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思考する言葉_現代中国領口語辞典
恐帰族
2014-02-28
今年の旧正月に新しい流行語が生まれた。それは「恐帰族」。実家に「帰る」のが「怖い」「族」、という意味だ。

中国で1年のうち最も重視される祝日が旧正月の春節である。農業が主要産業だった時代の春節はちょうど農閑期であり、また1年で最も華やかしい時なのでこの時に合わせて若者が結婚式を上げる、という伝統もあった。そんな農村では、女性なら23歳を越えれば「売れ残り」、男性も30になるまでに世帯を持つのは当然。つまり、田舎で待っている両親や親戚が「結婚しろ」「子供はまだか」と急かす、だから故郷に帰りたくないという人たちが今年とりわけ話題になった。さらに2013年11月には、夫婦のうち一人が一人っ子なら二人目の子供を生むことができるようになったため、「二人目はまだか」という催促も新たに加わったらしい。

今こうやって急かされるのは、ちょうど1980年代生まれのまさに一人っ子政策第一世代たちである。だが、中国が豊かになるのと同時に社会に出てきた彼らはまさに今「自由な生活エンジョイ期」にあり、また一人っ子で育った人が多いために干渉されることが一番苦手。つまり、中国で最も干渉を嫌う世代が今、周囲にあれやこれやと督促される立場になってしまったというわけだ。

香港紙『サウスチャイナ・モーニングポスト』によると、こうした80年代生まれの男女
を対象にしたアンケートで、両親の「結婚催促」に対して男性55.9%、女性65.9%が日頃は「逃げ」の態勢で応じていると回答。しかし、春節で里帰りすれば、この時しかチャンスのない両親の徹底攻撃に昼も夜もさらされる。さらには子供の帰郷に合わせて親が勝手に組んだスケジュールで1週間のうちに5回もお見合いさせられて、「相手の顔も覚えていない」とほやく話もメディアで報道されていた。

オフィス勤めの人ばかりではない。中国の農村でもちょうど一人っ子世代の父親たちは「民工」と呼ばれる出稼ぎ労働者の第一世代にあたるが、祖父母や親戚に預けられて育った若者世代は出稼ぎに出た父の姿から「ここを離れればお金を儲けることができる」と学んで育った。その彼らが成人してお金と自由を求めて生まれ育った場所を後にし、田舎にない自由と豊かさを味わえることを知ってから、故郷に錦を飾ることが目的だった父親の世代と違ってどうにか都会で自分風の生活を見つけたいと願う民工第二世代も増えているという。

前掲の『サウスチャイナ・モーニングポスト』紙の報道によると、そんな1980年代の男女ともに、30〜35歳で未婚の同性は「晩婚」と見なし、さらに男性の80%は「女性は30歳を超えたら売れ残り」と考えるという結果も出ている。そして、「売れ残り」を指す「剰女(男)」という言葉に「ぞっとする」という人たちも確実にいる。

だが、一方で都会暮らしの自由さを満喫し、親たちや上の世代との価値観の違いを強烈に口にするのもこの世代だ。「剰女(男)」と自嘲気味に言いつつも、都会にはたくさん仲間がいる。都会は自由なのだ!だからこそ矢のような催促にさらされる田舎にはますます帰りたくない――実際に今年は実家で待つ親たちに「出張中だから」と嘘をつき、故郷に帰らずに都会で正月を過ごした女性もいたという。

「恐帰族」、自由に生きたい一人っ子世代と子供が一人っ子だからこそ力が入ってしまう親世代が生んだギャップ。そう簡単に顔を合わせられない家族も多いがその関係は日本よりも濃厚な中国で、じわじわとこの言葉が人の口に上り始めているのはこれが新しい世相が生みつつあるという予兆なのだろうか。


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版画:丁未堂