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思考する言葉_現代中国領口語辞典
限奶令
2013-04-11
中国で暮らす外国人の中には、皮のまま食べる果物や野菜を買わない、口に入る水分はすべて蒸留水、肉や魚は決まった店で買う…などの「ルール」を定めている人が多い。特に2008年9月に暴露されたメラミンミルク事件以降、乳製品は輸入品しか買わない、という人が増えた。

そんな中、今年3月1日より香港特別行政区政府は乳児用ミルクの香港からの持ち出し量を大人一人あたり2缶(1.8キロ)までとする法令を施行した。自由貿易港の香港のスーパーや薬屋には海外ブランドの粉ミルクが手軽に売られているが、昨年辺りからそれが住民である香港人にも手に入らないほど品薄になって乳幼児を抱える親たちから悲鳴が上がっており、それは明らかにこれに対する措置だった。

この条例の対象者になったのは主に中国と香港を往復する人たち。中国から陸路で香港に粉ミルクを買いに日参し、さらには店に並ぶすべての缶を買い上げてまた陸路で戻っていく。その中には実際に乳幼児を抱える親たちもいるが、ミルク缶売り切れが続くようになってからは、手持ち荷物扱いで中国側の税関でも税金を払わずに大量に中国へ持ち込んで売りさばく業者の存在が指摘されるようになった。

「粉ミルクごとき、なんだその了見の狭さは?」「香港は自由貿易港だろ? 足りなきゃ輸入量を増やせばいいじゃないか。こっちだって盗んでいるわけじゃないんだ!」と、中国国内からは激しい声が上がった。だが、その自由貿易港香港が輸入量増大措置を取らなかったわけではない。だが、問題はそれでも店からミルクが消えるほど足りなくなってしまったという点が深刻だった。

理由の一つは、輸入ブランドの生産基地であるカナダやニュージーランド、オランダでは乳製品のクォータ、つまり生産量制限が設けられていたこと。これは乳製品価格の下落防止、そして品質維持のための措置だとされる。今後この生産量制限は緩和される傾向にあるが、現状において世界中の粉ミルクを含む乳製品産量には限りがある。そのために自由貿易港香港でも湯水のように輸入できなかったのだ。

もう一つは、買い占め側が組織化したこと。一缶いくらの手数料で手分けして粉ミルクを買い集めさせる業者もおり、その手数料ほしさに毎日のように粉ミルクを探して香港中のスーパーや薬局を歩きまわる人たちが激増した。これらの業者は必ずしも大陸中国人ではなく、中国で販売する利ざやを狙った香港人業者も増えている。その証拠に、この通称「限奶令」施行当日に拘束された人10数人のうち、8人は香港人だった。

だが前述したとおり、中国国内ではメラミンミルク事件以降、被害児童の補償も十分ではなく、抗議活動を続けていた被害者の父親は拘束された(その後、病気治療の名目で釈放された)。また問題の発端となったブランドはお取り潰しになったものの、同様にメラミン混入が確認された「蒙牛」「伊犁」「光明」などの大手ブランドはその後何事もなかったように営業を続けている。中国お得意の当局主導の不透明な検査や監督事情にこうやって煙にまかれた、と感じている中国の人々は不安をつのらせ、そんな企業や官吏当局に抗議するより、無言の不買運動を展開していたのだ。もちろん、その彼らが頼りにしていたのが、香港を初めとする場所から集められる輸入ブランドミルクだった。

一方、香港の「限奶令」では「24時間以内16歳以上の大人一人あたり2缶」の猶予をもうけている。だが、中国の消費者たちの抱える不安は大きすぎ、それすらも「不当」「けち」に映っている。そこから引き起こされる、中台間の感情的なわだかまりはしばらく消えることはなさそうだ。


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版画:丁未堂