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思考する言葉_現代中国領口語辞典
到此一遊
2013-07-22
「なんだ、これは…」。先月初めのメーデー休暇にエジプトの観光地ルクソールから中国国産マイクロブログ「微博」に投稿された写真が大騒ぎになった。

そこには3600年前に建てられたという彼の地の宮殿の隅にしっかりと書きつけられた「到此一遊 丁錦昊」(遊びに来た記念に。丁錦昊)という漢字。「いままで漢字をここまで恥ずかしいと思ったことはない」とネットユーザーの一人はコメントした。我々は輸出してはならないものまで輸出してしまった…」「これこそ『歴史』に刻まれた恥辱だ!」「穴があったら入りたい」、そしてあまりの驚きに「信じられない。コンピュータで作ったいたずら写真じゃないのか」と真剣に推理する人までいた。

それは現実のものであることはすぐにわかった。「丁錦昊」という、それほどありふれたわけではない名前だったことが「幸い」して、ネットユーザーが「人肉検索」を呼びかけたところ、24時間以内に中国全土に7人の「丁錦昊」という人物が存在していることが明らかになった。さらにそこにエジプト旅行などの具体的な情報でふるいにかけると――犯人「丁錦昊」はなんと南京に住む15歳の中学生だったのである。

2012年末の統計では、同年海外に旅行に出かけた中国人はのべ8300万人を記録した。その人数は2001年の約8倍、また国籍別で見ると訪問先に落とすお金の額ではすでに中国人は世界一に踊り出た。今やどこの観光地も中国観光客を無視しては商売にならない。わたしの周囲にも1年に2回、3回と海外に出る人はここ4、5年でどっと増えた。社員旅行で海外に出る企業すらある。

くだんの中学生は数年前に両親と一緒に彼の地を訪れた。南京の地方紙に「自分たちの責任だ。申し訳ない」という両親の謝罪文が掲載され、「ちょっと目を離したすきに」神殿に落書きをしたことを認めている。だが、いくら未成年とはいえ、親と海外旅行できるような裕福な家の中学生が親が目を離したすきに、そこまで無知なふるまいをするというのも、今の中国の縮図かもしれない。

犯人が子供だとわかってから、「丁錦昊クンを責める人は自分を振り返ってみろ。自分だって落書きくらいしたことがあるだろう。それを棚に上げて…」という声も上がった。さらに、「国内の景勝地への落書きには何も言わず、それが海外だと大騒ぎをする。そっちの方がもっとみっともない」という批判も起こった。

皮肉なことにこの落書きが発覚する直前に、共産党中央委員会の機関紙「人民日報」が運営するニュースポータル「人民網」がアメリカ向けに開いたチャンネルで、「無徳無信的美国人」(道徳も信頼もないアメリカ人)というコラムを3ヶ月も前から連載していたことが明らかになり、批判されたばかりだった。タイトルからして中国的だが、中身はどこかの中国人がどこかで経験した、どこかのアメリカ人の無礼を事細かに中国語と英語で紹介するコラム。だが、「ある国の民間人をあげつらっていちいち攻撃する。その態度のどこに道徳や信用があるんだ!」という怒りの声は、わたしが思っていた以上に激しく、その後「無徳無信〜」のコラム名は削除された。

だが、「到此一遊」の出現で「皮肉なことに無徳無信とは我々のことだということが証明された」という嘆き声も上がっている。これは東洋の文化大国として切実な問題だろう。


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版画:丁未堂