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「十五五」の発展分野から消えた「不動産」—見えない“底”でしぼむデベロッパー 日暮高則

「十五五」の発展分野から消えた「不動産」—見えない“底”でしぼむデベロッパー 日暮高則

「十五五」の発展分野から消えた「不動産」—見えない“底”でしぼむデベロッパー

10月に開かれた中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議(4中全会)では、202630年の経済の基本方針である「第155カ年計画(十五五)」が提出され、この中で産業の高度化、グリーン化、融合化などという今後の方向性が示された。これらは、工業発展国家であるならば、どの国でも目指すべき必然的な方向であり、特記されるべきことでもない。それより、昨今のデフレ傾向をどのように克服、反転させ、次の発展につなげていくかが注目されるところだが、その点では不十分な印象を与える。「十五五」では、産業発展の柱として「不動産」部門が抜けた。2020年ごろから顕在化した不動産不況の“底”は依然として見えないことから、もうこの業種には期待していないのであろう。そこで、次の産業の発展が気になるが、不動産に匹敵するものがあるのだろうか。

<不動産価格の現状>
中国では「金九銀十」という言葉が良く使われる。国慶節(101日)を挟んだ9月、10月の2カ月中、まとまった連休があるほか、農村では収穫期を迎え、経済活動が活発化することから、消費も盛んになるという意味だ。不動産業界でも以前はこの時期に契約が増える傾向にあった。ただ、新型コロナウイルスの感染蔓延と並行するかのように大型デベロッパー(開発商)の巨額債務の償還不能問題が露見し、金九銀十の季節でも商品住宅の買い控えが始まった。購入希望者は「負債を抱えた業者がそのうち投げ売りする。住宅価格は確実に下がるだろう」と読んだからだ。この結果、新築住宅は裁けず、デベロッパーは資金繰りに窮するようになり、不動産開発が止まった。

今年の金九銀十期も、新築住宅は無論のこと、比較的安値で一般庶民も手が届きそうな中古住宅の取引量も下落した。ある不動産調査会社のデータによれば、一番魅力的な都市である上海で9月中に契約された中古住宅件数は約18000件、一日平均すると600700件であった。国慶節連休は人が動き、物件を見やすい時期でもあるにもかかわらず、1015日の間はわずか462件の契約、9月の一日平均の数にもならなかった。昨年の同時期ごろは一日当たり1000件を超えており、1013日などは1334件に達していた。中古市場の交易数は確実に下がっている。

上海と同じ一線級都市である首都北京市の不動産取引はどうか。同市住宅建設委員会の公式HPによれば、10月の中古住宅のオンライン契約数は12087件で同30.4%減だった。例年10月の中古取引は15000件を超えていたが、大幅減となった。もちろん、新規住宅の契約数も3511件で、前年同期比29.0%減と同規模で減少している。不動産データ分析で定評のある「克而瑞研究センター」などによれば、北京市の10月の中古住宅取引価格は1平方メートル当たり53600元で、前年同期比10.8%のダウンとか。一方、新築住宅契約価格は1平方メートル当たり58700元で前年同月比3.5%の増。新築はまあまあだが、中古はかなり下落しているようだ。

国家統計局が今年1020日に発表したところによると、9月時点での全国70大中都市の新築商品住宅価格は前年同期比で2.2%の減、前月比で0.4%下落した。前月との比較で見ると、9月はここ11カ月で一番の落ち込みとなった。ちなみに、今年8月は前年同期比で2.5%減、前月比で0.3%減。9月の中古住宅価格は前月比で0.64%減と、過去1年で最大のダウンとなった。不動産分野はGDPの約3割を占めると言われるだけに、過去4年の不動産市場の低迷が経済全体に与えるマイナス影響は大きく、それで今年第3四半期は最悪の成長率となってしまった。

