チャットGPT対ディープシーク、米中の最先端技術競争はITから生成AIのジャンルに
トランプ大統領の再登場により、米中両国が互いに関税をかけ合う貿易戦争が再燃した。最初に高関税を仕掛けたのは米側だが、当然中国側も報復に出ており、今後、モノのやり取りが減少していくことは必至だ。米中は今、IT(情報技術)からさらにAI(人工知能)をめぐって激しい鍔迫り合いを展開している。バイデン前政権下でも、中国企業の動画投稿アプリ「TikTok」の経営権をめぐる問題が起きたが、トランプ政権下ではさらに生成AI、大規模言語モデルの争いが始まった。米国の「チャットGPT」と中国側が独自に開発したと言われる「ディープシーク(深度求索)」の対立である。中国ではデフレ圧力によって経済の低迷が続いているが、そんな中でも、AI先端技術の発展ぶりはすさまじい。このため、高関税障壁で米側の究極の狙いは、一般製品の輸入抑制でなく、実は先端技術の流出、移転防止ではないかとの見方もある。米中の先端技術をめぐる争いはどうなっていくのか。
<TikTok などめぐる米中の争い>
米中はまずITツールであるパソコン、スマホのアプリで火花を散らせた。米側は、バイデン政権末期に中国系の動画投稿アプリ「TikTok 」に対し監視を強めた。TikTok は音楽、スポーツ、趣味などあらゆるジャンルの動画を短めにしてスマホなどに提供する人気アプリで、全世界で35億件、米国で2億件以上のダウンロードがあると言われる。中国企業の「字節跳動(バイトダンス=BD)」が運営しており、同社が米国子会社の支配を続ける限り、TikTok アプリを通して個人データが抜かれたり、意図的に世論操作に利用されたりする危険性を孕む。このため、バイデン氏は情報管理上の安全問題だとして、2024年4月24日、バイトダンス社に対し、米国内で営業を続けるならTikTokの米国内子会社の経営権を米側企業に移譲するよう求める法案に署名した。
「TikTok禁止法」とも呼ばれるこの法律は、TikTokは最短9カ月、最長でも12カ月以内に事業をアメリカ企業に売却することが義務付けられ、売却しない場合は米国内でアプリ配信ができなくなるという内容だ。規制の動きを受けて、米国内の同アプリ利用者は、近い将来動画などの日常的な楽しみを奪われることを恐れ、代替品を求め始めた。“TikTok 難民”などと呼ばれた彼らはやがて、同じ中国系のSNS、動画アプリ「小紅書(Red)」に移っていった。BBCによれば、今年1月から米国内で使用されているアップル社製スマホの中で、小紅書のダウンロードが一番多かったという。早い話、中国系である限り、危険性は変わらないのであって、米政府にすれば、一難去ってまた一難といった感じだ。
米国内の動画アプリ利用者は若者が多く、個人情報リスクに関してそれほど心配していないように見受けられる。小紅書は投稿者の9割以上が中国発で、中国当局の監視をより強く受けるアプリだ。米国民の小紅書アカウントも中国人利用者と同様に扱われ、記述内容次第で警告文が発せられたり、添付データが削除されたり、アカウント自体が永久削除されたりすることもあるという。実際、オーストラリア人が小紅書のアカウントに「中国の友人たちよ、君らは習近平や習近平思想をどう思うか」と書いたところ、画面上に「貴兄の記述はアプリの規定に違反する」との文言が出て、削除されたという。しっかりと内容の検閲が行われている。それでも、海外アカウントは増え続けているようだ。
米国がTikTok規制で圧力を掛ける一方で、中国当局ももっと厳しく国内のインターネット規制に動いている。昨年来、国境を越えてネットにアクセスできるVPNサービスへの監視を強めており、警察がクライアントを追及把握し、直に尋問に乗り出していることも明らかになった。英国紙「ガーディアン」によれば、「段」という名の中国のある大学生が昨年7月、VPNを使って米国発のチャットサービス「ディスコード(Discord)」にアクセス、政治討論番組に参加していたら、早速警察から呼び出しがかかった。この大学生は、特に政治的な意見を開陳したかどうかについて厳しく追及されたという。
