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チャイナ・スクランブル

貿易摩擦めぐり4中全会でも党指導部の対立続く?経済下降でスタグフレーションへ(下)
2019-11-25. 日暮高則
<豚肉、その他の値上がり>
 他のファンダメンタルズと同様に、物価も上昇という悪い状況にある。消費者物価指数(CPI)は8月に前年同月比で2・8%増、9月には同3・0%増と上がり続けていたが、10月は前月比でついに3・8%と4%近くなった。このCPIの前年比アップ率は2012年2月以降でもっとも高い数字。内訳は、食品価格の上昇が3・6%、非食品価格の上昇が0・2%と圧倒的に食品高騰が原因。その最大の素因となっているのは、やはり豚肉の高騰である。9月から10月にかけての豚肉価格上昇率は前月比で20・1%増、それで10月を前年同月比で見ると、なんと101・3%も値上がりした。豚肉好きの中国人であるので、豚肉価格がCPIに与える影響力は2・43ポイントと大きく、値上がりは食生活勘定に大きな負担をもたらしている。

西南証券首席アナリストの楊亜偉氏は「(アフリカ豚コレラの発生などの影響で)9月の飼育頭数、繁殖用の母豚の数ともに減少、9月の減少幅は7、8月より一段と大きくなり、2ケタの減少率を示した。したがって、今後も豚肉価格は上昇する。来年の春節のころには高値のピークを迎えるだろう」と指摘している。豚コレラの蔓延によって数百万頭が死んだり、殺処分にされたりし、中国メディアは「壊滅的な打撃を被った」と書いている。国内生産量の低下を補うために輸入を増しており、今年の輸入数は昨年の210万トンから大幅増加し、310万−330万トンになる見込みだという。オランダの金融機関「ラボバンク」によれば、さらに来年の輸入数が460万トンという歴史的な数量に達するのではないかと予測している。

 ちなみに、中国国内での豚肉輸入量の増加が世界の食肉市場にも大きな変化を与えている。ブラジルは豚肉の輸出量が年初以来これまでに4割ほど増加したため、同国内の豚肉価格が30%程度上昇した。オーストラリアのスーパーマーケットチェーン「コールズ」は今年中国向けの食肉輸出を記録的に伸ばしたため、同国の豚肉価格は40%上がった。さらに欧州でも今年35%のアップ。これは、中国への豚肉輸出が増えたという理由だけでなく、中国のアフリカ豚コレラが東南アジア、韓国、日本などの海外に蔓延し、生産量が減ったこともある。中国人が病原菌付着の食肉を持ち込んだり、台湾の金門島ではコレラで死んだ豚の死骸が中国から漂着したりして地区感染の原因になった。このため、各国とも中国からの感染に必要以上に神経質になっている。

 国務院農業部は今月11日会議を開き、韓長賦部長が「豚生育の監視体制を強めよ」と述べ、豚コレラの感染対策を徹底させるよう各地省市政府の責任者に厳命した。特に、一部地域で豚コレラ感染を防ぐために「地下ワクチン」が使用されていることを問題視している。豚コレラワクチンはすでに完成し間もなく臨床実験に入るが、完成品でないものが早くも出回っており、偽ワクチンで豚が多数死ぬ事態も起きているため、取り締まりを強化するよう訴えた。さらに、農業部は豚肉価格の安定化を図るため、鶏肉、牛、羊肉、水産物など他のタンパク源の生産を促進し、豚肉への集中需要を抑える方策を取るよう求めている。

ニンニクは、餃子の餡はもとより、さまざまな料理に利用されるため、中国人にとっては欠かすことのできない食材だ。その主要な野菜も大幅な値上がり傾向を見せている。9月末のニンニクの価格はキロ当たり2・8元だったが、これが10月末には34%増の3・75元に跳ね上がった。昨年同期に比べると200%のアップで、ここ3年では最高値。実は、今年のニンニク生産は豊作であり、6月に価格は急落した。そのために取り扱い業者は安値取引を嫌がり、意図的に市場に回さないようにした。ある農業アナリストによれば、長期的な対応として340万トンくらいの在庫はあるという。業者の”売り惜しみ“が続いた上に、海外への輸出量が増え、現在の高値状態を生じさせたようだ。

