不動産不況が続いて大手企業は赤字体質から脱せず-トランプショックが追い打ちに 日暮高則

不動産不況が続いて大手企業は赤字体質から脱せず-トランプショックが追い打ちに
トランプ米大統領がすべての貿易相手国を対象にした追加関税を宣言したことによって、世界経済は春からから大混乱に陥った。最終的な狙いは、中国の経済覇権国化を阻止することにあるようだ。それを察知した中国当局も「売られたケンカは買わざるを得ない」といった感じで強硬対応する。米国からの輸入品に対して相応の関税を掛けるとともに、戦略物資であるレアアース(希土類)の輸出規制にも乗り出し、経済戦争をエスカレートさせている。だが、中国経済の実体を見れば、不動産バブルに端を発したデフレ不況から脱け出し、反転回復する気配はない。依然不動産債務の解消が重荷になっている。この業界を立て直すには最終的に開発商(デベロッパー)の全体債務把握が必要だが、それはいまだにできていないようだ。
<米中交渉はレアアース中心に>
コンピューターや電気自動車(EV)、スマートフォンが個人に行き渡るかなり前の1986年、中国は「高度技術研究発展計画(863計画)」を打ち出し、レアアース開発の必要性を盛り込んだ。そして天安門事件のあとの1992年、当時の最高指導者、鄧小平氏は再び経済の活性化に向け檄を飛ばすため、老体に鞭打って深圳、珠海などの経済特区に出向いた。そこで発したのが、かの有名な「南巡講話」である。ここで「中東には石油があるが、中国にはレアアースがある」と強調しており、石油に次ぐ世界の重要戦略物資を中国が握っていることを高らかに宣言したのである。
レアアースの埋蔵量の半分は中国国内にあり、現在の生産量に占める割合は7割になる。鄧氏の宣言通りにその後、高性能磁石や蛍光体の材料になる同物質の注目度はますます増していき、需要度もうなぎ上りとなった。日本はじめ先進国は1980年代から、半導体との関連でレアアースの重要性を理解していたが、サプライ関係が切られ、外交交渉のコマとして使われるとの認識は十分ではなかったのではないか。中国は実際に、その戦略物資を外交交渉の場で使い始めた。2010年、海上保安庁は尖閣諸島沖で巡視船に体当たりした漁船の船長を拘束したが、中国側はその釈放を求め、レアアースの輸出停止の脅しをかけてきた。この時点の中国の世界的なシェアは9割であった。
米国も、経済安全保障の観点から、国内生産に努めてきたが、製錬技術は圧倒的に中国が上。そのために、産出鉱物を中国に持ち込まざるを得ない状態にある。今回、米側が高関税措置を打ち出したのに対し、中国側も高関税で応じたが、加えて米側の急所を突くように4月からレアアースの差し止めを始めたのはごく自然の流れであった。この問題では、やはり中国が有利な立場にある。差し止められたのは自動車のモーターに使われる磁石の補助材料になる7種類で、これらが中国から入らないことで米国側は大きなダメージを受け、フォード社などは工場の操業停止に追い込まれるほどだった。
トランプ大統領は、関税の掛け合いでは居丈高だが、レアアース問題では強気な姿勢は影を潜めている。自動車業界などから強い圧力を受けたためと見られる。大統領は習近平国家主席に電話をかけ、ハイレベル閣僚による直接交渉を呼び掛けた。その結果、米中貿易交渉が今年5月にスイスで行われたのに続いて、6月10日にはロンドンで第2ラウンドが持たれたが、米側の方にむしろ焦りがあったのではないか。というのは、中国代表団の大物は何立峰副総理だけだが、米側はルトニック商務長官のほか、ベッセント財務長官、グリア通商代表も加わった大型交渉団となったからだ。
ロンドン交渉ではレアアースのほか、高関税、中国人留学性の米国ビザ取り消しなど広範囲の問題が話し合われたと見られる。交渉は4日間に及んだが、最終的な決着には至らなかった。トランプ大統領はレアアース問題で改めて米中のサプライチェーンの深さを認識したようだ。レアアースはもともと米国国内でも調達可能であり、今回の一件で増産を図るほか、オーストラリアと協議して同国での開発も目指しているようだ。しかし、これらで需要量を満たせないとなれば、当面は、海外に頼らざるを得ない。中国はその後、米企業の個別案件には応じているが、両国間では関税問題以上にレアアースが焦点になってきた。