国際的な人権監視団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」の王松蓮・中国部副主任は「VPNアクセス者が過去にこれほど追及されたことはなかった。中国当局のネット監視態勢は一段と厳しくなっている。著名な論客だけでなく、一般のネットユーザーも監視対象になっている」と語った。中国情勢に詳しい英国の弁護士によれば、中国では毎年ネットの「粛清運動」を展開しており、2024年はその活動が一段と厳しくなったもようだ。ネットユーザーの言論内容ばかりでなく、アクセスする国外団体との関係性についても追及されたという。中国当局は、国内の人間が海外政治勢力の影響を受けることを極端に嫌っているのだ。
米バイトダンス社は、TikTok禁止法が施行される1月18日に「米国内のサービスは一時的に利用できなくなる」と宣言した。対中強硬派のトランプ政権がスタートする2日前であり、先手を打った形である。だが驚くことに、トランプ大統領は就任後、「TikTokサービスは禁止法案施行後75日間、その利用を認める」と猶予期間を設ける大統領令を出した。「この間に米国側が50%出資する合弁会社にして欲しい」との意向も併せて示された。トランプ氏はこの措置を取った理由として「私はTikTokが好きだから」と話している。実に個人的な理由を挙げているのが彼らしい。ただ、「米国内のビジネスを中国に渡したくない。私の承認なしではTikTokは無価値で、廃業あるのみ」との過激な発言もしている。実質的にはバイトダンス社にデッドラインを設けて“最後通牒”を突きつけ、合弁化への決定を促したものであろう
<AIの進化と影響>
半導体の高度化に伴ってAI技術が進み、偽動画が多く作られるようになった。最近問題になっているのは、各国の指導者、世界的に著名な女性政治家を貶めるようなディープフェイク画像が数多く出現していることだ。2023年6月に、ロシアのテレビチャンネルとラジオ局がハッキングされ、プーチン大統領のメッセージに見せかけた虚偽のスピーチ動画と音声が流された。ウクライナとの国境地域に「戒厳令を敷く」という内容だったという。これ以前には、ウクライナのゼレンスキー大統領が国民にロシアへの降伏を呼び掛ける偽動画が拡散されたこともあった。ロシア、ウクライナ両国が情報戦、攪乱戦を展開する中で、AIの利用が激しさを増している。
女性指導者、政治家は色情系サイト上にフェイク動画が流され、迷惑している。米国の偽情報研究団体「ASP」によると、色情系サイトで3万5000件を超す著名人のフェイク動画が見つかったが、この中で米国女性議員の6人に1人が被害に遭い、女性国会議員も25人が含まれているという。ASP事務局長のニーナ・ジャンコビッツ氏は「こうした動画は女性の政治的な立場を弱め、指導力に疑いを抱かせるという二次被害が生じている」と憂慮。「このため、被害に遭った人の公開はせず、ひそかに当人に連絡、注意喚起している」と語っている。
英国の「チャンネル・フォー」の調査によれば、同国関係では、労働党政権のアンゲラ・レイナー副首相ら30人以上の女性政治家の色情動画が作られている。このうち、12人の議員は服を着ていない姿だという。美人の誉れ高いイタリアのメローニ首相もやはり標的にされ、顔が合成されたポルノ動画が作られる被害に遭った。右派強硬派である同首相はこれに対し、「女性への暴力と同じだ」と憤慨、猛烈に犯人捜しを行い、動画製作者2人に10万ユーロの損害賠償を請求している。こうした事例から分かるのは、偽AI動画が単に好事家の遊びの範疇にとどまるのでなく、政治、経済の多分野で競争相手を貶め、自らを有利にする“有効”なツールになっていることだ。このため、各国がAIにこぞって関心を持ち、特に情報の世界で覇権を握りたい米国、中国が盛んに開発を進めているのが当然であろう。
