第167回 居酒屋のタッチパネル 伊藤努

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第167回 居酒屋のタッチパネル

もう経験されているコラムの読者もいるかもしれないが、先日、仕事仲間の先輩と飲みに行った都内にあるチェーン店の居酒屋の注文方法には驚いた。それぞれのテーブルに注文を取るタッチパネルのIT機器が設置されており、飲み物も酒の肴もすべて機械操作によって注文するのである。最後に確認ボタンを押すと、注文が完了する。そうした仕掛けがあるとも知らずに店に入ったので、正真正銘の初体験だったが、気晴らしともなるアルコール類の注文が、職場にいるのとほぼ同じIT機器だと、何とも味気ない。

店長氏に聞いたところ、都内各地の酒場に出店しているこの有名チェーン店でも、タッチパネルの注文機器が導入されているのは原宿店だけで、現在は試行段階のようだ。しかし、初期投資ということで、機械設置時の費用はかかるだろうが、注文の間違いもなければ、注文を取る店員の省力化でコスト削減につながるし、飲み物や料理の売れ具合もたちどころにコンピューターで把握できるということで、店の幹部や本店の管理部門にとってはいいこと尽くめのようにも見える。

問題は、従来の声掛けによる注文ではなく、機械操作による注文に客の側に抵抗感があるかどうかということだろう。アナログ世代の中年サラリーマンには、店員に声を掛けて注文する方が慣れていてありがたいだろうが、通勤電車でゲーム機器に興じている若い世代にとっては、タッチパネルの方が便利と思うかもしれない。

原宿の酒場での体験も、広い視野で見れば、ギリギリまでコスト削減を図ろうとするさまざまな企業の取り組みの一環なのだろうが、人間の仕事の領域にIT機器が次々と入り込んでくるような感じで、釈然としないのは筆者一人ではあるまい。

こうした流れと軌を一にするかのように、かつては繁華街や路地裏、駅前などにあった個人経営の居酒屋が年々少なくなり、大量の客を収容できるチェーン店の居酒屋が勢力を伸ばしている。アルコールや料理の種類が多いといったことのほかに、女性客も入りやすいというのが人気の秘密なのだろうか。

かつて、東南アジアの各都市で居酒屋には大変お世話になったが、タッチパネル式の注文機器がこれらの国々で普及するとは到底思えない。

 

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