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アジアの一期一会

第42回 日韓を除くアジア各地に広がった北朝鮮レストラン
2020-01-01. 小牟田 哲彦
 「北朝鮮レストラン」という単語、さらに「北レス」というその略語が、日本のニュース記事などで注釈無しで用いられるようになったのはいつ頃からだろうか。北レス自体は、古くは1992年に北京でその存在が確認されており、1999年頃から本格的に中国全土へ広がっていき、やがて日本と韓国を除くアジア各国へ出店攻勢がかけられるに至った。

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カンボジア・シェムリアップの北朝鮮レストランで披露されたショータイム
 北朝鮮国内から派遣された女性従業員が給仕だけでなく歌謡ショーを演じる朝鮮料理店は、彼女たちの接客時の清楚な様子とショータイムの独特の盛り上がり感などが、日本人や韓国人の駐在員や旅行者に口コミやインターネットを介して知られるようになった。北レス側も、日本人客がいるときは日本語の歌を披露してくれることも。中には、AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」を見事な日本語と振り付きで披露する店まである。酔った韓国人男性客の要求に応じて、スタッフがテーブル上の皿から料理を箸で取って客の口元へ持っていって「アーン」と食べさせてあげる場面を目撃したこともある(彼女はやや嫌がっている様子だったが……)。

 楚々として料理を運ぶ女性スタッフの多くとは、中国では中国語、その他の国では英語である程度コミュニケーションできるので、「北朝鮮の人と実際に話をしてみたい。けど、北朝鮮へ実際に行くのはちょっと……」という人にとって、北レスは男女を問わず有意義な場所だ。接客という職務でもあるが、そこは程度の差こそあれ彼女たちも好奇心旺盛な若者のこと。自国以外の市民と公然と会話ができる機会だからなのか、政治に関わらない流行や趣味の分野で話題が共有できれば話は弾む。

 カンボジアの北レスでは、ショーの最中にカラオケタイムがあった。私にマイクを向けられたので北朝鮮の歌謡曲を歌ったら、レストランのスタッフ一同にたいそう喜ばれた。その後は、私たち(他の行きずりの旅行者数名と一緒だった)のテーブルを担当していたスタッフがこちらに積極的に話しかけてくれるようになり、長時間にわたって英語でいろんな話ができた。同席していた日本人女性ツーリストは、「北朝鮮の人と初めて会話した。カンボジアでこんな体験ができるとは思わなかった」と話していた。

 某地で営業している北レスのオーナーに、経営方針などについて詳しく話を聞いたことがある。そのオーナーは女性従業員は公募せず、北朝鮮国内のレストランで適任者を探しており、歌と容姿、品性、それに責任者の指示をよく聞く姿勢を重視。語学力は片言程度の英語か中国語ができることを最低条件としており、選抜倍率は10倍から20倍程度、とのことだった。北レスは外貨稼ぎが目的とはよく言われるが、実際に運営する立場に立つと、本国と現地との意思疎通が常に万全にできる環境ではないこともあってか、それなりに苦労も多いように見受けられた。

 そんな北レスは、実は国連制裁の対象になっている。2017年11月末のミサイル発射に対する国連安保理決議で、国外で就労する北朝鮮の労働者は2019年12月までに本国へ送還されるべきとされた。女性従業員のショータイムや彼女たちとのコミュニケーションがなければ、北レスはただの割高な朝鮮料理店でしかない。2000年代初頭に一世を風靡(?)した北レスは2020年1月以降、果たしてどうなっていくのだろうか。