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チャイナ・スクランブル

11月末の台湾、香港2つの選挙で統一派、親中国系が勝利−でも浮かれぬ北京当局(下)
2018-12-12. 日暮高則
民進党側はどうか。蔡英文総統の人気度は2年前の就任直後からずっと下降線をたどっていて、11月の時点での支持率24・7%とこれまでの最低。不支持率は6割近くになっていた。今回、蔡女史が選挙後すぐに党主席辞任を表明したのは当然の流れで、民進党は戦前から敗北を予想していたことを物語る。だが、敗北の度合いは予想以上だったようで、陳菊総統府秘書長や頼清徳行政院長も連帯責任の形で辞任の意思を示した。だが、陳女史は同党のキーウーマン、頼氏は次期総統選での切り札的候補と見られているだけに、党全体のマイナスを考えて当面慰留された。当面の代理主席として林右昌基隆市長が選ばれが、正式な後任主席は3カ月以内に行う主席選で選出される。地元メディアによれば、蘇嘉全立法院長〈62〉が有力だと言われている。

九合一選挙結果について、大陸側は本来鬼の首でも取ったような喜びを表すところだが、反応は案外おとなしいものであった。国務院台湾事務弁公室の馬暁光スポークスマンは「台湾民衆が経済や民生を重視し、大陸との平和発展の関係を維持しようと望んだ結果だ」と、上から目線の余裕ある発言をするのみ。北京当局は、92年コンセンサスを認めない蔡英文氏に対し総統就任以来、ずっと圧力をかけ続けてきたが、選挙結果を見る限り、これが大きな影響をもたらし、予想通りの成果を上げたことを裏付けた。対台湾関係を受け持つ部署では内々では快哉を叫んだことであろう。大陸側は、今後ブルー陣営の首長を抱える市・県との交流を進めていき、さらに蔡英文総統、台北政府を孤立させる策を取っていくことは間違いない。

ある程度予想できた首長選挙よりも、むしろ同時に行われた公民投票を気にかけていたもようだ。特に、「国際スポーツ大会には台湾という正式名称で出場する」という案件は、台湾人民の統一独立への意思表示に関わるだけに注目点だったが、反対が多数になったことに胸をなで下ろしたのは確かだ。大陸側の馬スポークスマンも「公民投票が人心を得ないことや、台湾独立は必ず失敗することを証明した。大陸側は92年コンセンサスを堅持して台独に反対し、台湾の多くの市・県が両岸交流を進めることを歓迎する」と強気のコメントをした。「台湾」名称反対が多数になった理由は、日ごろから大陸側が「独立宣言すれば、武力介入する」という脅しがあったことも否めない。

▼香港立法会補選は元女性キャスター当選
香港立法会の補欠選挙は、筆者が投票日前後に九竜西選挙区内の太子(プリンス・エドワード)駅近くのホテルにいたことから、身近に選挙活動に触れることができた。この補欠選挙は、2016年選挙の直接選挙枠で当選した民主派6人が議会宣誓文で中国をからかうような文言を加えたため、失職した。4議席の補欠選挙は今年3月にも実施され、民主派は2議席しか取れなかった。今回は残る2議席のうちの一つの投票だったが、なぜ注目されたかと言うと、毎年6月4日の天安門事件記念日にビクトリアパークで抗議集会を主催する香港市民支援愛国民主運動連合会(支連会)主席だった大物民主派政治家、李卓人氏(61)が立候補するからであった。

李氏は労働組合出身で、1995年から立法会議員を務めてきた。2016年選挙で落選したため、民主党などが彼を早く議員復帰させようと、もともと地盤であった新界西選挙区から鞍替え出馬させた。しかし、この選挙区には、長年ここを地盤としていた穏健民主派政党「民主民生協進会(民協)」の元主席、馮検基氏(65)がいる。彼も落選中で、今回、無所属候補として出ることになった。この民主派2人の重鎮に対抗し、親中国系(建制派)で立候補したのは「無線電視(TVBテレビ)」元記者、キャスターで、その後に特別行政区政府職員に転じた陳凱欣女史〈41〉だ。元役人らしく政治色を出さず、公営住宅増築、医療保障の充実、女性労働者の待遇改善など「民生最優先」を掲げた。親中国系勢力が彼女を持ち上げる意気込みは並々ならぬものがあり、彼女の写真や政見を載せた中国系紙「大公報」を地下鉄駅頭で、大量に無料で配ったりした。

投票日当日の11月25日、地下鉄・太子駅前では各陣営が入り乱れて投票を呼び掛けていた。だが、雨が激しかったせいか、民主派に勢いがなかったためか、当日の投票率は5割を超えず、44%程度に終わった。得票数は、陳女史が10万6457票〈得票率49・52%〉で当選。李卓人氏は9万3047票〈同43・28%〉、馮検基氏は1万2509票〈同5・82%〉。李氏と馮氏の票を合わせても陳女史の票に届かない、民主派にとっては惨めな結果となった。地元紙「星島日報」が選挙区有権者を事後調査したところ、調査対象の42%は「もう政治に飽き飽きした」と答え、6割以上の人が「理想の候補者を見出せなかった」と吐露している。民主派は若者のエネルギーを吸収できなかったようで、今後の活動に不安を残した。

立法会はこれで「直接選挙枠」も「職能別選挙枠」とも親中派議員が多数を占め、特別行政区政府が北京の意向を受けて条例案を通すことがより容易になった。そのためか、中国系マスメディアは選挙結果に目立った論調を示していない。陳女史は勝利後のインタビューで、「私にとっては初めての選挙だったが、今回建制派の団結を見て、文明的選挙とは何かを深く知ることができた」と言葉少なに語った。勝った以上、反対派の反発を買うような発言は避けたいとの判断であったのかも知れない。

林鄭月娥行政長官は部内会議で、「選挙結果は、私の執政に大きな影響を与えるものではない」「立法会との協力関係を引き続き重視していく」と余裕の発言に終始していたが、彼女の関心は今議会どころではないようだ。米商務省内では今、米中貿易摩擦の中で香港と中国を同一関税区と見て、香港独自の関税区の地位を見直そうとする動きがあり、そうなれが香港の自由港の意味はなくなる。林鄭長官は、貿易戦争に巻き込まれないよう香港の独自性を強くアピールしなければならない。そのためにも、補選の選挙結果で大陸との一体化が進んだイメージを振りまきたくないのだ。ただ、議会内で政府与党が多数を占めたことで、あるいは独立派を抑え込むために、基本法23条に基づく保安条例の制定などに動き出すこともありえよう。香港は実質的にまた一段と北京の影響が強まる状況になったことは否定できない。