第324回 昭和の遊びが残るタイの路地裏 直井謙二

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第324回 昭和の遊びが残るタイの路地裏

10年ほど前までタイで見られた子供の路地裏遊び。今では日本同様コンピュータ・ゲームの登場でほとんど姿消し、中高年のタイ市民は口をそろえて路地裏遊びを懐かしむ。タイの地方にわずかに残っているが、タイの路地裏遊びが昭和の日本と似ているのに驚かされる。

「鬼ごっこ」、「ダルマさんが転んだ」、「ゴムとび」、「じゃんけん」、「石けり」、などルールが少し違うが、遊びの本質は変わらない。「鬼ごっこ」は「ケンケン鬼ごっこ」という。鬼になった子供も逃げる子供も片足を上げて、跳ねながら逃げ追いかける。追いつかれ背中をタッチされた子供が次の鬼になる点は日本と同じだ。

女児の遊び「ゴムとび」は遊び方もルールも日本とほとんど同じだ。輪ゴムをつないでロープを作り、二人でゴムの端を持ち高跳びのバーのように徐々に高さを上げ、他の女児がゴムのバーを飛び越える。最後まで飛べたものが勝ちになる。筆者も子供のころ見たことがあり、参加させてもらった。見知らぬ日本人がゴムとびの要領を知っていることにタイの女児たちも目を見張っていた。

タイ式の「ダルマさん転んだ」も日本とよく似ている。鬼が唱える言葉はさすがに「ダルマさんが転んだ」ではないが、後ろ向きの鬼が文句を唱えている間に徐々に鬼に近づく。唱える言葉が終わり、鬼が急に振り返ったときは動きを止めなければならず、体勢を崩し動けば負けになる。負けたものが次の鬼になる。

「じゃんけん」も日本によく似ている。「チョキ」がはさみで「パー」は紙なのは日本と同じだが「グー」は石ではなく金槌だ。握り拳を作り振り下げる「グー」は金槌に似ていなくもない。日本のように1回ごとに勝負するのではなく、歌を唄いながら10回ほど勝負し勝ちの多いものが勝者になる。何回勝ったか覚えておかなければならず、勝った回数を巡って衝突も起きる。敗者には罰が待っていて勝者に手の甲をつねられる。

「石けり」もよく日本の遊び方に似ているが、日本と違って男児も参加する。道路にロウセキでマルや三角のエリアを書く。エリア内に小石を投げ、うまく入ればエリア内にジャンプできる正確にエリア内に小石を投げ込む技術と跳ねる力が要求される。

コンピュータ・ゲームと異なり、路地裏遊びは体を鍛えルールを守ることを覚え仲間と交流する利点があることは万国共通だ。タイの片隅に日本の昭和の遊びがまだ残っている。

写真1:80年代のバンコクの路地裏

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