編集作業をしている筆者の職場には、デスクと呼ばれる社員の編集者のほかに、パソコン機器を操ってニュース商品のPDF版を作成するなど、編集助手を務めてくれる派遣社員やアルバイトのスタッフがいる。それぞれ将来の夢を持ちながら、生活の糧を得るために今の職場で働いている若者が多いが、最近、何人かが1週間ほどの休暇を使って外国旅行をしてきた。ドイツのベルリン、タイのバンコク、ネパールのカトマンズと行き先はいろいろだが、帰国後に本人から旅の感想や見聞を聞くのも楽しい。
ただ、話を聞くだけではもったいないということで、編集しているニュース商品に掲載する小さなコラムに寄稿を持ち掛けたところ、うれしいことに次々と原稿が集まった。このコラムは、海外に駐在している日系企業の幹部が読むので、外国の身近な話題の紹介や異文化体験などをテーマにしている。だから、外国旅行の見聞を書くにしても、異文化体験の面白さを盛り込むよう、一つだけ注文を付けた。
筆者の元に次々とメールで送られてくる彼らのコラムはなかなかの出来栄えで、異文化の視点も入っていて、読む側にとって新しい発見が多い。ちなみに、コラムの見出しの幾つかを紹介すると、「ネパールの自動車の安全装置」「タイ大洪水の義援金前払い」「ハノイの空港トイレは女の戦場」などで、500字程度の短い文章の中に、異国の地で見聞し、経験したことが驚きをもって綴られている。
カメラマン志望の女性が撮影のヒマラヤ (梶川知子撮影)
コラムを書いてくれた2人の女性スタッフのうち、一人はカメラマン志望、もう一人はライター志望の若者なので、好奇心旺盛なところがいいコラムにつながっているのかもしれない。見出しだけでも読み手の心をくすぐる「トイレは女の戦場」のコラムでは、立ち寄ったハノイの空港で中華系の中年女性の一団が順番待ちなどを無視してトイレを使っている光景を紹介した後、「女性にとってトイレとは、化粧直しや身だしなみを整え(中略)武装する、いわば男性を狩るための準備をする場だ。しかし、ハノイ空港のトイレは場所取り合戦が繰り広げられるまさに女の戦場だった」と結んでいる。
記者も経験を積んでいくと、手馴れた文章を書くのは上手になるが、その分、原稿から新鮮さや筆の勢いが徐々に欠けていく。自戒を込めてそう思う。若い人の生き生きとした文章、コラムを読みながら、将来、希望する道に進み、好きな仕事に打ち込んでほしいと願う。