籍は別の国名(黒塗り部分)
 では、そういう国がすべての外国人旅行者に門戸を閉ざしているのかというとさにあらず。たとえばアフガニスタンの場合、欧米諸国では日本のように全土を渡航制限の対象とせず、国内の地域ごとに危険の程度を区分して、比較的安定している地域への国民の渡航については寛容な態度をとっているケースが多い。首都のカブールや大仏で有名なバーミヤンなど、すでに欧米の旅行者が観光旅行を楽しんでいる地域もあるのだ。「アフガニスタンはどこもかしこも毎日危険で、無事に歩き回れるようなところではない」というイメージは、実は日本の外務省とそれを信じるメディアによって作られたという側面は、間違いなくある。

 そのアフガニスタンへ旅行するため、別の国のパスポートを使っているという日本人に、中央アジアのある国で出会ったことがある。西日本出身の彼は欧米某国の大使館で働いていて、その国のパスポートも持っていたのである。北京のアフガニスタン大使館で取得したアフガニスタン入国ビザを見せてくれたが、国籍は当然ながらその勤務する大使館の国になっていた。大使館に勤務している関係上、渡航先の国の治安情勢などはそれなりに事前にチェックしていたという。「よその国のパスポートを取ったことが日本政府にわかると日本のパスポートを取り上げられちゃうから、黙っている」とも言っていた。ちなみに、彼が国籍を取った国は二重国籍を認めている。

 アフガニスタンという国が治安上、日本に比べて問題が多い国であることは否定しない。だが、強盗や戦闘員が相手の国籍を瞬時に選ぶわけではないから、治安の良し悪しは訪問する外国人の国籍に関係ないのが通常だ(例外的に、アメリカやイスラエルを敵視する国だと、アメリカ国民やイスラエル国民のみ危険が高くなるケースはある)。にもかかわらず、日本人旅行者は日本政府の判断によって事実上入国できない国を、欧米のバックパッカーはそれなりに気をつけつつ旅することができる。そして、日本人でも国籍を変えたり他国の国籍をこっそり取れば(後者は日本の国内法上許容されないが、自分から公表しない限り知られることはない)、こうしてあっさりビザを取得できてしまうのが現実なのだ。

 日本人が訪問できないアフガニスタンの治安が、客観的に見て全土で同じように危険が高いと本当に断言できるのか。「福島の原発事故地域が危険だから日本全土が同じレベルで危険」という、日本に住んでいれば一笑に付すべき見方を、果たして他国について自分たちが決してしていないと言い切れるか。「他国の国籍を取ったら自分にとっての旅行上の治安情報が変化した」という彼の話は、旅行中に現地情勢などを把握する際の自分の考えや前提知識が片面的にならないよう自戒するきっかけになったことは確かである。