全国70大中都市の新築商品住宅価格は10月も引き続き低下傾向が続く。1114日発表の統計局データによれば、上海、北京、深圳、広州の一線級都市では前年同期比で0.8%の減、地方の省都クラスである二線級都市では同2.0%の減、三線級都市では同3.4%の減だった。前月との比較で見ると、一線級都市では唯一上海だけが03%増だったが、北京は0.1%、深圳は0.7%、広州は0.8%の減。二線級都市は0.4%、三線級都市では0.4%のダウン。中古住宅でも、前年同期比で一線級が4.4%、二線級が5.2%、三線級が5.7%と軒並みダウンした。前月9月との比較でも、一線級0.9%、二線級0.6%、三線級0.7%とそれぞれ減少。一線級でも落ち込んでいるのは「大都市物件の財産神話」が薄れてきたことを裏付けていよう。

<金融機関融資も減少>
不動産業への投資規模も縮小している。「克而瑞研究センター」が105日発表したところでは、202519月期、金融機関による不動産企業への融資規模は3072憶元で前年同期比30%の減。とりわけ第3四半期(79月)の融資規模は1145憶元、前年同期比で35%の減と史上最も大きなダウンだったという。多くの民間デベロッパーは巨額の負債問題を抱えており、金融機関側も出し渋っている。企業別に見ると、今年19月期、国有企業、中央企業が発行した債券は1313憶元、前年同期比で8%減だったのに対し、民営企業は134憶元で、同13%もダウンした。金融機関は、「民営不動産企業に対する融資はかなりリスキー」と見ていることが分かる。

「中国経済新聞」(1118日付)が国家統計局のデータとして明らかにしたところによると、2025110月期の全国固定資産投資累計額は前年同期比でマイナス1.7%、減少幅が1.2ポイント拡大した。20257月以降、固定資産投資の伸び率は鈍化傾向が続き、10月に入ってもその状況が続いている。インフラ投資の累計額がマイナスに転じたのはコロナ禍中の20209月以来のことで、不動産投資の減少幅はさらに拡大した。110月期の不動産開発投資累計額は前年同期比14.7%減となり、19月期を0.8ポイント下回った。すなわち、推計では10月単月の投資額は同マイナス23.0%とされ、これは、データ開始以来の最低を更新したという。

国家統計局の傅凌暉スポークスマンは1114日の国務院新聞弁公室での記者会見で、「固定資産投資の伸びが鈍化したのは多方面の要因が複合的に作用した結果」と述べ、具体的には、対外関係の複雑さと厳しさ、国内市場の競争激化、投資収益の低下などの要因を挙げた。投資収益力の低下によって、特に民間企業の投資マインドがそがれたとも指摘している。固定資産投資における不動産の割合が高いため、不動産業界への投資減が全体伸び率を3ポイント引き下げているという。同スポークスマンは、インフラ投資のマイナス転落と不動産投資の深刻な減少を悲観しながらも、「今後、対外関係の環境改善や政策支援によって投資の回復を図りたい」と話している。

<大手デベロッパーはどうなった?>
巨大債務を抱え、不動産問題のきっかけを作った最大手企業「恒大集団(エバーグランデ)」は825日、香港証券取引所で正式に上場廃止となった。20241月に香港高等法院(高裁)から法的整理をするよう命令を受け、その時点で株式売買が停止されたが、上場廃止までには18カ月後の猶予期間が与えられた。日経新聞によれば、恒大は280以上の都市に1300件を超える開発物件を所持しており、債権者からの訴訟は数百件に達しているという。このため、その法的整理は非常に複雑で難しいし、ましてや企業整理で資産を回収して債権者に分配するのは「きわめて困難で、時間のかかる作業だ」とされる。

恒大集団の創業者、許家印会長は202310月に当局に拘束され、現在は深圳の特別施設に収監されているもようだ。ただ、許会長が逮捕されるのと同時期に、香港にいた妻丁玉梅女史は海外に逃亡し、現在は恒大の闇の海外資産管理に当たっていると言われる。許一族の海外資産は総額50億ドルにも達するという情報もある。許会長は2019年に、不動産不況を予想するように資産の海外蓄財を始めており、総額23億米ドルという「家庭信託ファンド」を設立している。こうしたオフショアの資産まで清算人は回収できるのであろうか。清算人は、日本でも事業展開する米国のコンサルティング企業「アルバレス&マーサル」のようだ。

