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思考する言葉_現代中国領口語辞典
空談誤国
2013-01-28
ある中国駐在の日本人記者に聞いた話だが、江沢民が「三個代表」を口にし始めた頃、若い中国人に「三つの代表ってなんだか知ってる?」と尋ねたら、「もちろん! 毛沢東、小平、江沢民!」と即答されたそうだ。

…念のため、笑えなかったあなたのために挙げておく。この「代表」とは中国で議員、政治家を指す「代表」のことではなく、中国共産党が「先進的社会生産力の発展要求」「先進的文化の前進の方向性」「最も幅広い人民の根本的利益」の三つを代表する立場にあるべき、ということを言ったものだ。

10年前に胡錦濤と温家宝の「胡温体制」が誕生した時、人々は「和諧社会」(調和のとれた社会)というスローガンに熱狂した。1949年の建国後だけをとっても何度も政治闘争、社会混乱に見舞われた中国である。「和諧」という言葉の響きは人々に落ち着いた、心豊かな時代への期待を呼び起こした。

しかし、その「和諧」が努力に寄って達成されるべき目標ではなく、「和諧であるべき」という「基準」にすり替えられ、その結果社会に波風を起こすものは「和諧」に反したと判断され、次々と処分、処罰の対象になった。そうして、当局の判断によって民間の活動が制約されることを「被和諧」と動詞化したり、あるいは「河蟹」という言葉に置き換えて皮肉るようになったことはすでに、「『被』時代」(http://www.kazankai.org/china_jiten_list.html?no=32)や「河蟹」(http://www.kazankai.org/china_jiten_list.html?no=28)で触れたとおりだ。

そういえば、胡温体制初期には特に温家宝が農村、農民、農業が抱える「三農問題」の解決を声高に唱えて、90年代から始まった市場経済において社会的弱者となった農民たちを救う政策がもたらされると大きな話題を呼んだ。確かに温家宝は正式に権力を握るとすぐに農業税を廃止して農民の収入拡大を計ったものの、余剰労働力(失業)問題、都市出稼ぎ者の生活権利や賃金の問題、そして彼らを縛る戸籍の問題などはなんどか制度改革の対象として話題になったものの、大きな改善は行われないままだ。

そして、2012年。胡錦濤から中国共産党総書記、そして党軍事委員会主席を受け継いだ習近平が口にした「空談誤国、実幹邦興」(空談は国を危め、実行で国は栄える)が再び大きく取り上げられ、その真意の分析が始まっている。

この国をあやめるという「空談」はなにを指すのか。かつて外遊先のメキシコで「腹がいっぱいになった西洋諸国が中国のことにあれこれ口をはさむ」という衝撃的な言葉を発した習が、中国の制度や人権問題にあれこれうるさい西洋諸国に釘をさしたという説。

いや、これは前任の胡錦濤への皮肉で、「スローガンばっかりご立派だが、何も出来なかったじゃないか」と言っているのだ、という説。実際に総書記就任直後の内外記者向けの会見では、習近平はこれまでの共産党政府要人としては、耳を疑うくらい平易な言葉遣いであいさつした。そこでイデオロギーどころか、毛沢東、小平、江沢民、そして胡錦濤など「偉大な指導者」の名前すら触れなかった。

だが違う、あれは党内の改革急進派を「つばばかり飛ばすな。わたしはやれることからやる」と牽制したという声もある。さらには、このところ勢いを増していると言われる極左の毛沢東主義者に「理論ばかりじゃダメなんだよ」と睨みをきかしたのだ、とも。

この「空談」が何を指すかによって「実幹」の意味が初めて明らかになる。今年の3月、習近平が国家主席に就任し、実際に大権を握るまでの間、じわじわとその「意味」が解析されていくことになるだろう。そして1年後にはどんな「正解」が出ているのだろう。

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版画:丁未堂