 食品以外で目立った価格上昇を見せているのが天然ガスだ。中国政府は2年前から、大気汚染の主要原因となる石炭の使用を抑え、ガスや自然エネルギーに転換するよう促してきた。その天然ガスがここ1か月で5割アップの暴騰を見せている。液化天然ガス(LNG)の価格は10月1日、トン当たり2912元だったが、10月28日にはこれが3728元にアップ。さらに、11月4日には4239元に達した。海外での調達コストが上がったこと、暖房用に石炭が使えなくなったこと、加えて、10月−11月は寒気到来で一時的に需要が増し、品薄となったことが高値の原因だ。急激需要増という時期が要因とすれば、本格的な冬になったら価格は下がるのではないかと期待されるが、業界関係者は「LNGは当分価格上昇トレンドを続ける」と予測する。庶民にとって、今年は“寒い冬”になりそうだ。

<経済活性化への手立て>
 2008年、リーマンショック後の世界的な不況を乗り切るために、中国は総額4兆元というインフラ投資と減税などの景気対策を実施した。それまで年率10%を上回る経済成長率を記録していただけに、指導部はこの高い成長率が途切れ、社会情勢に影響が出ることを恐れたのだ。つまり、当時、中国の対策はあくまで国内向けで、世界を救うことを意図したものではないのだが、世界的大不況が心配されていた時期に発動されたスケールが大きい措置は、西側諸国含め多くの国々の拍手、喝采を受けた。同時に、中国が世界経済の重要なステークホルダー(利害関係者)であることを印象付けた。

経済成長率は2015年6・5%、16年6・7%、17年6・8%、18年6・6%増と6%台後半を維持してきたが、昨年来の米中貿易戦争でさすがに今年は怪しくなった。このため、今年の全人代政府活動報告で、李克強総理はインフラ投資、減税や社会保険料の引き下げなどによって総額2兆元規模の景気対策を取ることを明らかにした。成長率の目標値は「6−6・5%」とされたが、第4四半期までの状況を見ると、1−9月期は6・2%(速報値)である。通年の実績は6%台のかなり下、さらには6%を割るのではないかとの見通しで、2兆元の景気対策が十分に奏効していないことを物語っている。

 中国のGDPがこれまで輸出に大きく依存してきたことから、米中貿易戦争の影響をもろに受けた。したがって、政府は本格的に内需への転換を考え始めた。ただ、白物家電製品は農村を含めて普及してしまったので、適当な金額で買えて爆発的に売れる新たな商品はない。自動車はまだ農村では高嶺の花だ。そこで考え出された策が「夜経済(ナイトタイム・エコノミー)」の活性化だった。国務院は8月8日に発表した「流通をいち早く発展させ、商業消費を促進させる意見書」で、夜間の商業活動をもっと進めるべきであると提唱した。夜間にもっともっと人を外に出し、スポーツ、文化イベントを設け、繁華街を活発化させようという狙いである。

香港誌「亜洲週刊」によれば、首都北京市では、13項目の実施要項が決まり、その中には「夜京城」なるブランドもつくる計画もある。上海でも市政府内に「夜間区長」や「夜生活首席執行官」なる夜経済活性化専門の役職を設け、天津でも夜活動向けの商店街造りを進めているという。ただ、主要都市はすでに夜の商業活動は十分に行われている。中央政府は、むしろ夜になると真っ暗になってしまうような3、4線級以下の都市の活性化を目指しているようだが、3、4線級以下の都市となると、水、電力は賄えるのか、交通手段は十分かなどの新たなインフラの問題や労働力、治安対策の必要性も出てくる。一概に夜経済の活発化といっても難しい面もありそうだ。