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ベトナム 生活図譜

第28回 少数民族の家々(北部)
2019-06-24. 竹森紘臣
ベトナムは54の民族からなる多民族国家ということはどれほど知られているだろうか。その80%ほどがキン族と呼ばれる民族である。その他の少数民族のほとんどは山間部で生活していることが多い。ベトナムの北部ではラオカイ省やハザン省、ディエンビエン省、ソンラ省、ホアビン省、イエンバイ省などの中国との国境付近に居住している。これらの地域の一部では山での農業のため、棚田の美しい風景が広がっていて、現在はその風景を楽しむために国内外からの観光客も集まっている。(写真1)また彼らの色鮮やかな民族衣装やその布や刺繍などを用いた雑貨も人気だ。そのために最近では農業から転身して観光業を営む少数民族が増えたり、またキン族が少数民族が住む地域にも流入したりと少しずつ生活のスタイルが変化している。とはいえ、現在でも昔ながらの農業や工芸のスタイル、またそれぞれの民族の住宅の様式は伝承されている。

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棚田(イエンバイ、ベトナム)
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タイー族の高床式住居(イエンバイ、ベトナム)
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モン族の住居(イエンバイ、ベトナム)
タイー族はベトナムではキン族の次に人口が多い民族である。タイー族の集落は山間部の中でも比較的ひらけた盆地にあり、川と山に挟まれた場所に立地していることが多い。住居は高床式で前面を川側に開き、背面を山側にして閉じたかたちをしている。(写真2)天井はなく屋根がそのまま仕上げとなっており、内部空間は非常に高い。川側に開いた開口から屋根のすぐ下に設けられた欄間に心地のよい風が抜ける。間取りは川側の前面が大きなひとつの空間になっており、居間としてダイニングとして、家族の憩いのスペースとして使われている。山側はベットひとつ分ほどの大きさに区切られ、それぞれの寝室になっている。床下の土間では水牛や豚、鶏などの家畜を飼育したり、精米などの農作業が行われたり、日差しが強く暑いときには子供の遊び場にもなる。煮炊きは以前は高床で行われていたが現在では床下で行われるものもある。屋根は元来はLá Cọと呼ばれる椰子のような植物の葉で葺かれていたが、現在では写真のような現代的な材料に置き換えられている。構造は木造で、外壁も木材や編んだ竹で作られているが、現在では鉄筋コンクリート構造で建てられたり、また床下の一部を内部化している住居も多い。

モン族は黒モン族、白モン族、青モン族、花モン族などその民族衣装の特徴などに見られる文化の違いにより幾つかのグループに分けられている。モン族は中国の苗(ミャオ)族が起源とされていて、もともと農耕民族で稲作や焼畑農業を行なっている。ベトナムには400−500年ほど前に移住してきた。そのときにキン族が住んでいる平野やタイー族など他の少数民族が住んでいる盆地などを避けて、山の上に移り住んだといわれている。現在でもモン族の住居は山の上にあり、林を切り開き、棚田をつくって農業を営んだり、家畜を飼ったり、また機織りなどを行なっている。モン族の住居は高床式ではなく、土間をうち、その上で生活をしている。(写真3)建物は木造で壁は木の板で作られている。山の上で寒くなることからか、開口はほとんどない。もともと屋根も木の板で葺かれていたようだが、こちらもタイー族の住居と同様、現代的な材料に置き換えられている。モン族は昔は移動の多い民族だったようで、簡易なつくりの住宅にもその生活スタイルがあらわれているようだ。家財道具も少ないが、そのなかで機織り機が非常に大切に扱われていて代々その技法が受け継がれている。

北部の他の地域では版築とよばれる土でできた住居があったり、また中部や南部にはNhà Rôngと呼ばれる非常に屋根が高い住居などがある。また折をみてこちらでご紹介できればと思う。しかし、現代的な生活の流入に伴い、少しずつ形を変えたり、また失われているものも多い。誰もが便利な生活を求めるのは当たり前のことなので世界的にもよくある流れではあるが、カタチを変えながらでも民族文化やその土地の特徴を上手に活かした住居として発展してほしいと願う。
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イエンバイ、ベトナム