<デフレ傾向続く>
米中貿易は近年、ずっと中国の輸出超過である。ところが、トランプ高関税からレアアース規制問題とエスカレートしたため、両国間の貿易額は減少しており、出超の中国側はとりわけ痛手となった。同国製造業にとっても、まさに「雪上加霜(泣きっ面にハチ)」の状態だ。税関総署が発表した5月の貿易統計によれば、米国への輸出額は前年同期比で35%の減。4月の前年比21%減からさらに落ち込んで、ここ5年では最大のマイナスだ。電気機器は前年同期比で32%の減だった。この品目に限らず、家具や玩具、寝具、日用品などの対米輸出が多い品目は軒並み減少した。
対外総輸出額はドルベースで4.8%増であったことを鑑みると、対米輸出の落ち込みが中国製造業のボデーブローになっているようだ。スマホなどの電気機器は、トランプ大統領就任早々に相互関税の掛け合い発表があったことから、3月は駆け込み需要があり、大幅な伸びを示した。だが、その分、4月は一気に下落に転じた。家具、寝具などは27%の減、玩具も25%の減であった。こうした品目の輸出減は、米国民がこれまでずっと中国製品に頼ってきたことを物語っている。
米紙「ニューヨーク・タイムズ」が面白い記事を掲載した。関税戦で改めて分かったことは、米国に輸入される日用品では中国製品が圧倒的に多いという。ベビーカーの97%、人工植物、雨傘、書棚、マホービンの96%、花火の95%、子供向け絵本の93%、携帯用照明器具、髪すき用のクシの91%、旅行用スーツケースの90%が中国からのもので、米国民は現時点で想像以上に中国製品の”恩恵”を受けている状況だ。現時点で、米国がこれらの製品を国内生産で賄うのは難しい。中国以外の国でこれらの製品を埋め合わすことができないのであれば、当面トランプ関税によって米国の庶民は高い日用品を買わざるを得なくなる。
一方、中国の米国からの輸入額を見ると、綿花が87%の減、石炭、石油、液化天然ガスの資源関連商品が2割弱の減となった。中国は今、ロシア、イランなどから安価な石油購入が可能。もともとエネルギ―商品は中国の対米輸出超過を解消するために買わされていたものであり、輸出量が減ればその分購入量が減るのも自然の成り行きだ。こうした海外需要減を反映して国内では、商品の値下げ競争が始まった。大手メーカー「BYD」が先導する形で始まった電気自動車(EV)車の値引きはテスラなど外国企業の車も含めて追随し、小型EVブランドの「海鴎」は2割の値引きが実現している。
消費者の買い控えによって、メーカー側は値下げをし、さらに生産調整を行う、典型的なデフレスパイラルである。この結果、中国製造業の状況は依然芳しくない。国家統計局の発表では、5月の工業生産額は前年同期比5.8%の増にとどまり、4月の前年比6.1%増からさらにマイナス傾向を示している。セメントの生産量は前年同月比で8.1%減、粗鋼生産は同6.9%の減だった。セメント、粗鋼は高関税というより不動産不況が続いている影響だが、自動車、電機製品の生産落ち込みも大きい。対米関連で見れば、スマートフォンの生産量は1.7%の減だった。
デフレスパイラルで中国勤労者の所得も下がった。消費も慎重になっており、ぜいたく志向はなくなっている。例えば、中国人ハイソサエティーに人気が高いコーヒーチェーン「スターバックス」。ここで茶を飲むのはある種のステータスで、上海のリノベーションスポット「新天地」や、目抜き通り南京西路にできた面積最大規模の「リザーブ・ロースタリー」の店舗は有名だ。最近、スターバックスは、主力商品のコーヒー価格はそのままながら、中国茶系飲料の値段だけを15元前後から5元前後に値下げした。茶系飲料は地元民への“客寄せ”メニューであり、この商品値下げによって店内の閑散感を見せない狙いがあるのだろう。
日経新聞の報道では、中国国内で低価格の即席麺が良く売れるようになったという。バブルの時代、レストランで大量の料理を注文し、食べ残しをすることが当たり前だった中国で、即席麺が売れるとは驚きだ。確かに、カップ麺は軽便に食べられ、小腹の減った人にはちょうどいい食品だから、事務所、工場などにカップ麺の自動販売機が置かれているのであろうか。香港の日清食品公司によれば、今年第1四半期の売上高は前年同期比で11%増の10億香港ドルであったという。同社は今後、「製造工場が多い内陸部の地域での新市場開拓に努める」と話している。隠れた発展産業分野である。
