東南アジアや中国で時々ニュースになるのは、欧米や日本など先進国のブランド品、最新のヒット商品の偽物が出回り、平気で売られていることだ。日本の人気アニメの主人公のコピーもある。さすがに先進国では、特許権などを侵害する偽ブランド品に対する消費者の見方は厳しく、市場に出回ることは少ないが、知財権の概念が広く行き渡っていない一部東南アジアや中国では、安さだけが売り物の偽ブランド品が横行することになる。
タイの首都バンコクにある歓楽街のパッポン通りは、夜ともなると、外国人観光客相手のホステス嬢がたくさんいるバーなどの飲食店とともに、小さな店や露天の土産物屋が店開きし、小さな通りは冷やかし組の観光客を含め、押し合いへし合いの状況となる。ここで売られている土産物にはもちろん、本物も少なくないが、欧州の高級腕時計やバッグ、洋服などが「超格安」の値段で売られているのを見ると、偽ブランド品ということがすぐ分かる。しかし、精巧につくられているためか、素人がその場で見極めるのは難しく、ついつい安さにつられて買ってしまうケースが多いようだ。
しかし、せっかくこうした商品を買っても、帰国した際に日本の空港の税関で見つかると、その場で没収となるので、結果的には高い買い物になってしまう。やはり、まがいもの品には手を出さないことが賢明だ。
夜のパッポン通りの怪しげなにぎわいはよく知られているので、日本から友人・知人の来客があると、時々連れていったものだが、バンコクにはここ以外にも、本物のブランド品を店頭で販売しながら、特定の常連客を相手に偽ブランド品を売っている一角もある。露天ではなく、ちゃんとした店を構えているので、そのような「裏の顔」があるとは信じられないが、偽ブランド品取引に詳しいタイ人助手のS記者に連れられてその現場を見たときは正直驚いた。
タイなどでも近年、偽ブランド品の販売に対する取り締まりが厳しくなり、従来のような野放し状態は改善されつつあるが、好奇心から手を出す観光客も少なくなく、警察と業者のイタチゴッコが続いているようだ。
昔、欧州に駐在していたとき、パリへの出張が何度かあり、家内から仕事を終えた後に、ブランド物のバッグを幾つか買ってくるよう頼まれ、その商品を扱っている店に直接出向いたことがある。当時はバブル時代で、お金に余裕があるように見える若い日本人女性が何人もバッグの品定めをしていた光景が思いだされるが、ブランド品が高価なのはやはりそれだけの手間がかかっているからだろう。ブランド品とまがいもの品…。それぞれをつくる人、それぞれを売り買いする人をみると、人間の性(さが)という言葉が浮かんでくる。