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アジアの今昔・未来

第563回
タリバン復権後、アフガンで麻薬取引が活発化

2022-01-13. 伊藤努
イスラム主義勢力タリバンが昨年8月半ばに全権を掌握して以降のアフガニスタンでは、国際機関や西側諸国による開発支援が事実上ストップし、多くの国民が食料にも事欠く困窮生活に直面している。そうした中で、農村部では生き残りの一つの手段として、アヘンやヘロインの原料となるケシの栽培を始めようとする農民や都市部からUターンした失業者が増えつつある。

2001年末に米国などの軍事作戦で政権の座を追われたものの、20年ぶりに復権したタリバン指導部は全権掌握後、「麻薬産業の撲滅」を宣言したが、国際的な支援の打ち切りや米国内のアフガン政府資産の凍結で財政事情が極度に悪化しているため、暫定政権の収入源として期待できる農民のケシ栽培には反対しなくなりそうな雲行きだ。

鎮痛剤・麻酔剤モルヒネの原材料として薬効性がある作物でもあるケシの栽培はアフガンでは長い歴史がある。このため、農業が主産業のアフガンは換金作物のケシの一大産地となり、世界で現在流通するアヘンの8割超はアフガン産といわれるまでになった。ケシ栽培やアヘン取引など麻薬産業の収益は、アフガンの国内総生産(GDP)の7−11%に相当するという統計もある。驚くべき数字だ。

国連薬物犯罪事務所(UNODC)は最新の報告書で、昨年8月のタリバンの全権掌握とそれに伴う経済の先行き不安の高まりの結果、アヘンの取引価格が高値を更新し、農村部でのケシ栽培に大きな弾みをつけていると指摘した。

アフガンの元政府軍将校は西側メディアの取材に応じ、「アフガンのアヘン生産は増加を続けるだろう」との見方を示すとともに、「ケシ栽培は農民に加え、仕事がない都市部から農村に戻りつつある多くの失業者にとって重要な収入源になっている」と語った。

タリバンがまだ反政府勢力だった3年前の2018年11月当時の外国メディアの報道によれば、アヘン生産はタリバンにとっても主要な収入源となっていた(米政府の推計では年間収入の最大60%を占めていたとされる)といい、ケシ栽培面積の約70%はタリバン支配下のアフガン南部に集中していたとの情報もある。タリバンは長年、支配地域のケシ農家や麻薬密売人から徴税してきたが、近年は自ら工場を運営し、採取したケシの乳液を精製して輸出用のモルヒネやヘロインも生産するようになったという。また、2018年のUNODCの年次報告書は、アヘンの供給過剰で価格が下落したものの、他に換金作物がないため、多くの農家はケシ栽培をやめられずにいると指摘していた。

アフガン情勢に詳しい専門家は「アフガン全土をほぼ掌握したタリバンが同国における麻薬生産を撲滅しようと真剣に望んでいるとは思わない」と語り、その理由について、「タリバンは地方の重要な支持者を失うことになるため、実際には麻薬生産の撲滅を望んでもいなければ、撲滅なんてできもしない」と断言する。国際社会から取り締まり強化を求められているケシ栽培と麻薬生産の撲滅……。しかし、それがアフガンでは一筋縄ではいかない実態が浮き彫りとなるが、暫定政権を率いるタリバンが現状を放置すれば、事態は悪化の一途をたどるだけだろう。

英BBCテレビが最近、首都カブール市内の街頭で何人もの男たちが公然と麻薬を取引したり、アヘンを吸引したりしている光景を取材し、報道していたが、タリバン統治下のアフガンが再び破綻国家の道を歩んでいることを暗示させる衝撃的な映像だった。