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チャイナ・スクランブル

コロナ禍でも不動産購買熱は続く−金融機関は投入資金を抑制の・・・(下)
2021-07-19. 日暮高則
<房貸荒、投入資金は抑制的>
中国発のサイトを総合すると、今年上半期の不動産市場は「総体として平穏に推移している」と分析されている。昨年末から人気が出た都市の住宅は依然購買熱が続いているほか、一、二線級都市では今年の春節時期に新たな住宅需要が起きたという。今年1−5月に不動産企業大手100社の売上額を見ると、4兆8669億5000万元に達している。これは前年同期比で51・3%の増、コロナ禍以前で比較的好況であった2019年同期と比べても39・4%の増であった。100社のうち半分近い企業が2019年業績よりも5割以上販売額を伸ばしていた。同期間、大手の23社が年間売り上げ目標の4割を上回っているという。

ただ現在、中央政府が不動産業に対し、「3つのレッドライン(三条紅線)」の圧力をかけているため、投資熱は抑えられつつある。3つのレッドラインとは主に、不動産業への融資枠を制限するための新たな規定である。自己資本をベースにし、必要以上に「梃子(レバレッジ)の原理」を利かせて危険水域まで踏み込む企業が多いことから、資金調達に一定の歯止めをかける措置だ。一つ目の目安は「総資産の中で負債の比率が70%を超えてはならない」、二つ目は「流動資産に対し、流動負債の比率が100%を上回ってはならない」、三つ目は「月末における短期負債額が毎月の営業収入キャッシュフローを上回ってはならない」。この三条紅線規制により住宅市場に金は流れにくくなっている。

中国のニュースサイト「財新網」が不動産市場調査専門の「貝殻研究院」の情報として伝えたところによると、中国50都市の中古住宅物件の取引は今年6月、前月比で2割落ち込んだ。これは業界筋の話として「金融機関が貸し出しを渋り、不動産市場に資金が入るのを抑えているからだ」という。今年初めから、各大手銀行は個人向け住宅ローンの貸し出しを絞り始めた。6月からは合肥(安徽省省都)、杭州、成都では、特に中古住宅のためのローンを縮小あるいは停止した。広州、深圳などの銀行では、貸し出し限度額を超えたとして婉曲に断っている。ラジオ・フリーアジア(RFA)は「最近、多くの銀行が中古住宅ローンを停止している。最初に止めたのは合肥の13の銀行で、その後に蘇州(江蘇省)、重慶、武漢などに及んだ。当局の通達がないにもかかわらず、多くの場合、黙々と貸し渋りを実行している」と伝えている。

中国の経済紙「21世紀経済報導」によれば、広東省住宅政策研究センターの李宇嘉首席研究員は「房貸荒(住宅ローン資金不足、すなわち貸し渋り)は周期的なもので、今年だけの問題ではない。当局が不動産市場の調整を行う際には必ず出現する現象だ。例えば、2013年末、2017年から18年にかけてもあった。調整が済めば、房貸荒は自然消滅する。しかし、今後は、貸し渋りが緩和されても、上限が定められるため、これまでのように大規模な資金が不動産市場に流れる時代は終わった。レバレッジを働かせて市場を煽る時代は二度と戻ってこない」と語っている。

<不動産税はどうなる?>
相変わらず関心を集めているのが不動産税の導入問題だ。昨年秋の共産党5中全会で第14次5カ年計画(2021−25年)が採択されたが、不動産税の実施もこの中に含まれた。国務院財政部は導入に積極的であり、劉昆財政部長は最近半年間でも3回にわたって立法化の意向を「経済日報」紙などで表明している。今年5月には、全人代常務委員会予算工作委員会、住房城郷建築部、税務総局の担当者を集め、座談会を開いて意見を聴取した。一線級など一部の都市ですでに不動産税は試験的に導入されているが、その管理を担当したある職員は「今後2年以内に不動産税は全国的に必ず導入される。その理由は、この税は富の再分配につながるからだ」と指摘、さらに「都市と郷村の中心地に住む住民の96%はすでに個人用の住宅を所持している。この膨大な資産が中国人の個人個人の手中にあるのなら、間違いなく安定的な税源になり得る」とその意義を強調している。

不動産税は、2011年に上海と重慶で試験的に導入された。この時は、日本の固定資産税のように、地方政府が徴収権限を握る地方税だった。だが、この徴税は激しい世論の抵抗に遭い、2014年にはいったん停止されている。これには理由があって、地方政府が所有する土地の使用権をデベロッパーに売却する際、すでにかなりの高額の「譲渡金」を取っていることだ。高額であるのは、その後に土地が作り出す収入の価値を予測し、その価値収入の分を含めているからで、言葉を変えれば、地方政府は土地の売却時にすでに不動産税相当分を先取りしているということだ。「その上、毎年不動産税を取ったら、二重取りになり、法理上問題ではないか」という議論が起きた。この結果、徴収権を地方政府が握ることが問題視され、国家税務総局は、今度は国税にするという視点で検討し始めている。

地方政府の財政を主に賄っているのは土地の売却益である。国税として全国一律で不動産税の徴収が始まれば、不動産市場全体の低迷を招き、地方政府の土地売却収入にも大きな影響を与えることになる。さらに、元北京大学経済学教授である夏業良氏は「本当の富裕層は不動産税導入を気にかけていないだろう。所有不動産で十分な利益を出しているからだ。影響を受けるのはむしろ中産階級で、ローンを支払いながら自宅以外に賃貸用の別宅を持っているケースだ。不動産税が課されれば、彼らにとって相当な負担となり、自宅以外の所有物件を手放すかも知れない。それはそれでまた不動産市況にも波及してしまう」と語る。

習近平国家主席は税収項目を増やすことに積極的であり、新たな税源として一番期待しているのが不動産税だと言われる。究極に社会主義化を目指している習主席にとっては、不労所得的な賃貸収入は気に入らないであろうし、富の平準化につなげるためには同税の導入は歓迎すべきものであろう。したがって、第14次5カ年計画期間終了年の2025年までに国税としての不動産税が始まるのは間違ないようだ。