第241回 「大草原の小さな家」のローラに似た日本人女性 伊藤努

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第241回 「大草原の小さな家」のローラに似た日本人女性

昔、NHKで放送された米テレビドラマ「大草原の小さな家」をよく見たが、ドラマの主人公で、インガルス一家の次女役のローラ(ローラ・インガルス・ワイルダー)を素敵に思ったものだ。聡明で利発、活発なおてんばでありながら、家族への思いやりもある米国の田舎の女の子だった。裕福とは言えない一家の物語を見ながら、米国の開拓時代のアメリカ人の質素な生活ぶりや信仰の大切さ、自主独立の気風が生まれた背景などを知ったことを思い出す。今にして思えば、米国社会を知る「小さな窓」のような役割を果たしたいい娯楽番組だった。

社会人になり、多忙な生活を続けるうちにドラマのことも、主人公のローラのことなども忘れかけていたが、取材で知り合いになった日本人女性のHさんが面影といい、性格といいよく似ているのである。プライバシーもあるので、本名は伏せさせていただくが、在京のある外国大使館に勤務する才女である。

現在は、親日国でもあるこの国への日本からの投資や企業進出を誘致する仕事に就いているが、こうした途上国における開発や経済協力といった分野に進んだのは学生時代の専攻を生かすためでもあったようだ。大学で開発学を学び、英国への留学経験があるので、英語も流暢だ。スペイン語も話せるのは、若いころの中南米滞在経験によるものだ。

勤務先の外国大使館が主催する日本の企業関係者向けの投資セミナーが本国政府の大臣ら要人の出席を得て都内の一流ホテルの大広間でよく開かれるが、何百人と集まるセミナーの司会・進行役はHさんの仕事である。セミナーには、日本語ができない外国人も大勢いるので、司会・進行が英語交じりとなるのがしばしばだが、物おじしない態度といい、英語の使い方といい、いつも文句の付け所のない仕事ぶりに感心する。

キャリア、職業は国際人の典型のようなHさんだが、ご主人がミャンマー人と聞けば、家庭も国際的である。2人が知り合ったきっかけが、ご主人の故郷であるミャンマーに短期留学し、この国がすっかり気に入ってしまったというのもこの人らしい。Hさんのミャンマー好きが高じて、将来は夫の実家での生活、弱者救済の社会的事業の立ち上げという生涯設計も立てている。今は2人の幼子を抱えて、キャリアウーマン、母親、妻の一人三役の多忙な生活だ。千葉の実家の近くに住んでいるので、親による孫の育児支援があるからこそ可能なのかもしれない。

交流が長くなり、プライベートな生活の一端を少しずつ知るにつれ、Hさんがますます頑張り屋でもあったあのローラと二重写しになってくる。記者の仕事はいろいろな分野のさまざまな人と出会えるのが魅力の一つだが、偶然のような経緯でHさんと面識を持ち、懐かしいローラを思い出させてくれたのもありがたい。


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