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ベトナム 生活図譜

第29回 路上の変容
2019-07-24. 竹森紘臣
 日本は来年2020年の東京オリンピックに向けて大いに盛り上がってきている。建設中の新国立競技場は外側の工事足場が外されて、外側からその様相を確認することができる。2020年東京でオリンピックが開催される年の4月に、ベトナムのハノイではF1レースが開催される予定だ。チケットの販売が開始されたとニュースで聞いたが、日本のオリンピックチケットほどの盛り上がりはないようだ。レースコースはすでに発表されており、ハノイ西南に位置するミーディン新市街地の路上を走るコースだが、まだピットなどの建設は行われていない。それにしてもベトナムで、ハノイで、F1レースが開催されるというのは、5、6年前のベトナムの状況からすると隔世の感を禁じえない。現在でもバイクが庶民の主な移動手段ではあるが、数年前と比較してハノイ市内の自動車の量は格段に増えており、以前にもまして交通渋滞が社会の問題になっている。駐車場の問題も深刻になりつつある。今までは比較的広い道路や交通量の少ない通りの路肩が駐車スペースとして利用されていること多かった。しかし最近では機械式やコンドミニアムの地下を利用した立体駐車場のビジネスが本格的に始まっている。自動車産業でいえばVinグループというベトナム最大のコングロマリットがベトナム国内初の自動車会社、VinFastを2017年に設立した。先日試験的にハノイ市内の路上を走行しているところを見かけた。F1レースを主催するベトナムグランプリ(Vietnam Grand Prix)社もVinグループ傘下であり、つまり今回のハノイでのF1レースはVinFastのプロモーションなのだ。ベトナムはこれまでより車中心の社会に大きく舵を切ることになりそうだ。それにともなって、ベトナムの路上空間は大きく変わりつつある。

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路地空間(ハノイ、ベトナム)
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路上の風景(ハノイ、ベトナム)
ベトナムの都心部の道路は、自動車が通れる道路(PhoやDuongなどと呼ばれる)と、そこに繋がり街区の奥に伸びるNgo(南部ではHem)と呼ばれる路地からなっている。(写真1)この路地は幅が2m以下でバイクでのすれ違いはなんとかできるが、自動車は通ることができない場所がおおい。この路地が迷路のように市街地に張り巡らされている。自動車の普及でこの路地空間はどのように変化していくのか。車を保有したいという理由で路地に建つ住宅から駐車場があるマンションを購入して引っ越すひともいる。既存の都市構造と経済発展に伴う新しい生活スタイルとのギャップは広がるばかりだ。

さて、ヨーロッパの広場型の公共空間と比べると、アジアの都市では道路に沿って公共空間が形成されてきた歴史がある。日本やその他のアジアの国で路上のアクティビティが失われていく中で、ベトナムでは現在でもまだ多くの活動が路上で繰り広げられている。フランス統治時代から残る屋根が掛けられた公設の市場も残っているが、いまだに路上に朝だけ市場が出る場所がいくつも残っている。建物の1階に食堂を構えていれば、プラスチックのテーブルと椅子が店先に出されるし、あひるの丸焼きが路上で調理されたりもする。(写真2)商売だけではない。住宅では、煮炊きを七輪、炭団を使って家先でおこなう家庭が今でもある。暑い日には椅子を出して夕涼みをするお年寄りが隣人と会話をして過ごしている。旧暦に従って祖先のために紙のお金を燃やして天に届けるのも路上だ。このようにベトナムの路上にはたくさんの日常の風景がある。

ベトナムにくると外国人として、今のベトナムの路上の風景にノスタルジー感じるひともおおい。できれば少しでも今後も残るといいなと思うのは身勝手なことだということも理解できる。それでも少しかたちが変わってもこの活気にあふれる路上の賑わいが失われないことを願う。