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思考する言葉_現代中国領口語辞典
敏感詞
2013-02-25
「ぼくの名前はね、中国の政治指導者の姓と同じだからネット検索ができないんだよ」と、ある中国人ジャーナリストが言った。そして横にいた友人を指さして、「彼女もね、姓が『王』だからダメ」。確かに彼が言うとおり、中国では最も「敏感」な時期には「王」という一般的な文字を含む言葉ですら検索できなくなることがある。

これを「敏感詞」と人は呼ぶ。日本語のニュースでは「センシティブワード」とか「禁句」とか「検索禁止用語」と翻訳されるが、中国語的に「『敏感』な事情を含む言葉だから探せない」というイメージで捉えるのが一番わかりやすい。

そこでは「この言葉は検索してはいけませんよ」などと教えてくれる人は誰もいない。もちろん、公式にまとめられた「敏感詞集」などという一覧があるわけではなく、何気なくインターネットで検索していて突然、「関連法律法規や政策の規定により、検索結果を表示することができません」という結果が現れる。そこで初めてユーザーは自分の行為が「当局の過敏な神経線に触れた」ことに気付くのだ。

当代はやりの中国産マイクロブログ「微博」で、突然台湾系のインスタントラーメンブランドの「康師傅」が検索できなくなることもある。あなたの求めるインスタントラーメンの評判は、実は政治VIPの一人「周永康」を指すネット隠語として使われた結果、当局の「敏感詞」指定となり、表示されなくなってしまったのである(これは当該企業もネット上でのプロモーションが制約されるわけで、エラく迷惑なわけだが、もちろん当局はそんなことは関知しない)。当然こんな時には「周永康」のご本名もとっくにすでに「敏感詞入り」している。

それにしても、当局の公開されない「敏感詞集」が熱心に更新されるお陰で正攻法では語れない言葉があることを発見したネットユーザーのおちゃらけ、あるいはダジャレ能力は格段に向上した。その能力と当局の敏感詞集はイタチごっこを繰り返している。

たとえば、江沢民元国家主席。彼一人だけで、「江賊」「賊民」「江賊民」「江流氓」「澤民」「択民」「哲民」「江折民」「江主席」「江猪」「江猪媳」「酱猪媳」「僵賊」「僵賊民」「江蛤蟆」「老江」「江core」などが「敏感詞」扱い。ほとんどが発音をひねったものだが、「江蛤蟆」の「蛤蟆」は「ガマガエル」という意味だ。政治的にセンシティブなときには「蛤蟆」すら検索不能になった。「江core」というのは政治的トップ時代の「核=core」を指したものだ。

思わずクスリと笑ってしまうのは、習近平現党書記を指す「習皇」や「儲君」(「皇太子」の意味。皇帝がいないはずの社会主義国ながら太子党の習近平を揶揄っている)とその夫人である有名な歌手、彭麗媛さんの「皇后娘娘」(「娘娘」王妃を呼ぶ言葉)、そしてこの夫婦の一人娘は「習公主」(プリンセス習)。

北朝鮮の故金正日は「金胖子」と呼ばれたし、昨年ものものしく行われた第18回党大会は「十八大/しーばーだー」を「斯巴達/すーばーだー」にひっかけた。元々の意味は古代ローマの強権都市国家「スパルタ」である。

ほかに昨年大きな話題の的になった薄煕来・元重慶市党書記も「不厚」(厚くない=「薄」)あるいは「西南王」(西南地域の重慶に君臨していた)、また重慶市も一時は都市名自体が「敏感詞リスト」に入っていたようで、代わりに「山城」(これは昔からの重慶の別名)あるいは「火鍋」(重慶火鍋は人気)と呼ばれた。前掲の「康師傅」も、その盟友と言われた薄煕来の事件のまっ最中に「敏感詞」扱いになった。

もちろん、こんな言葉を本人たちの前で使おうものなら、あっという間に不敬罪(反革命罪?)扱い。万が一、国家主席に会うチャンスが巡ってきたら、間違ってもしったかぶりしてこんな「敏感詞」を披露しないようにご注意願いたい。


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版画:丁未堂