<ファンダメンタルズ>
経済ファンダメンタルズを見ると、中国のデフレ傾向は依然続いている。国家統計局の発表では、今年4月、5月の消費者物価指数(CPI)は前年同期比でそれぞれ0.1%下落した。年初1月まではコンマ以下の数字ながら上昇傾向を示してきたが、2月に0.7%減、3月に0.1%減で、2-5月の4カ月連続でマイナスを示した。一方、生産者物価指数(PPI)は4月に前年同期比2・7%減、5月に同3.3%の減で、32カ月連続のマイナスとなった。3月は同2.5%の減であり、下落幅が一段と大きくなっている。
当局は庶民の消費マインドを上げるために、昨年夏からEV、電気製品の買い替えに補助金を出す“刺激策”を取ってきたが、その効果も一渡りした感じだ。加えて、一般庶民はトランプ米第2期政権の発足による米中貿易の悪化、景気落ち込みを見越して2月以降、財布のひもを固く締め、極端に買い控えをするようになった。また日用品、毎日の食事についても、前述のように、不況感が浸透し、より安価なものを求める傾向が強まっている。
企業担当者の景況感を反映した数字として知られる購買担当者景気指数(PMI)は、国家統計局発表によれば、4月が49.0、5月は49.5であり、2カ月連続で50を下回った。景況をよく見るか、悪く見るかのPMIの分岐点は50。連続50以下は、企業担当者が依然先行きに不安を感じていることを示している。米国の格付け会社「スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)グローバル」が出した中国のPMIでも、4月の50.4から5月は48.3と落ち込んでいる。50を下回ったのは2024年9月以来のことだという。
全体の貿易統計を見ても、5月の新規輸出受注は2カ月連続で減少、2023年7月以来の低水準となった。輸出に限らず全体の新規受注も22年以来の低水準となり、生産量は23年10月以来、減少に転じた。上海、深圳の株式市場に上場する約5200社が4月末までに決算発表したのを受けて日経新聞がデータの集計を行ったところ、2024年12月期の純利益は前年同期比13%の減であったという。不動産企業の赤字が膨らんだのに加えて、外食産業なども低迷し、2000年以降で初めて2年連続の減益となった。全般的なデフレ傾向がついに企業の減益継続化という形で示された。
亡くなった李克強前総理は、国家統計局の数字をあまり信用せず、「中国の景気指標は電力使用量、鉄道貨物の輸送量、中長期の銀行貸出量で見るべきだ」と主張していたが、中でもとりわけ、企業が金融機関から借り入れる資金の動向を景気動向観測上で重要視していたとされる。中国人民銀行(中央銀行)が6月14日発表したところによれば、今年5月、中国金融機関の人民元建て新規貸し出し額は6200億元、前年同期比34.8%の減だった。「8500億元程度になるのではないか」という市場の期待が裏切られた。
もっとも4月の新規貸し出し額は2800億元であり、これよりは大幅に増えている。米ブルンバーグ通信社のエコノミスト、デービット・キュー氏は「4月は本来、前年比で少なくなっても7000億元程度はあるだろう」と予測していたが、それが大幅減になって驚いている。この資金需要の悪さについて、同氏は「不動産不況による長引く内需不足に加えて、米国の関税アップ政策で対米貿易が悪化し、景気への懸念が一段と強まったことが原因だ」としている。このため、人民銀行も貸し出し金利を引き下げ、景気の下支えをせざるを得なくなった。5月の最優遇貸出金利(ローンプライムレート)を0.1%引き下げ、期間一年もので3.0%、5年もので3.5%とした。住宅ローン金利もそれに追随させている。