AIの発展が人間の労働環境に影響を及ぼすことは避けられない。それで、どれほどの影響が出るかについてNGO国際機関である「世界経済フォーラム(WEF)」が調査し、今年1月、報告書を出した。それによれば、AIによって諸作業の自動化が進むと41%の雇用主は、人員削減を図るだろうと見通している。また、調査対象企業の77%は、今年から2030年にかけて従業員をAI環境に馴染ませるため、再教育や技能習得を図っていくことになるとも指摘している。WEFは今年開いたダボス会議でも「AIと再生エネルギーの進歩が労働市場の構成を大きく変えていく。専門職、技術職の需要が高まる半面、一般職その他の人員は不必要になる」とも予測している。
一方、先進諸国や中国などでは少子化が進み、近い将来総労働人口の減少を招くことは必至だ。そのために、AIの導入で減少労働力の代替をしていくのは必然という見方もある。いずれにしても、AIの登場は、かつてオフィスに電話機、パソコンが導入された時以上に、ビジネス、政治・経済のさまざまな現場でドラスチックな変化をもたらすことは間違いない。メリットがある一方で、前述のようにAI動画は真実のものと見分けにくくなっているため、悪用される恐れがあり、デメリットも大きい。AIを制御するのはやはり人間なのだから、最終的には人間の良心に頼るしかないのであろうか。
<ディープシークとは何?>
今、米中間の争いは対話型生成AIのジャンルで顕著になってきた。最も喫緊な対立の構図は「チャットGPT」対「ディープシーク(深度求索)」である。チャットGPTは米国の非営利研究所「オープンAI」が開発したモデルであり、このジャンルで先発していたが、中国も負けずにディープシークという大規模言語モデル(LLM)を出してきた。開発したのは”天才技術者“と言われる梁文鋒氏という男で、2023年に起業した。梁文鋒氏は1985年、広東省の最西部、湛江市の生まれ。父親は小学校教師という。2002年、17歳で名門浙江大学の電子情報システム学科に入り、2010年に修士で卒業している。その後、金融の世界に身を投じ、大学の仲間、徐進氏とともに「杭州雅克比投資管理公司」というヘッジファンド会社を設立、さらに「杭州幻方科技公司」というAI開発の企業を起こした。
2017年、梁文鋒氏らはAI発展の可能性を信じて集めたファンドをすべてAI開発に集中する企業戦略を打ち出した。理科系出身の彼らは金融業にとどまらず、もともとそういう狙いがあったようだ。2019年に「蛍火1号」と名付けたAIスーパーコンピューターのトレーニング・プラットフォームを自主開発し、2020年には2億元を投資して、1100本のGPUをそれに搭載した。GPUとはGraphics Processing Unitのことで、画像描写に必要な計算処理を行うための半導体チップだ。杭州幻方科技公司は2021年、さらに10億元を投資して精度の高い「蛍火2号」を製造した。これを契機に同社の資産管理規模は1000億元を超えたとされる。
梁文鋒氏らは2023年に「杭州深度求索人工知能基礎技術研究公司(ディープシーク)」を設立、AGI(人工汎用知能)の世界に入った。AGIとはArtificial General Intelligenceの略で、人間と同じように、いや、ある場合は人間の知恵を超えるような知的タスクをこなせる能力を持つことである。ディープシーク社はそうしたAGI を2024年5月に「V2」モデル、12月には「V3」モデルと銘打って世に出した。そして今年1月20日、同社はさらに一歩進めた「R1」モデルを米国トランプ大統領の就任式に合わせるように発表した。このモデルは米国のチャットGPTの機能に匹敵するものだと言われる。中国は、この開発を国家の誇りと強調したかったと見られ、発表会の席には李強総理も同席した。
<チャットGPT対ディープシーク>