一方、負債を抱えながらも経営再建を進めている不動産大手「碧桂園控股(カントリーガーデン)」は8月末、202516月期の連結決算で最終損益が190憶元の赤字だったと発表した。前年同期は128憶元の赤字だったから、赤字幅は一段と膨らんだ。同企業は2022年に販売契約額で国内トップだったが、業界全体の悪化から、購入者が物件の引き渡しを心配するなどで信用不安が起き、同期の販売売上額は725億元と29%のマイナスとなった。債務不履行(デフォルト)の総額は6月末に1861億元と言われ、これは昨年末時点と同水準の規模で高止まりしている。つまり、硬直した財務状態が続いており、これで法的整理が早々に可能になるとはとても思えない。

やはり大手の「万科企業」は202516月期の最終損益が119憶元で、赤字幅は前年同期より21億元膨らんだ。売上高は1053億元と前年同期比26%の減。万科は深圳の地下鉄企業との関係が深く、同地をベースに事業展開している。深圳で地下鉄建設が進むたびに駅周辺、沿線で商業施設、マンション建設を進め、膨大な利益を上げてきた。駅周辺の開発での建築総面積は500万平方メートルと言われる。こういう関係が成り立ったのは、「深圳市地鉄集団」が万科の最大株主であり、ほぼ一体化しているためだ。万科の資金繰りが悪くなったので、地鉄集団は今年85日、万科に対し並外れた低利で約259億元の融資を行っている。

実は、万科の辛傑会長は国有企業である地鉄集団の党書記兼会長でもある。国有企業であれば、国有の大銀行からは無尽蔵に資金調達できるので、開発はスムーズにできたであろう。ただ、深圳市内の発展に伴った万科企業の成長モデルは、やはり中国全体の不動産バブル消滅のあおりを食ってストップした。発展都市深圳といえども、製造企業が低迷し、それによって消費活動は衰え、不動産物件も裁けなくなった。万科は赤字を出し、辛傑会長は責任を取らされた形で、当局に拘束された。今年918日、辛氏は深圳で開かれたある会議に出席したあと連れ去られ、以後消息は不明。万科企業は10月中旬、辛会長の辞任を発表している。

具体的な容疑内容は明らかでないが、地鉄集団の万科への低利融資に加えて、辛会長が中心となって建設を進めた5つ星クラスホテル「深圳中洲聖廷苑酒店(ザパビリオン・ホテル)」も問題になったのではないかと言われている。聖廷苑酒店は深圳市中心部福田区の商業地区に位置した豪華高層ホテル。本来なら申し分ない建築プロジェクトなのであろうが、時期が悪かった。あるいは、建設を奇貨として辛会長は私服を肥やしたのかも知れない。今年10月、辛会長の拘束を受けたかのように、聖廷苑酒店のホテル名は突然「深圳福田華強北城際酒店(インターシティ-ホテル)」と改められた。

<不動産、「十五五」から外れる>
中国が先ごろ発表した第155カ年計画(十五五)で、それまでGDPの約3割を占め、経済全体を牽引してきた不動産業が「経済の柱」から外された。不動産は最早期待度の高い産業でなく、教育、医療、雇用などと同様に、単に民生の一分野に過ぎないとの認識を持たれたのか。ただ、地方政府が国有地を売り出し、デペロッパーがそこを開発し、庶民が物件を購入する。以前は「不動産価値は下がらない」という”神話“がまかり通り、一部の富裕層は複数の物件を所有した。それが”好循環“となり、確実に住宅価格は値上がりし、バブル化した。ただ、住宅価格はサラリーマンの年収の数十倍となり、一般庶民の手の届く額ではなくなった。

