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思考する言葉_現代中国領口語辞典
土豪
2013-12-26
「80後のオススメの店なら信用できます!」このコラムでいつもパンダの挿絵版画を作ってくださる丁未堂さんがこう言った途端、「その通り!」と我が意を得た。

「信用できる」と言っても、別に80後(http://www.kazankai.org/china_jiten_list.html?no=40 )以外の人たちが「人を騙す」という意味ではない。逆に、ある意味社会主義の理想を叩きこまれてそれほど大した邪念を許されずに育ってきた60後や70後には、価値観が多様化する社会を自由に泳ぎまくる80後に比べて真っ直ぐな人が多い。だが、真っ直ぐすぎて小回りがきかないというか、自分の価値観をがっちりと押し付けるタイプの人も多く、彼らの「好!(いいよ!)」という評価を真に受けると、価値観の違いに戸惑うこともよくある。

その点において、80後はいろいろなものをちょろちょろとつまみ、味わうことに長けている。さらに都会で暮らす80後には海外帰りだったり、出張も生活の一部になっている人の率が高く、異文化に慣れ親しんでいるし、価値観の違いというものも理解できる。中国で我々のようなガイジンが物事について述べるとき、素直にその自分と違う視点を受け入れて意見を交わせるのが80後だ。

そんな80後は、食べ物や笑いのセンスも60後や70後に比べてガイジンに近い。どこかこちらがガイジンであることを妙に意識する60後や70後に比べて、80後オススメのレストランやショップはヘンに肩が凝らなくて楽しめる。

21世紀に入ってからの中国の流行文化はそんな80後のセンスの表れといってもよいだろう。最初は「ジェネレーションX」などと70後たちに疎まれた彼らだが、ここ10年間のさまざまな社会の変化は80後と密接に結びついている。軽いスタンスの彼らがもたらした現象の一つが「自虐」だ。自分の価値観を一歩下がって眺めることができないこれまでの世代には「自虐」なぞ絶対に無理だった。

その結果生まれたのが、このコラムの初回にご紹介した「『被』時代」(http://www.kazankai.org/china_jiten_list.html?no=43 )だったり、「高富帅」(http://www.kazankai.org/china_jiten_list.html?no=4 )だったり。「高富帅」にはさらに女性版の「白富美」(色白でカネ持ちで美しい)という言葉も出現。これらの言葉で他人を形容して、「一方の俺たちは〜」と対照的な自分を語る。

そこにまた新しい流行語が出現した。「土豪」である。

「土豪」とは、中国の伝統的社会主義教育では地主や各地に利権を持つ、無産階級労働者の「敵」を意味し、「無産階級革命」(中華人民共和国の建国のこと)はこうした「土豪」たちを打倒することを目的としたものだった。しかし、このところそれがえらく持てはやされている。

そのきっかけは、今年秋に発売されたアップルの新iPhone 5Sに初めて出現した色「ゴールド」だ。誰からともなく、それを「土豪金」と呼び始めたのだ。「土豪金」ってそのまま「成金」的なイメージ。やっぱり現代中国人の目にもゴールドは禍々しく映るのか…

とはいえ、iPhone 5Sが発売されると日本と同じように中国でもあっという間に「土豪金」が完売。つまり、「土豪」はもうネガティブワードではなく、「敵」でも「社会悪」でもなくなったわけだ。そういえば、一足先に10年ほど前から「小資」(=小資本主義、いわゆるプチブル)は消費を楽しむ若者たちを指す言葉として普通に定着している。社会主義の敵だったはずの「プチブル」は今やオシャレなのである。

三中全会後、人々が期待した政治改革への習近平体制の歩みはそれほど顕著なものではなく、失望感が漂っている。そんな中、80後たちは「土豪」や「小資」をさらりと復権させてしまった。これから次第に社會の中堅どころになっていく80後たちが本当に社會の実権を握るようになった時こそ、中国は変わっていくのだろうか?

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版画:丁未堂