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思考する言葉_現代中国領口語辞典
高富帅
2013-06-21
この連載も4年目に入った。変化の激しい中国で、時代の変化とともに価値観が変わり、かつて使われていた言葉が陳腐になっていくのを散々見聞きする中で、時代の変化を映す言葉について書き、今中国で何が起きているのかを考えるのもいいかもね――そういう思いで「思考することば」というタイトルをつけたのだった。

だが実際に振り返ってみると、ここ数年はもう「古い言葉が陳腐になっていく」というより、「古い言葉を口にする前に新しい言葉が生まれる」のが昨今の流れになった。古い言葉はあっという間に記憶の彼方に追いやられ、新しい社会フェーズの出現とともに新しい言葉が闊歩する。そして言葉の独り歩き先でまた新しいイメージが生まれる。そうやって独り歩きできなかった言葉は、またさっと忘れ去られていく…これまでにご紹介した言葉の中からも、すでに時代とともに忘れ去られつつあるものがいくつかある。

逆に新しく出現した言葉が短期間のうちにまったく違うイメージで語られるようになるという現象も起きている。今回ご紹介する「高富帅」などはそのものずばり、あっという間に使われ方が変わった。


「高富帅」とは、「高=高学歴」「富=金持ち」「帅=カッコイイ」を指す。1年ほど前に出現したときは明らかに「富二代」(「独二代」<「独二代」参照>)に続く、ネガティブな意味で使われていた。

例えば、「高学歴」とは今や年間500万人が大学に進むようになった中国で北京大学や清華大学など超有名大学卒業生を指すが、そこを鼻にかけた「ヤな奴ら」。「金持ち」には「どうせ、親が官吏とかで袖の下で儲けてんだろ?」という裏返しの意味があった。「帅」は「西洋風のおしゃれにうつつを抜かせるほど、ヒマで金持ちって胡散臭いよな」みたいな意味だった。

それが最近では、「高富帅攻略法」みたいな記事がメディアに堂々と出現、流布しているのである。「攻略法」と言っても、「高富帅」を見つけて洗いざらいその黒い背景を晒しだしてしまえ!ではない。「高富帅とデートするには」という、ハートマーク満開の記事なのだ。

そこにはまず、ニセ「高富帅」の見分け方として、「アルマーニの服を何着か持つのはそんなに難しいことじゃない」「そいつが付き合っている人間をよく見ろ。本物は同じような連中(つまり、富二代、紅二代)としか付き合わない」「デートの時に家族写真を見せてもらえ。親にそれっぽさがあるかどうかは大事な見分け方」などと書かれている。つまり、ニセモノと本物をきちんと見分けて付きあおうね――明らかに「親がどういう人間であろうとも関係ない。親のスネをかじりつつ、優雅に暮らせる男を手に入れろ」が合言葉なのだ。

このあたりになると、かつて日本でも使われた「三高」(<「三高」> )を思い出す。今や「狙うなら『高富帅』!」という若い女性たちが出現しているのだ。わたしも実際に知り合いの80年代生まれの女性(れっきとしたジャーナリスト)が、「高富帅と付き合うにはー」とチャットでつぶやいているのを見て驚いた。

それをきっかけに、ふともう一度調べてみて気がついた。「富二代」という言葉も以前は完全にネガティブワードだったが、好意的に使われる例が増えている。ここ5年間ほどのうちにかつて子供だった彼らの多くが社会に出て「発言権」を持ち始めたのもあるかもしれない。

だが一方で最も影響力が大きかったのは、商業化が進む社会においてお金を持った人たちを馬鹿にしていてはビジネスが成り立たない時代になったことだろう。例えば、商業メディアはそんな「高富帅」を顧客とする企業に広告投資してもらうために、ネガティブな話題より「高富帅」のカッコ良さを強調する。街にそんな文脈が流れ始めることで社会に「お金持ち」に対する憧れが植え付けられていく。特にファッショナブルなもの、時代の先を行く情報に興味を持つ人達に「高富帅」への憧れは強い。

社会にどんどん広がる「持てるもの」への共感と憧れ。豊かさに憧れる人を責めることはできないだろう。だが、気になるのは、それがじわりじわりと、「富二代」「紅二代」を受け入れ、その存在を肯定する風潮を生んでいることだ。こんな風潮が「太子党」で固められた現政権への評価にも影響しないと誰が言えるだろうか?



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版画:丁未堂