資金需要の悪化から、2024年には全国で200件近い中小金融機関が統廃合、解散に追い込まれたが、今年に入ってからもこの趨勢は変わらない。例えば、広東省の順徳農商銀行が深圳の龍華新華村鎮銀行など複数の小金融機関の併合を図っているほか、支店を統廃合し、効率化を進めている。江蘇銀行は小規模の丹陽蘇銀行を傘下に収め、遼寧省瀋陽市を本拠とする盛京銀行も旗下の4つの村鎮銀行を吸収した。中国金融監督管理総局のデータによれば、2024年中に農村商業銀行44行、農村信用社41件、村鎮銀行98行が統廃合などにより消滅したという。今年3月末時点で、貯蓄型保険がある金融機関は3713社残っているものの、昨年末からのわずか3カ月間で48社がつぶれたという。
雇用状況を見ると、今年5月の全体失業率は5.0%で、4月の5.1%より若干改善した。ただ、若者の就職難は依然深刻であり、国家統計局によれば、3月での16-24歳失業率は1年前より1・2ポイントアップの16.5%だ。今年5月の同年代の数字については14.9%と発表されている。今年、昨年より43万人多い約1222万人が高等教育機関を卒業する見込みである。彼らが然るべき就職先を求めるとしたら、若年層失業率は一段と悪化する。
<不動産不況続く>
中国経済にデフレ状況を招いた元凶は不動産だが、その後この業界はどうなっているのか。恒大集団、碧桂園、万科などの大型開発商(デベロッパー)が依然倒産寸前の状態から抜け出せないところを見ると、全体の状況は変わっていないように見受けられる。今年3月、全人代の際の記者会見で、国務院住宅・都市農村建設部の倪虹部長は「2024年第4四半期の新築商品住宅の面積、金額ともプラスであった。今年に入っても不動産市場は下げ止まって、安定した状態を保っている」と胸を張った。
中房網サイトが「麟評居住大数据研究院」のデータとして明らかにしたところによると、2月時点で、中国100の重点都市の中古住宅価格は1平方メートル当たり1万4094元と前年同期比で5.15%のダウンだが、前月比で見ると0.15%の下落にとどまっている。同月の一線級都市(北京、上海、深圳、広州)だけでは、1日平方メートル当たり5万5453元で前年同月比3.66%減だが、前月比0.24%の減。地方省都クラスの2線級都市でも、それぞれ6.06%、0.11%のダウンだった。これらを見る限り、前年比では大きな下落を示しているが、前月比で見るとそれほどのマイナスになっておらず、倪虹部長の言うように「下げ止まっている」のかも知れない。
昨年9月に政府は、住宅ローン金利の引き下げ、頭金比率の減額などの不動産市場のテコ入れ策を実施した。この結果、麟評の報告書によれば、その後4カ月連続して下落幅は圧縮されていったという。今年に入っても「価格より取引量重視」の方針が取られたことで、中古市場では取引が活発化したようだ。ただ、最早不動産が投機の対象どころか資産維持の対象にならないことは間違いない。
財政・経済方面の情報を発信して多くのファンを持つサイトの運営者で、投資家でもある北哥氏も「ニラ(韭菜、一般庶民のこと)がまともな金で住宅を買っても利益を求めることはできない。利子どころか投資金も失うかも知れない。能力がないニラであるならば、住宅市場に手を出しても寂しい思いをするだけだ」と素っ気ない意見を吐いている。確かに不動産の現状は「下げ止まっている」かも知れないが、トレンドとして低下傾向にあることは変わりない。この状況では、安定的な投資物件にはならない。
こうした不動産不況で、地方政府による開発用の土地購入も激減した。地方政府の傘下にあり、一般庶民から高利で金を集めている「融資平台」が今年5月23日までに土地購入に投じた金は約220億元で、ピーク時の21年の同時期に比べて6割減であったという。これは8年ぶりの低水準だ。融資平台は大型デベロッパーの開発に乗っかる形で投資するケースが多く、デベロッパーが動かない限り、投資チャンスは少ない。第一、これまでの不動産開発投資で債務が膨らんでおり、今年6月時点で累積債務は約7兆元に上っているという。大型債務を抱えている中でのさらなる土地取得、不動産投資は無謀以外の何物でもない。
<恒大集団はどうなった?>
不動産不況の中で一番注目されてきたのは恒大集団(エバーグランデ)であろう。2021年に格付け会社から一部債務不履行(デフォルト)と認定され、その後に同社の事業は当局の管理下に置かれた。創業者の許家印会長は「違法行為に関わった」として23年9月に拘束され、事実上今でも”軟禁状態“に置かれている。一部の債権者が2022年夏に香港の裁判所に対し同社の清算を申し立てた。多くは、同社の財産がうやむやにされないうちに早々に投入資金の回収を図りたいとの思いがあったのであろう。そして審理が行われ、今年1月までに、裁判所は清算を認める判断を示した。
