このコラムに良く出る “姐” jiě(お姐さん)が、北京のご両親を日本へ呼んだことがありました。一世一代の親孝行です。沖縄や日光へは私も運転手でお伴しました。
うちの実家へもお招きしました。 “姐” と私はお勝手が忙しく、客間で老親4人の通訳をする間がありません。それでも “雕漆” diāoqī(堆朱)の小箱を戴いた父母が「わあ!素敵!」と撫で回すと、“姐” のご両親が身振り手振りで蓋を開けるよう教えてくれます。お返しに父母が日本の「傘になる杖」を贈ると “哎呀 āiyā! 好玩儿 hǎowánr!” (おお!こりゃ面白い!)と歓声が上がり、4人で立ち上がって傘を振り回しています。
その後いよいよ間がもたなくなり,“姐” に「どうする?」と言ってると、いきなりご両親の笑い声が響きました。見ると、うちの父が紙に下手な字で「通訳不在.会話途絶.万事休.方法皆無」と大書していたのでした。
同文同種の日中両国。怪しげな字面でも通じるのは便利です。でも生兵法は大怪我の基。まめに辞書を引いて正しく学ぶのは大事です。「万事休す」,正しくは “万事休矣” wànshì xiū yǐ でしょうか。“矣” は現代語の “了” le に同じです。
(落合理子)
・・・・・・
《傻瓜通讯ー中国語珍道中》は「東亜学院季報」に掲載していたものを再掲してきました。
2025年4月から書きおろしを掲載しています。
ほかのクイズ・コラムは<こちら>からどうぞ。