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中国の都市企業従業員年金制度、2035年消滅説も−社会科学院研究センターの心配な報告(下)
2019-08-14. 日暮高則
都市農村住民年金となるともっと悲惨だ。もともと支払い保険料が少ないのだから、受け取り額も少ないのは道理だが、月額数百元のレベルではなかろうか。日本でも国民年金と厚生年金加入者の開きが問題になっているが、ある華人サイトによれば、中国の都市企業従業員年金加入者と都市農村住民年金加入者との受け取り額は20倍以上の開きがあるという。こうした現状について、中国国内の公式サイトですら「支給額は確かに少ない」と認めている。ただ、「老人であって、しかも農村にいれば、大きな買い物はしないだろう。食べたいものだけは買えるはずだ」などと苦しい釈明をしている。

劉昆財政部長は今年3月全人代時の記者会見で、2018年の都市企業従業員年金の収支状況について、「基金の剰余金は安定的に増えている。当初の統計によれば、収入は3兆6000億元、支出は3兆2000億元で、この年だけで4000億元の黒字となり、基金の剰余累計は4兆6000億元には達する見込み」と語った。そして財政部の試算として「各省平均で17月分の支払いが可能だ」として、総体として年金制度は心配ないと強調した。ただし、「地域間で収支バランスに大きな差がある」と指摘。例えば、2017年単年に広東省では1559億元の黒字を記録したが、東北地方の黒竜江省では基金が底をつき、マイナス232億元になったという。

「中国社会保険発展年度報告2016」のデータによると、広東省は7258億元もの基金剰余金があり、これだけで全受給者に55・7カ月支払い可能であるという。このほか、支払いに余裕がある省は、浙江省の剰余金3225億元(支払い可能月数22・6カ月)、江蘇省の3366億元(同22・2カ月)、福建省の574億元(同18・6カ月)など、比較的南部の沿岸部は恵まれた状態にある。逆に、天津市は剰余金405億元(同8・2カ月)、遼寧省が929億元(同6・3カ月)、吉林省が331億元(同5・9カ月)と、剰余金のない黒竜江省を含め東北3省は厳しい台所事情となっている。

7月8日の記者会見で、人力資源・社会保障部の聶明雋養老保険司長は「養老基金の剰余残高が4兆7800億元あるとはいえ、構造的な問題を抱えていることも事実だ。それは、地域間で剰余金のアンバランスがあること、また事業所の納付状況にばらつきがあることなどだ。今後、構造的な問題が養老金の運用に支障を来すかも知れない」と語った。李克強総理も全人代で吉林省代表団と会見した際、「老齢化が加速し、出生率が低下している状況では、養老基金の赤字はますます増える」と懸念を表明した。そうした問題を克服するため、2020年末までに省別にある養老基金を国全体で統合していく考えも示されている。つまり、南北差の解消には、南部の豊かな省の基金剰余金を北の恵まれない省に移す「南銭北調」の方策も必要ということだ。

4月の社会科学院研究センター報告はとりわけパーリンホウに不安感を与えた。今、中国で中核の就労パワーであるパーリンホウは一人っ子世代であり、高齢になった時に頼れる兄弟はいない。なおさら年金には関心があるのだ。そうした事情を意識したのか、聶養老保険司長は「養老金は長期にわたって支給が可能だ」と述べ、パーリンホウの受給も問題ないことを強調。その根拠として、南銭北調による地域間格差の是正などの方策のほかに、政府が「戦略備蓄基金」を増やしており、社会保険分野には約2兆元の備蓄金があることを明かした。中国も「100年安心」のラッパを吹き始めたようだ。