第395回 ちびっ子サッカー選手の練習風景 伊藤努

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第395回 ちびっ子サッカー選手の練習風景

2020年夏の東京オリンピック・パラリンピックに向け、日本国内の各競技のアスリートやスポーツ関係者の動きにも熱が入ってきているが、将来の日本スポーツ界を背負う少年・少女も憧れの一流選手を目標にして好きな競技に汗を流している。筆者が住む東京都下は、女子サッカーの日本代表チーム「なでしこジャパン」で長く活躍した澤穂希(さわ・ほまれ)選手が近くの府中市出身で、小学2年生のときにサッカーを始めたことが地元でもよく知られているため、小学校低学年のちびっ子選手が大勢いる。

ある晩秋の日曜日午後、自宅近くの運動公園を訪れると、小学2年・3年の少年、少女20人ほどが4人の男性コーチの指導を受け、各自が自分のサッカーボールを使って、簡単なドリブルの反復練習や攻撃・守備の2組に分かれてドリブル突破の練習などを繰り返していた。グラウンドから少し離れたベンチに腰を降ろして子供たちの動きを見ていて驚いたことは、全員が試合に臨むような素晴らしい選手着をまとい、シューズも色とりどりのお気に入りのものを履いていたことだ。

マイボールを含め、これだけの用具、ユニフォームを購入するとなると、それほど安くはないはずだ。選手着はそれぞれひいきにしているJリーグのチームのユニフォームに、好きな選手の背番号がついていることで、練習のときから試合時の気分でいるのだろう。余談だが、子供のスポーツにも結構なお金がかかる時代となった。

20人のちびっ子選手のうち、女子は5人ほどで、やはり男子が多い。だが、小学校低学年の時点では男女の体力差がまだそれほどないためか、ボールの扱いやドリブルなど女子の方が上手なケースをよく目にした。この年齢の男子はふざけん坊が少なくないためか、練習に真剣に取り組む女の子の方が上手に見えるのかもしれない。澤選手も小学生のころは、男子顔負けの活躍で、地元チームで頭角を現したというから、要はサッカーに取り組む姿勢の問題なのだろう。

子供たちの練習を見ていて感じたのは、学校の体育の授業とは違って、教えるコーチがサッカーの専門家なので、簡単なプレーとはいえ、適切なアドバイスをしていて、子供たちも理解がしやすそうだったことだ。ドリブルを例に取っても、ボールをコントロールするためにはボールを体の前方近くにキープしておくことが必要だ。相手選手のドリブルを阻止し、ボールを奪う防御(ディフェンス)のプレーでは、相手を自陣営に入れないために素早い動きが必要となる。こうした基本プレーを練習で繰り返し、体得すれば、大事な試合でもとっさの判断でいい動きをすることができるだろう。

筆者は今から半世紀以上も前の小学4年生のときに、当時住んでいた川崎市の町の少年野球チームに入り、指導者だった野球好きのおじさんやチームメートから多くのことを学んだ。小学生の時分から他地区のチームとの対外試合を重ねたことで、川崎だけでも強豪チームが幾つもあることを知ったものである。中学、高校に進むと、試合相手は神奈川県、関東地区と地域的広がりはもっと大きくなる。

運動公園でサッカー教室のコーチの指導を受けている少年少女たちもきっと、年齢を重ねるごとに腕を上げていくに違いない。そう言えば、金メダルラッシュで沸いた先のリオデジャネイロ五輪で活躍した日本人トップアスリートの多くが、幼少期からそれぞれの競技に親しんでいた。目の前で練習する子供たちの中から、将来、Jリーグで活躍する選手も出てくるかもしれない。「ちびっ子選手たちのサッカー人生に幸いあれ!」と願いながら、運動公園を後にした。

 

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