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アジアの一期一会

第22回 西アフリカで役立った中国語と中国史の知識
2018-05-01. 小牟田 哲彦
 世界には、英語を第一外国語としない国が少なからずある。代表的なのはアフリカの旧フランス植民地諸国で、第一外国語はフランス語。これらの国々を英語だけで旅しようとするのは、日本をフランス語だけで旅行しようとするに等しく、最低限のフランス語は旅行者にとって必修科目となる。とはいえ、緊急事態になると付け焼き刃のフランス語など何の役にも立たないのだが、そんなときに、思いもかけず中国語が役に立った経験がある。

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日本人には見慣れない航空会社の機材ばかりが発着するカメルーン・ドゥアラ国際空港
 カメルーン最大の都市・ドゥアラから、アフリカ西部海岸に面するベナンの港湾都市・コトヌーへ向かうため空港で待機していたときのこと。すでに出国手続きを終えて搭乗ゲート内に座っていたが、いつになっても搭乗する飛行機が姿を見せない。カメルーンは西部アフリカでは珍しく英語とフランス語の両方が公用語なのだが、国際空港のちょっとしたアナウンスがフランス語だけで済まされることが多く、事態がよく呑み込めないままでいた。

 そのとき、近くの席に、Tシャツ姿の中国人男性が1人で座っていた。私と目が合ったので、私から片言の中国語で「次の便でコトヌーへ行くのですか?」と尋ねると「そうだ」と答えた。私は学生時代に第2外国語で中国語を選択していたから、ちんぷんかんぷんのフランス語よりは中国語の方がまだ何とかわかる。いざとなれば漢字を書けば筆談もできる。フランス語以外で意思疎通ができそうな同乗者がいることを知って少し安心した私は、彼が南京の出身で、仕事でこちらの国々を回っているらしいことまでを聞きとれた。が、私が日本人であると知るや、彼の態度が急にそっけなくなった。日本人にいい印象を抱いていないらしいことは明らかだった。

 ところが、彼が荷物につけていたキーホルダーが井崗山のものだったのを見て、「井崗山は毛沢東が長征で根拠地にしたところでしょう」とこちらから一方的に話しかけたら、私を見て少し驚いたような顔をした。「そんなこと、よく知っているな」「近代中国の歴史で井崗山は有名ですからね」などと、私が知り得る中国の近現代史の断片的な知識を懸命に引っ張り出して話を続けるうちに、彼は、アフリカの地で出会った、拙い中国語で自分の国の革命史を語る不思議な日本人旅行者(私のこと)に興味を持ったらしい。その後は、搭乗ゲート変更や遅延状況などが放送されるたびに私に状況を説明してくれたり、「自分と一緒に来なさい」と言って変更後の搭乗ゲートに案内してくれたり、土産物の紹介をしてくれたり、コトヌーでの自分の仕事や同僚の話をしてくれたりした。

 空港内のフランス語放送だけでは予定便に乗り損ねたかもしれない私は、彼のおかげで無事に目的の便に搭乗することができ、その日のうちにコトヌーに到着した。別れ際に自分の携帯電話の番号や住所を教えてくれて、「何か困ったことがあれば電話してきなさい」とまで言ってくれた。社交辞令であったかもしれないが、当初のつれない態度と比べれば大きな違いである。大学で必修科目として学んだ第2外国語としての中国語と、子供の頃に読んだ「漫画 中国の歴史」がきっかけで興味を抱いた近代中国史の基礎知識が、大学を出てから10年も後になって、はるか遠い西アフリカ旅行で役に立つこともあるのだ。同時に、中国人の世界規模での活動範囲の広さを実感したささやかな実体験でもある。