3月11日午後、東北地方を中心とした太平洋沿岸を襲った大津波は自然の威力のすさまじさを全世界に見せつけたと言っても過言ではあるまい。津波の恐ろしさと言えば、インドネシア・スマトラ島沖の巨大地震(2004年12月)によって引き起こされたインド洋大津波が近年では極めて大規模だったが、今回の東日本大震災による津波災害もその被害の惨状によって後世語り継がれていくに違いない。
まさに今回の大震災でも被災地になった三陸海岸は、津波被害に何度も見舞われており、地域の住民は先祖代々、津波の怖さは身をもって知っていたはずだ。にもかかわらず、これほど大規模な人的、物的被害が出てしまったのは、専門家も想定していなかったマグニチュード(M)9・0という国内での観測史上最大の津波地震が起きたことが何より大きいが、被災地の方々の話を聞くと、防潮堤なども整備していたので、「やはりどこかに油断があった」という感想が少なからずあった。
津波で壊滅的な被害を受けた陸前高田市(3月15日) 朝雲新聞社HPから転載
ここ数年も、それなりの規模の海洋地震が起き、気象庁がNHKなどの報道機関を通じて津波警報や津波注意報をしきりに伝えても、実際に陸地に到達した津波は気象庁の予測の高さとかなり食い違い、海面の上昇はわずかというケースが続いた。気象庁は最悪の事態を想定して津波の高さを予測しているのだろう。ただ、被害がほとんどないことが続くと、「オオカミ少年」の逸話ではないが、「今度も大したことはない」と見くびっていることはなかったか。被害に遭われた方には誠に申し訳ない言い方になってしまうが、NHKの津波警報情報と実際の津波の高さの乖離(かいり)にいつも違和感を覚えていた筆者の率直な感想がそのことである。
とは言っても、恐ろしい破壊力を持った津波がかなりの確率で襲来するのは紛れもない事実である。日本でも江戸時代から再三にわたって三陸地方を襲った大津波の史実はよく語られるが、本当の恐ろしさを知っているのは被災した住民の方々だろう。しかし、これまではテレビの映像などで生々しい自然災害の現場を知ることはなかったので、遠隔地に住む第3者にはなかなか理解できなかったが、今回は太平洋沿岸各地の市や町村をのみ込んだ大津波の襲来の様子がさまざまな映像で伝えられたので、日本の国民のほとんどが初めて「実体験」できたのではないか。
筆者は津波の恐ろしさを、スマトラ沖地震の際に震源に近いアチェ州の町や村々を襲ったものすごい勢いの濁流の映像で初めて知ったが、今回の大津波は広範囲という意味でアチェ州の被災規模をはるかに上回った。油断を戒め、災害の恐ろしさを語り継ぎ、それに遭遇した場合にはどう行動するか。防災意識をもっと高めることが身を救う第一歩なのだろう。東日本大震災の犠牲者の無念の死を無駄にしてはならない。
最後になりましたが、大震災で犠牲になられた方々のご冥福を心よりお祈りしますと同時に、地震・津波と福島原発事故で被災された関係の皆さまにも衷心よりお見舞い申し上げます。