大口の債権者グループはどちらかと言えば恒大の倒産回避を目指し、企業維持を支持する立場だった。これは、政府の要請を受けた動きとも見られるが、どこかに恒大立て直しへの期待があったからに他ならない。だが、昨年末、一転して清算を支持する姿勢に転換した。再生はないと見切りをつけたのであろう。これを受けて裁判所の清算命令が出された。一国二制度とはいえ、香港の司法も大陸の支配を受けているという観点に立てば、中央政府も恒大を見放したという見方もできる。恒大の整理が始まっているもようだ。
ただ、問題なのは恒大の海外資産をどう見極めるかという点。2023年、許家印会長が拘束された直後に、香港に居住していた離婚妻の丁玉梅さんはいち早く海外に逃亡した。丁さんは香港、英国、カナダなど世界各地に豪華な住宅を保持している。香港の住宅はすでに接収されたが、英国、カナダ物件は丁さんや息子の名義に移されていると見られるので、差し押さえの対象にはなりにくい。ともあれ、恒大集団と許家印会長の資産を完全把握するためには、中国当局は資産のある関係国の協力を仰がなくてはならない。これは複雑で膨大な作業となる。
ちなみに、ネットニュース「新浪財経」によれば、2024年の恒大物業の営業収入は127億5700万元で、前年比で2.2%の増であったという。当局の監視下に置かれても依然事業は、規模を細めながら継続されているもようだ。
<その他大手企業の状況>
恒大集団と並んで外債未償還で有名になった開発商大手は「碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールデングス)」だ。同社が発表した2024年末の連結決算は最終損益が328億元の赤字で、前年の178億元から赤字額がさらに膨らんだ。売上額は2527億元(房地産報によれば2528億元)で前期比37%の減。この2年前の2022年に同社の販売契約数はナンバーワンであったが、その後の信用不安から販売不振となった。
「中国房地産報」は5月6日、2024年の大手企業営業収入額を伝えた。それによれば、「万科企業(チャイナ・バンケ)」は3432億元で、業界トップとなった。ただし、前年比で26.3%の減。2位の『保利発展控股』は3117億元で同10.2%の減。3位の「華潤置地」は2788億元で同11.0%の増。このあとに「碧桂園」の2528億元、「緑地控股」の2409億元と続く。剛腕王健林会長の下、全中国の都市で「万達広場」という大型ショッピングモールを造ってきた不動産開発商「大連万達集団(ワンダ・グループ)」はどうか。今、同社は48カ所の万達広場を香港の投資会社などに売却する計画を進めているという。
もともとワンダ・グループは建設物件の利権をそのまま持たず、地元企業に売却してしまい、運営だけを受け持つ形を取ってきており、万達広場もすでに4割が外部企業の所有となっているとされる。それを今年中に全部整理してしまおうということで、中国メディア「澎湃」によれば、売却収入は500億元に上るという。巨大債務があることから、同社は、早晩資産の差し押さえが来ると予測し、王健林会長は早々に、資産の一部を息子の王思聡氏に名義換えをしているという。だが、北京市の人民法院は巧妙な資産隠しと見て、王思聡氏の資産を凍結し、調査に入っているもようだ。
大手企業の多くは不動産不況で赤字となり、経営は四苦八苦の状態にある。中国房地産報によれば、国内トップ50の不動産企業は
全体で2803億6500万元の赤字となっているという。それでも、大手企業の幹部は「夢をもう一度」とばかりに再びバブル景気到来を期待し、将来の「東山再起」を目指しているようだ。しっかりと個人資産の確保に走っているのはその証のように思える。だが、企業が存続している限り、債務の算定は難しい。債務が確定しない限り、当局による資金投入は見通せない。不動産業が再び栄華の時代を迎える可能性は限りなく低く、デベロッパーの夢はかなえそうにない。