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思考する言葉_現代中国領口語辞典
「315」
2013-05-24
中国ではよく、日付を数字化して呼ぶ。よくよく振り返れば「五四運動」などともいうから、もう百年近く続く習慣なのか。いまだに「918」(柳条湖事件)とか「64」(天安門事件)とか「512」(四川大地震)と呼ばれる。そういえば、日本でも昔は「2・26事件」「5・15事件」があったし、最近でも東北大震災を「3・11」と呼ぶけれど、阪神・淡路大震災をその日付で呼ぶことはない。何が違うのだろう?

その中で「315」と言われて、ピンとくる日本人はほとんどいないのではないだろうか。

3月15日は「世界消費者権利保護デー」、ロンドンに本部を持つ国際消費者機構が1962年にアメリカのケネディ大統領が消費者の権利を謳った一般教書を発表した日を記念して1983年から提唱されている、れっきとした国際的な記念日である。

中国では1991年からこの日に、国営テレビ、中央電視台で「315晩会」なる特別番組を放送する。国際消費者機構の中国会員である消費者協会とともに、農業部や工業部、商務部などの消費流通商業関連を管轄する政府機関がその主催にずらりと名前を並べ、そこで消費者の権利を侵犯したとみなされた企業(ブランド)が暴かれ、叩かれる、という仕組みである。

「そりゃまぁ中国にはニセモノや粗悪品が多いからね」と思うのは早計だ。

今年の番組テーマは「消費者にもっと力を」だった。そこで取り上げられたのは、金の含有量に偽りがあるとされた香港貴金属ブランド(でも香港で見たことないブランド)、車体に腐食した鉄板が使われていた国内自動車ブランド、トランスミッターにクレームが集中するというフォルクスワーゲンの国内産モデル、無料電子メール利用者のメール内容を読み取って広告に利用していると指摘されたネットポータル「網易」…そして、「世界と中国で保証サービスが違う」と叩かれたのがiPhoneやiPadを生産するアップルだった。

アップルといえば「世界どこでも同じサービス」を謳っているが、中央電視台が制作した検証ビデオでは「中国国内では故障機を交換するといいながら、後部の蓋だけ元のものを使っており、これで『新品交換の場合はその日から1年間の無料保証』という中国の消費者保証条項を回避している」と指摘。各国から同テレビの特派員が「当地では全面交換。裏蓋だけ元のものということはありません!」と訴え、不公平感を強調した。

これにアップルユーザーたちが大反論。「アップル以外にどこのメーカーが全面交換に応じてくれるんだ?」「国内のどのメーカーよりもアップルのサービスはいい。世界共通だからだ。国内メーカーを叩かずになぜそんなアップルを叩く?」「庶民が叩いて欲しいのは、空気はPM2.5、河にはブタの死骸が浮かび、ミルクにはメラミンが混ざり、油は下水油という現実。なんでそれに触れずにアップルなんだ?」…

アップルはその直後に「世界共通のサービスを提供している」と短いメッセージを発したが、3月末には共産党中央委員会機関紙「人民日報」が「アップルは傲慢だ!」などと連日のように批判を掲載。4月初めになってとうとう、ティム・クックCEOが「消費者の皆さん」で始まり、「傲慢だというイメージを与えたかもしれないことを謝罪する」というメッセージを発表した。さらにそこで、中国で販売された製品に対しては今後、修理も交換と同等とみなして修理後も1年間の無料保証をつけるという新ポリシーを発表した。

アップルの謝罪はアップルユーザーには意外だったようだ。西洋メディアも「屈服した」と大きく書いた。だが、アップルの謝罪は「中国政府」でも「管理当局」でもなく、「消費者の皆さんへ」だったことは注目に値する。またそのメッセージは中国語だけで発表され、英語訳はなされていない。明らかにこれは中国市場限定の措置だということだ。

中国側は溜飲を下げたように見える。だが、政府が「他国の市場と違う!」と糾弾したアップルは、ここで中国市場を他の市場と切り離した。まるで「この国は特殊すぎるよね」と肩を竦めているクックCEOの姿が見えるようだ。

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版画:丁未堂