習近平主席は「住宅は投機の対象でなく、住むものだ」と怒り、この言葉を受けて政府は動いた。具体的には、住宅の多数物件所有を抑えるために銀行融資を制限する対応措置を取ったし、不動産所有税(日本の固定資産税)の導入なども考慮し始めた。だが、これが「羹に懲りて膾(なます)を吹く」の例えの如く過剰対応となってしまい、不動産業全体を委縮させた。そしてバブル崩壊とともに巨額負債の未償還問題が浮かび上がった。負債問題はいまだに底が見えない形なので、この業種の反転攻勢の可能性は小さい。それで「十五五」は「不動産業はもう成長エンジンではない」と決め付けたのだ。景気底上げのために不動産に頼るという考えはきっぱり捨てたようだ。

中国は現在、人口減少傾向にある。若者の人口が減っているうえ、結婚願望がなくなっている。女子に比べて男子の人口が多いので、男子は結婚する場合、女子側から「家があるか、自家用車があるか、彩礼(結納金)はいくら出すのか」と問われる。彩礼は今、一般サラリーマン家庭でも数十万元が相場と言われる。一人っ子の女子を育ててきた両親にすれば、子供を差し出す見返りに金を要求するのはある意味理にかなっているのかも知れないが、こんな高額では男子もおちおちと結婚を申し込むことはできない。結婚数が減れば、住宅の需要はなくなる。

都市が好景気であった時には、農村から人が都市に流れた。農民工の増加、第3次産業の発展によって農村と都市との垣根がなくなり、都市化率はかなり進んだとされる。ただ、中国では人は生まれた場所によって都市戸籍か、農村戸籍かに分かれており、これが現在でも厳然と存在する。このため、農村出身者が大金を手にして都会で居住しようとしても医療、社会保障、就学面でそれなりのハードルがあり、都市の集合住宅を購入するのはなかなか難しい。都市戸籍者への住宅供給が一渉りしたら、新たな需要の掘り起こしが必要となるが、流入農民が買えないのであれば、都市圏の集合住宅も売れないのではないか。

不動産業を景気牽引の担い手から外すのはいい。でも、それに代わる産業分野はあるのだろうか。中国当局はAI(人工頭脳)、IT(情報技術)の高度化に期待しているところ大だが、果たしてこれらに大きな雇用吸収力があるのか。製造業の中でも自動車産業のように大きな裾野の関連企業を持つセット産業でもないので、全体経済を引き上げる波及力はそれほどないように見受けられる。グリーン化はどうか。太陽光発電、風力発電装置の製造は中国ですでに飽和状態になっているため、欧米などへの輸出にかけているが、EUではこれら製品の「デフレ輸出」に拒否的だ。GDP3割を占める不動産業くらいの新しい産業分野が出てこない限り、厳しい時期が続くのではなかろうか。

<業界の今後の展開は>
中国の不動産企業は今、株式市場からの撤退を進めている。米系華文ニュースを見ると、食品をメインにしたコングロマリット国有企業である「中糧集団公司」傘下の不動産企業「大悦城地産(ジョイシティー・プロパティー)」は11月いっぱいで香港取引所での上場を止めることを宣言した。このほか23社ほどが香港市場や国内取引のA株市場からの撤退を余儀なくされた。このほか、7社が株式のプライベート化を進め、非公開企業となった。不動産業の低迷を受けて当局から取引停止を言い渡されたところもあるし、最早株式市場で資金調達する必要がないという企業側の事情による撤退もあろう。

一般庶民が金融機関から融資を受け住宅物件を購入しても、価格が高額過ぎて返済できないケースが増えている。多くの購入者は「不動産は値上がりするもの」との期待感から所得不相応な高額物件を契約したが、今はバブルがはじけて価格は下がる一方。それでも返済は容赦ないため、ローン支払いができなくなった購入者は物件を手放さざるを得なくなった。この結果、いずれの金融機関も差し押さえ物件を大量に抱えることになった。この中でも自己資金に乏しい地方の中小銀行は一刻も早く差し押さえ物件を販売し、資金回収を図ろうと画策した。

