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アジアの今昔・未来

第457回
孫の世代に自然の面白さ伝える柳生博さん

2018-07-19. 伊藤 努
前回に続いて、都内の会員制クラブの講演会で興味深い講演を聞く機会があったので、紹介させていただきたい。知り合いのHさんにたびたび誘われる昼食を取りながらのこの名門クラブでの月例講演会のテーマは政治や経済、外交など硬派の話題が取り上げられることが多いのだが、今回も前回の昆虫のクモの糸の有用性を紹介しながらの「タンパク質を活用した新素材の研究・開発」と同様、「自然保護の重要性とともにそれを次世代の若者たちにどのように伝えていくか」という日本人の生活になじみのある「里山」を礼賛する内容の講演で、私たちの普段の生活と関わりの深い身近な話題に目を開かされた。

講演者は、長く俳優を続けながら後半生は自然保護活動家に転じた柳生博さん(81)だ。NHKや民放のテレビドラマに脇役として数多く出演する一方、ここ数十年はやはりNHKの園芸番組や地球の大自然を追ったドキュメンタリー番組にも登場しているので、名前と顔をご存じの方も多いだろう。かく言う筆者は、俳優の柳生博さんと言えば、まだ中学生や高校生だった半世紀近く前の1970年前後に当時人気だった民放テレビの学園ドラマで舞台となる高校などで教頭役として3枚目の役柄を演じていたことを懐かしく思い出す。

そのような思い出のある柳生さんから、半世紀ほどの歳月を隔てて自然保護活動の話を聞くとは隔世の感を覚えつつの聴講となったのだが、やはり、役者出身とあって話の内容や言い回しが面白く、会場を埋めた社会のエリートぞろいのクラブ会員の間から大きな笑いが何度も起きた。

前置きが長くなったが、柳生さんは現在、5万人の会員を擁する「日本野鳥の会」の会長を務めており、会長職が15年にも及んでいるのは自然保護に対する並々ならぬご本人の情熱を多くの関係者が認めているからでもあろう。元駐米大使の司会者から「自然保護のチャンピオン」と紹介された柳生さんのもう一つの活動舞台が、長野県の八ヶ岳山ろくの一角に切り開いた耕地で、下草を伐採するなどして雑木林を作り、多くの野鳥が飛び交う楽園となっている。

茨城県の霞ケ浦周辺で代々続く地主の家に生まれた柳生少年が日本の全国各地に点在する里山やそれを取り巻く大自然に魅せられたのは、祖父の教えや導きがあった由で、生家の家訓で13歳(中学2年)のときに1カ月ほど生まれて初めての人生修業の旅に出されて向かった先が日本の敗戦から間もない八ヶ岳山ろくだったという。後年、成人し、家庭を持つようになって再び、うずいてきたのが少年時代に里山や自然の中で夢中になって遊んだ思い出だった。

八ヶ岳山ろくに一家で移住を決めたのは、少年時代の夢を実現させる思いとともに、都会生活を送る中で自分の子供たちがいじめを受けたりした辛い経験を断ち切り、自然の中で成長することの素晴らしさに思い至ったからだという。現在、7人の孫を持つ身となった柳生さんは自身がそうだったように、孫たちに里山に生息する昆虫や野鳥の生の営みを一緒に見詰めながら、自然の中で生きる喜びを伝えているという。

日本はかつてない高齢化社会を迎えているが、孫や小さな子供たちに自然の素晴らしさを伝え、一緒に学んでいくことはおじいさん世代にも大きな生き甲斐になるに違いない。講演の副題は「確かな未来は懐かしい風景の中に」と、まるで柳生さんの人生訓の趣きがあり、会場のクラブ会員諸氏にとっても残りの人生を送って行く上で大いに参考になったようだ。