一般に、中国で先端ビジネスを展開する起業者や先端技術の開発者は,「海亀」と言われる海外、特に米国留学、研究からの帰国者である場合がほとんど。つまり、海亀組は少なからず、滞在先国の知識を持ち帰っているのだが、梁文鋒氏は一度も留学経験がない。それなのに、チャットGPTの仕組みを熟知し、それを上回るような機器を作り出したことは驚異だ。梁文鋒氏は記者インタビューの中で、「中国は過去30年、IT化の波の中でイノベーションに献身するよりもお金儲けに走ってきた」と技術をビジネスに結び付ける金儲け主義を批判。「中国はいつまでも他者の功績に便乗するのでなく、経済成長に伴ってイノベーションに貢献する側に回らなくてはならない」と抱負を語った。この発言は、中国がいつまでも米国の後塵を拝するのでなく先頭に立つべきだし、すでに立っているという矜持の表れでもある。
「R1」モデルはオープンソース、公開型であり、一般ユーザーは1月20日から無料でダウンロードできるようになった。梁氏の説明では、型落ち半導体だけで作り上げたと主張、米国の先端半導体メーカー企業「エヌビディア」の製品を一切使っていないと胸を張った。これは、政府が後ろ盾となって膨大な資金と先端半導体が投入された米国のチャットGPTへの対抗心をむき出しにした発言でもあろう。同時に、米国の先行モデルを凌駕し、後発でもこの市場で相当な位置を占められるのだとの自信をのぞかせた。だが、米国サイドでは、ディープシークの「R1」にはエヌビディアの高性能GPUが使われているとの疑いを持っている。それはシンガポール経由で入手されたものだとの見方である。つまり、部品を含めたすべてが独自で開発されたという説を否定しており、現在もこのうわさは消えていない。
無料のディープシーク「R1」モデルが世に出たことで、相対的にチャットGPTの市場価値が下落した。チャットGPT への最先端半導体提供が明らかになっているエヌビディアの株価は一時17%も下落し、 時価総額にして約5900億ドルが吹き飛ぶ事態となった。これに対し、米国サイドはショックを受けつつも、反撃に出ている。エヌビディアの高性能GPU“使用説”に加えて、ディープシークに蓄積された知識データ、情報は、チャットGPTやメタ社の生成AI「LLaMA(ラマ)」から盗用されたものではないかとの疑問も提示されたのだ。つまり基礎情報のパクリ疑惑である。もちろん、これに対し、中国側から明確な反応はないが、専門家に言わせると、「既存機器をベースにすることはよくあることで、問題ない」とのことである。
米側はこのほか、ディープシークによる個人情報の収集に懸念を表明している。ディープシークのサーバーは中国にあるため、同社のアプリをダウンロードすると、「国家情報法」によって個人情報がすべて中国当局に筒抜けになり、収集蓄積される恐れがあるという。したがって、西側諸国がディープシークで高度な機密事項を取り扱うことは難しい。さらに、従来から中国の検索サイトなどでも言われていることだが、国家の体制や指導者を批判するような“微妙な”質問については回答しない。「習近平体制について聞きたい」とか「天安門事件とは何か」などと聞いても沈黙するだけ。当局によって一定の検閲が行われているのだ。このため、西側諸国のユーザーにとってはいかに無料であろうと、使い勝手はすこぶる悪い。
SNSのTikTokや小紅書でも個人情報の抜き取りがあるように、AIアプリでもその危険性を免れ得ない。すでに台湾、オーストラリアでは政府がサービス提供を止めており、イタリア、韓国はアクセスに制限を設けている。日本政府も2月6日、ディープシークで機密情報を取り扱わないよう各省庁に注意喚起した。一般ユーザーは危険性を前提とした上での利用となるが、市場分析会社「センサー・タワー」によれば、英米両国では、ディープシークのリリース以来、1月末までに300万ダウンロードを記録したという。米国民のTikTok難民が小紅書に大量に流れたケースを見るまでもなく、一般庶民は無料である中国のアプリに魅力を感じ、それほど情報漏洩を恐れていないように見受けられる。
<米中のAI覇権争い>