国内の財経専門メディアである「経済観察報」によれば、甘粛省の「蘭州農村商業銀行」はネット上のオークション・サイト「京東資産平台」に差し押さえ物件と見られる720件を載せたが、このうち200件が売れたという。京東資産平台とはEC大手の「京東集団」が主宰し、不動産、自動車、金融商品などさまざまなものを競りにかけるプラットフォーム。その平台に載せられた遼寧省瀋撫新区(撫順市)の中古住宅物件は平均初値20万元、中には8万元からスタートしたものもあり、東北地区とはいえ大都市近郊としてはかなりの安値スタートとなった。

同じ蘭州市ベースの「蘭州銀行」は2024年に京東平台に1130件、25年に1779件のオークション物件を掲載したという。ネット・オークション・サイトには地方銀行のみならず、全国ビッグ5の大手、農業銀行、建設銀行、交通銀行も売り物件を掲載しており、どこも資金回収には熱心のようだ。ただ、現在は不動産不況の真っただ中にあるため、高値落札は望めない。もともとバブル時代に高値で購入した人たちは、物件を差し出したとしても、それでとても購入費用をチャラにできるわけでない。依然、大きな借金が残るので、新たな問題の出発点でもある。

中国では土地が国有であり、住宅購入者の土地の使用権は最長70年に限られる。すなわち、高い金を出して住宅建物を買っても居住が保障されるだけで、やがて物件がぼろぼろになったら、原則そこを立ち退かなくてはならない。個人が子々孫々に継承できるような絶対的な財産ではない。という状況から、富裕層は海外に目を向けた。西側諸国の絶対的な価値を持つ不動産物件の購入に関心を持つようになったのだ。そこで、狙いをつけたのが一番身近な国である日本。高額であっても、都市部にあり、中長期的に価値が落ちないような日本の物件は魅力的だ。

今、東京にある3億円以上の高級マンションの主要な購入者は中国人だ。彼らはしばしば現金をトランクに詰め込み、即金で購入していると米紙「ニューヨーク・タイムズ」も報じている。このため、日本の不動産取り扱い業者にとって「中国の富裕層は上客」なのである。都心部の中央区、文京区、千代田区などは教育環境が整っているため、中国人富裕層はこれら地区のタワーマンションなどを購入する傾向があるという。産経新聞によれば、利便性に優れた中央区では、外国人に占める中国人の割合が5年前の約43%から約51%に増加しているという。

中国経済新聞によれば、中国からの投資マネーが中東の富豪国に大きく流れ込んでいる。アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビやドバイといった主要都市では、住宅市場が「量・価ともに上昇」する勢いを見せている。大手デベロッパー「アルダー・プロパティーズ」によれば、今年上半期の販売額はすでに前年通期を上回り、中国人顧客による購入件数は過去3年間で3倍に増加したという。同社のジョナサン・エメリー最高経営責任者(CEO)は最近中国で開かれた交流会で、「中国はすでに当社にとって(購入者探しの)潜在的な巨大市場だ」と語った。

ドバイ土地局のデータによると、2024年における中国人の不動産投資額は全体の8%を占め、国別順位で前年の9位から4位へと急浮上した。特に高級住宅市場では15%増と顕著な伸びを見せ、英国・インドに次ぐ第三の外国投資勢力となっている。これまで中国人投資家の主流は高層マンションだったが、近年は高級ヴィラやウォーターフロント物件など、より富裕層向けの高級コミュニティーへの関心が高まっているという。UAE政府は2019年に「ゴールデン・ビザ」制度を設け、日本円で4000万円程度の物件を購入すれば、長期滞在を認めるとしている。エメリーCEOは「高い賃貸利回りと安定した資産価値が中国投資家を引き付けている」と分析する。

こうした富裕層の海外移転を見て、中国の不動産大手企業は手をこまぬいているわけにはいかない。国内に建築需要がないのならば、富裕層の資金の赴く外国での事業展開を考えている。実は、一介のジャーナリストに過ぎない筆者のところにも、中国人友人を通じて国有企業が進出打診してきた。日本企業のバックアップでもいいから、仕事がしたいということのようだ。仲介は婉曲に断ったが、今後も不動産系、建築系企業はあらゆる手づるを使って海外進出の可能性をさぐるのではなかろうか。

 

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