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チャイナ・スクランブル

「逢九必乱」とすれば、2019年の今年何が起きるのか−垣間見える党内対立、軍反発も(下)
2019-04-24. 日暮高則
今年2月27日、党中央は「党の政治建設を強める意見」と題する文章を発表、その中で「低級紅、高級黒」を使って政治権力奪取を狙う勢力がいると指摘した。「低級紅」とは露骨な追従やゴマすりの類いであり、「高級黒」とは巧妙な形の批判、風刺や皮肉を意味すると言われる。いずれも面従腹背の「両面派」「偽忠誠」の輩であるとして警戒心を高めるよう呼びかけた。3月3日の全国政協会議開幕当日、SNS微信上に「習総書記の恩情を永遠に忘れない」という曲が流されたが、当局は反習派が意図的に仕組んだ「ゴマすり行動」と判断してストップをかけている。習近平主席が”褒めごろし“に神経質になっていることを裏付ける一幕だ。

香港紙によれば、昨年7月初め、ネット上に「一号休息、大海領軍」という言葉が流布された。「一号」とは習近平氏を指すならば、領軍(軍か党全体かを率いる)する「大海」とはだれか。政治局常務委員の中で海にちなむ名前は汪洋氏(全国政協会議主席)しかいない。となると、習近平氏を退陣させ、汪洋氏のトップを待ち望む声があるということか。党機関紙「人民日報」は同年7月16日、党内に大言壮語する風潮があることを批判しながら、清廉な軍幹部として知られる彭徳懐、張愛萍両将軍を見習うよう呼び掛ける文章を掲載した。張将軍の孫と汪洋氏の娘が夫婦であり、両家は姻戚関係。このため、張愛萍将軍を讃えるのはすなわち汪洋氏賛美を狙いにしており、これも汪洋氏擁立の動きがある証左との見方があった。

ただ、当の汪洋氏は「反習近平の勢力に加わることはない」と否定したことがネットで流れているという。汪洋氏は胡錦涛前国家主席が影響力を持つ共産主義青年団の出身だが、江沢民元国家主席や曽慶紅元副主席とも懇意にしており、彼らの推挙で昇進してきた幹部だ。温厚な人柄でどの派閥にも属さず、習主席との関係も悪くない。したがって、汪洋氏が反習近平政変の首謀者になる可能性は低いと見られている。「一号休息、大海領軍」は婉曲な表現であるため、実際のところこれが何を意図しているのかは分からない。流布した首謀者もつかめず、事件はうやむやのうちに終わっている。

反習近平の動きは党内にとどまらず、軍内にもあったようだ。解放軍の房峰輝・前連合参謀部参謀長が「規律違反」の罪で今年2月末に無期懲役の判決を受けたが、米系メディアなどによれば、この判決文の中に、反習近平のクーデター計画に関与したとの罪状も含まれていたという。2017年夏当時、第19回党大会を前にして軍内に緊迫した動きがあったと言われていたが、どうやら真実に近いようだ。房峰輝氏は胡錦涛前国家主席との関係が良く、北京軍区司令員をしていた2012年当時、周永康、薄熙来両氏らが起こしたクーデター計画を未然に防いだとされ、その功績で軍事委員会の重要ポストに上った。

その房氏が2017年8月、「規律違反」の疑いにより軍の規律部門に拘束され、昨年10月、党籍剥奪となったことが公表された。刑事処分としては、今年2月20日、一審判決で無期懲役が言い渡されている。表立った罪状は、贈収賄罪、出所元不明の巨額財産所持などの罪とされるが、それにしてはかなり重刑であり、もっと重大な“犯罪”に関わったことが取りざたされた。香港誌によれば、房氏は、前政治部主任の張陽氏らと共謀して習近平追い落としの軍事的政変を画策したと言われる。この計画は未然に習主席の知るところとなり、防止された。房氏が拘束されたあと、同年秋には張陽氏にも司直の手が伸びたが、彼は自宅に来た軍保安員の前で首吊り自殺をした。

米の華文ネット「多維網」によれば、昨年、許林平・元蘭州軍区副司令員、何清成・西部戦区副司令員ら6人の将官クラスが行方不明となった。彼らはいずれも房峰輝氏のクーデターに関与し、拘束された可能性もある。習近平氏がトップになって以降、郭伯雄、徐才厚両元軍事委員会副主席はじめ多くの軍幹部が汚職で逮捕、立件された。軍人摘発は今でも続いている。また習主席は近年の軍人事異動で、旧南京軍区31集団軍の在籍経験者ら自らに近い人材ばかりを引き上げており、このアンフェアな縁故主義に対し、軍内では習主席に対する怨念が渦巻いていると言われる。一連の軍人の逮捕劇は、米中貿易戦争との絡みはないが、経済、外交政策の対立で党内抗争が高じれば、それに合わせて軍内も不穏な動きが出てくるのかも知れない。

再来月には天安門事件(6・4事件)30周年目となる6月4日を迎える。そもそも事件を引き起こした1989年春の民主化運動は、4月中旬、党内の会議で演説中に倒れ、死亡した胡耀邦元総書記を追悼するため、学生たちが天安門広場にある人民英雄記念碑に花輪をささげたことが発端だ。そこから広場での集会、ストライキが続いたため、戒厳令が敷かれ、最後は軍の出動となった。今年も当局は清明節での胡耀邦氏追悼イベントに神経質になり、6・4事件で死亡した学生の親たちが集会を持ったり、墓参りをしたりすることに厳しい監視の目を向けていた。今後もその日に向けて、ハイアラート(厳戒態勢)の状態は続くと見られる。いや、6・4事件に限らず、10年おきの9の付く年に起こったそれぞれの事件の記念日についても警戒を怠らないであろう。