米国のバイデン前政権は退任1週間前の1月13日、AI向け先端半導体についての輸出規制見直し案を発表した。主な内容は、中国、東南アジア諸国(ASEAN)向け半導体輸出を管理するため、輸出数量に制限を設けることで、これはトランプ政権でも引き継がれている。米国は先端半導体の輸出先として品質基準によって3つの国家群に分けている。それは、日本、EUなどの同盟国向けの「グループ1」、ASEAN、中東諸国向けの「グループ2」、さらに中国、ロシア、北朝鮮の潜在敵対国向けの「グループ3」という形だ。米政府はグループ2から迂回ルートで先端製品がグループ3へ流れることを恐れている。かねてより、先端製品がシンガポールから中国へ迂回輸出されているとの認識を持っており、ASEANへの監視を特に厳しくしているようだ。
米当局が監視しているのは、生成AI、次世代の大規模言語モデル(LLM)向けに設計された最先端のGPUである。エヌビディアの主力モデル「H100」などが規制対象となる。米国はとりわけAI技術の流用をものすごく恐れている。それは、前述したように中国のディープシーク「R1」にすでにエヌビディア製品が使われているのではないかとの疑念があるためだ。生成AI技術で中国が米国にキャッチアップしてきたと認識すればするほど、今後先端半導体の管理は厳しくなっていくであろう。
対話型生成AIの次に米中対立が起きるのはロボットの分野と言われる。それも、工場の生産ライン上にある産業用ロボットでなく、人間の恰好をしたロボットだ。エヌビディアとカーネギーメロン大学が共同で「ASAP」というAI人型ロボットを開発しているが、かなり人間に近い動きをする。一方、中国企業の「宇樹(ユニツリー)」も昨年5月、「G1」というAI人型ロボットが実験段階に入っていることを明らかにした。検索サイト「百度」を見ると、今年1月、「H1」という改良型も発表された。すでにネット通販で65万元の価格で売り出され、完売しているという。これらロボットに 生成AIの高度な対話機能を付け、外側表面を人間の皮膚感覚に近い樹脂などで覆えば、購入者にとっては、あたかも普通の友人や恋人といった存在になってしまう。眼鏡で見る仮想現実(バーチャル・リアリティ-)以上の現実感があろう。
恐いのは、AI機能を持った戦争ロボットだ。すでに、4つ足の犬にも似た戦争ロボットが登場している。中国は、背中に銃器を載せた重さ15キロと50キロの2つの軍用ロボットを持っていると言われる。米側のキラーロボットは、AI機能搭載であり、人の判断を待たずに独自に敵を認識し、攻撃を加えてしまうという。このほか、航空機でも、タンクでも、艦艇でも軍需品、武器のドローン、無人化が進められており、それには当然AI機能が搭載される。先進国では人の命の値段がますます高価になっていることから、こうしたAI搭載の戦争ロボットや無人武器が使われる傾向は強まっている。恐ろしいのはAI搭載武器が人間の指示抜きに勝手に状況を判断し、戦闘を始めてしまうことだ。AIに感情も理性も求められないのだ。
習近平主席は2月17日、「アリババ」の馬雲氏、「テンセント」の馬化騰氏、「ファーウェイ(華為技術)」の任正非氏、「ディープシーク」の梁文鋒氏ら中国の最先端を行くIT、AI、半導体企業の創始者、CEOと会談した。トランプ大統領が引き続き先端製品や部品の対中移転を禁止したことを受けて、独自開発を進めるよう再度企業経営者に活を入れたと見られる。馬雲氏は2020年秋、傘下の金融会社の株式市場上場に先駆けたあるシンポジウムで、「政府の金融規制がイノベーションを抑制している」と政府批判したため、習政権は激怒。その後馬氏のみならず、IT企業全体を厳しく監視、抑制する動きに出た。しかし、あれから4年以上経って習主席は先端技術の必要性を再認識したもようだ。馬氏と会談したことが象徴的である。中国側の活入れで、IT、AIをめぐる米中間の覇権争いはますます激しさを増していきそうだ。
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