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アジアの今昔・未来

第492回
プノンペンで知った昭和の終わり

2019-08-16. 直井謙二
元号が令和となり、平成が終わった。およそ30年前の昭和の終わりを思い出していた。ちょうどその当時バンコク支局に赴任していた。

昭和天皇崩御が近いと予想されることから皇室と親交のあったタイ王室を取材するなど準備を進めていた。1989年の正月早々カンボジアの首都プノンペンでの取材が決まった。1979年1月7日、カンボジア全土を支配していたポルポト政権がベトナムの支援を受けるヘンサムリン政権の攻撃を受け首都プノンペンは陥落し、ヘンサムリン政権は実効支配の足掛かりを獲得した。

プノンペンではヘンサムリン政権樹立10周年の記念式典の準備が進んでいた。国際社会はベトナム軍の支援を受け侵攻したとしてヘンサムリン政権を批判し、国連は制裁を課していた。

実効支配の実態を国際社会にアッピールし制裁を解除したいと意気込む政権外務省の協力を得て取材は順調に進んだ。ヘンサムリン政権樹立10周年記念式典の模様を撮影した映像と記者レポートを日本に送るための衛星中継の準備も整えた。

式典が行われる1月7日の朝、持参した携帯ラジオを聴きながら原稿をチェックしていた時のことだ。電波状態が悪く音声が時々途切れるアメリカのラジオ放送VOAの音声から「HIROHITO」という単語が聞こえた。不安な予感を持ちながら式典会場に足を運ぶと同業他社の特派員も浮かない顔をしている。すると間もなく昭和天皇が崩御されたことが確認された。

今後の対応について東京のデスクと相談したいところだが、当時のカンボジアには国際電話も国内電話もない。文明を否定するポルポト政権が電話施設を破壊したためである。電報は可能だが、猫の手も借りたいであろう東京にいるデスクを煩わせるだけだと簡単に想像できた。

各社の対応は様々で一応取材して伝送するが扱いは東京に任せるという社もあれば、当然ボツだから取材しても無駄だと諦める社もあった。ヘンサムリン政権外務省の担当者は式典直前に突然取材意欲を失った日本の記者団の様子に戸惑っていた。

連絡ばかりか飛行便も少なく出国すらできない状態であったが、資料用に式典を撮影し、その後でメコン川の支流沿いにあるレストランでビール飲んで過ごした。その頃、東京の報道部員は何日も泊まり込み、全社挙げて昭和天皇崩御の取材で疲労が極に達していたことが後日分かった。

今年1月7日、ポルポト政権崩壊40周年の式典がプノンペンで開かれた。30年前の式典(写真)とは比べ物にならない豪華な式典の模様がテレビや新聞で報じられていた。平成の30年間で日本の経済は低迷したが、カンボジアのGDPは100倍になっていた。