第46回 アフガニスタンで苦戦する米国 直井謙二

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第46回 アフガニスタンで苦戦する米国

米国のオバマ大統領など欧米諸国が進めるアフガンニスタンでのテロとの戦いは苦戦を強いられている。艦船への給油活動をどうするのか、民間による支援活動は危険がないのかなど日本にとっても難しい問題だ。

1979年、モスクワ・オリンピック直前に旧ソ軍がアフガニスタンに侵攻し、親ソのナジブラ政権と7派に分かれたイスラム・ゲリラとの間で長い内戦に突入した。このため、多数の難民が隣国のパキスタンに流れ込み、ペシャワールに巨大な難民キャンプができた。

筆者は1987年に初めてペシャワールの難民キャップを訪れた。渇ききった地面に日干し煉瓦(れんが)を積んだだけの粗末な家々が並ぶ。屋根の上でしゃがみこんでいる老人がいた。見上げながら手を振ったが、無愛想な表情のままで応えてくれない。

村の中にある数軒の果物店や雑貨店がわずかに生活の臭いを感じさせる。村の一家を撮影したが、硬い表情の男性ばかりで生活観が出ない。(写真) そこで村長にキャンプの家の中の家族を取材したいと申し込んだ。最初はとんでもないと断られたが、何度も説得してようやく許可を得た。

カメラマンが準備を終え、室内に入った瞬間、泣き叫ぶ声が家の外にまで響いた。女性や子供がカメラにおびえたのだ。カメラマンは「短い時間だから大丈夫」と取材を続けたが、数分間の取材中、泣き叫ぶ声がやむことはなかった。村長が取材を渋った理由をいまさらながら理解し、ひたすら取材が終わるのを待った。

明治時代の初期に日本人が写真を撮られると魂を抜かれると嫌がったという話を思い出した。やっと取材を終えたカメラマンに内部はどうだったと聞くと、「とにかく早く済ませなくてはと焦り、よく見なかった。手当たりしだいカメラを回した。だが、トイレはないようだ」という。

ガイドになぜトイレがないのか聞くと、「貧しいせいもあるが、この地方は乾燥が激しく、屋上で用を足せば、小さい方はすぐ乾くし、大きい方もすぐ乾いて風が運んでくれる」とこともなげに答えた。屋根の上の老人が無愛想だった理由が理解できた。

環境も生活習慣も文化も大きく違う異国の地で支援活動を続けることは容易ではない。ましてや戦争に巻き込まれ、憎しみが募るアフガニスタン人に囲まれる中、物質文明に慣れきった欧米の兵士が戦闘を続けることは想像を絶する困難があるだろう。

20年前、旧ソ軍も撤退を余儀なくされた。


写真:一家総出のアフガン難民

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