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思考する言葉_現代中国領口語辞典
腐敗了!
2014-03-31
突然、後ろから聞こえた「太腐敗了!」という大きな声に一瞬固まり、振り返るとそこにはそれなりにおしゃれしてるんだけどどこか北京の人ではないなという感じの30代女性が仁王立ちしていた。さっき、コーヒーを買ったわたしの横からカウンターの店員に「アイスクリームある?」と尋ねていたので、どこかの地方都市から遊びに来て、ちょっと休もうとこのスターバックス風のカフェに入ってきたのかな?

彼女はわたしと職員の驚いたような視線には全く気づかず、カウンターの向こう、店員の頭上に掲げられたメニューを見つめていた。うん、確かにコーヒー1杯30元(約500円)以上という価格帯は、北京でも一般の物価からいえば安いとは言えないのは事実だ。30元あれば麺1杯どころか2杯食べられる。だが、最近の北京ではみんなそれを気にしない。というか、気にする人はこうしたカフェに入らない。だから、そこで朗々と上がった「腐敗了!」の言葉に、わたしも店員も凍ってしまったのである。

「腐敗了!」、彼女は「高い!」と言ったのだった。決して悪気がないのはわかっていたのだが。

こんなふうにネットを中心に高級消費を「腐敗」と形容し始めたのは、2012年に習近平が中国共産党総書記になって公務員の公費による消費を引き締める通知を出したことに由来する。「三公消費」と呼ばれる、公費による飲食、公費による贈答品、そして公用車の乱用がやり玉に挙がり、次々とその通知を無視、違反した公務員が処分され、恐れをなした公務機関の消費があっという間にしぼんでいった。お陰で倒産するレストランまで出ている。

習が発した通知は民間企業に向けられたものではなかったが、これまで公的機関との付き合いで高額の接待費を使ってきた企業もそれらを賄賂とみなされることを恐れて出費を控えるようになった。その結果、年間30%の伸びを続けてきた高級消費品市場は2012年にはわずか8%の伸びとなり、年末年始の宴会や贈答品の定番だった「茅台」などの高級酒の売れ行きは激減。意外なことに漢方薬の老舗「同仁堂」も贈答品控えで売上を落とし、株価に大きく影響しているという。また、ルイ・ヴィトンなどの世界的な高級ブランドを傘下に持つモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトングループもその売上50%を占めるルイ・ヴィトンの中国市場での不振で、ウハウハ続きだった中国での新しい営業戦略を模索し始めたと伝えられている。

この「三公ぜいたく消費禁止」はその影響を直接受けた企業に勤めている人たちはさておき、庶民の間では好意的に受け入れられている。同時に各地で多くの汚職官吏摘発がここ1年以上続いていることも、習近平政権の汚職やぜいたく消費禁止が一時的なものではないらしいという信頼につながった。その安心感からか、庶民の中で「今日はちょっとぜいたくしちゃった。太腐敗了!」などという言い方が流行りだしたのだった。

とはいえ、本当の「腐敗」は収まったわけではない。最近驚いたのは、わずか22歳の中国女性が香港で100億香港ドル(約1300億円)をマネーロンダリングしようとして起訴され、一旦保釈されたものの、裁判を前に行方をくらましたというニュースだった。女性が姿を消したお陰で保証人が支払った保釈金3000万香港ドル(約4億円)は没収されたそうで、いったいこの裏でいくらお金が動いているのか想像もつかない。

やっぱり中国の「闇」は深い。カフェの1杯30元なんてかわいい「腐敗」じゃないか。




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版画:丁未堂